個人事業主の勘定科目一覧:よく使う科目と迷ったときの決め方
- 結論:勘定科目は、青色申告決算書の損益計算書に印字されている経費科目(⑧租税公課〜㉛雑費)に合わせて決めると迷いにくくなります。足りないときは空欄の科目を使います。
- 理由:帳簿の各科目の金額は、最終的に決算書の各欄へ「決算整理後の金額」として転記されます。帳簿の科目と決算書の欄が対応していれば、転記ミスや二重計上を防げます。
- 確認点:①そもそも経費になるか、②資産として計上すべき金額ではないか、③家事分を除いたか、④前年と同じ科目を使っているか、の4点を順番に確認します。
勘定科目の基準は「青色申告決算書の欄」
帳簿付けで使う勘定科目は、自由に作れるように見えます。ただ、個人事業主の帳簿は最終的に確定申告の決算書へまとめるものです。そのため、迷ったときは青色申告決算書(一般用)の損益計算書を基準にするのが実務的です。
国税庁「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」(令和7年10月1日現在の法令等に基づく)では、経費(⑧〜㉛)について「経費帳の各科目の口座から、決算整理後の金額を記入します」と説明しています。つまり帳簿の科目と決算書の欄が1対1で対応していれば、年末の集計がそのまま申告書類になります。
なお、令和8年分(2026年分)の決算書と書き方は、本記事の執筆時点(2026年10月9日)では令和7年分の内容で確認しています。様式が変わる可能性があるため、申告前に最新版を確認してください。
個人事業主がよく使う勘定科目一覧
令和7年分の青色申告決算書の記載例に印字されている経費科目と、フリーランスでよくある支出の例をまとめました。支出例は一般的な振り分けの目安で、決算書に書かれている内容ではありません。
| 欄 | 勘定科目 | フリーランスでよくある支出の例 |
|---|---|---|
| ⑧ | 租税公課 | 個人事業税、事業用部分の固定資産税・自動車税、印紙税 |
| ⑨ | 荷造運賃 | 商品・機材の発送費、梱包材 |
| ⑩ | 水道光熱費 | 事務所や自宅兼事務所の電気代(事業分) |
| ⑪ | 旅費交通費 | 客先への電車代・タクシー代、出張の宿泊費 |
| ⑫ | 通信費 | インターネット回線、携帯電話、切手 |
| ⑬ | 広告宣伝費 | Web広告、名刺、ポートフォリオサイトの制作費 |
| ⑭ | 接待交際費 | 取引先との会食、手土産 |
| ⑮ | 損害保険料 | 事務所の火災保険、賠償責任保険 |
| ⑯ | 修繕費 | 事業用PCや機材の修理代 |
| ⑰ | 消耗品費 | 10万円未満の備品、文房具、周辺機器 |
| ⑱ | 減価償却費 | 10万円以上のPCなどの償却費 |
| ⑲ | 福利厚生費 | 従業員の健康診断・慶弔費 |
| ⑳ | 給料賃金 | 従業員・アルバイトへの給与 |
| ㉑ | 外注工賃 | デザイン・開発などの業務委託費 |
| ㉒ | 利子割引料 | 事業用借入金の利息 |
| ㉓ | 地代家賃 | 事務所家賃、自宅家賃の事業分、駐車場代 |
| ㉔ | 貸倒金 | 回収できなくなった売掛金 |
| ㉕〜㉚ | 空欄(任意の科目) | 支払手数料、研修費、新聞図書費、会議費など |
| ㉛ | 雑費 | どの科目にも当てはまらない少額の支出 |
決算書の書き方で指定がある科目
いくつかの科目は、書き方で扱いが指定されています。
- 給料賃金:青色事業専従者に支払った給与はこの欄に入れず、「専従者給与」の欄に記入します。
- 地代家賃:決算書2ページの「地代家賃の内訳」に、支払先や本年中の賃借料を記入します。
- 税理士・弁護士等の報酬:決算書3ページに内訳欄があり、源泉徴収税額も記入します。
- 減価償却費:決算書3ページの「減価償却費の計算」の合計額を転記します。
迷ったときの決め方:4つのステップ
科目選びに迷ったときは、次の順番で判断すると整理しやすくなります。
ステップ1:そもそも経費になるかを確認する
国税庁タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」(令和8年4月1日現在法令等)では、必要経費を「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額」と「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」としています。
ここに当てはまらない支出は、どの科目にも入れません。たとえば決算書の書き方では、生活費や所得税・住民税など「必要経費にならない租税公課」は貸借対照表の事業主貸に記入すると説明しています。事業用の口座から払った場合でも、経費科目ではなく事業主貸で処理します。経費になるかの判断軸はフリーランスの経費になるもの・ならないものの判断軸で詳しく整理しています。
ステップ2:金額で「消耗品費」か「減価償却費」かを分ける
PCやモニターなどの備品は、取得価額によって入れる科目が変わります。国税庁タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」(令和8年4月1日現在法令等)による区分は次のとおりです。
| 取得価額 | 処理 | 主な科目 |
|---|---|---|
| 10万円未満(または使用可能期間1年未満) | 業務に使い始めた年に全額経費 | 消耗品費 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で3分の1ずつ経費にできる | 減価償却費 |
| 10万円以上40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満) | 一定の要件を満たす青色申告者は、合計300万円までその年に全額経費にできる(令和11年3月31日までの取得が対象) | 減価償却費 |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて減価償却 | 減価償却費 |
中小企業者の少額減価償却資産の特例は、上限額が令和8年4月1日以後の取得分から40万円未満に引き上げられています。2026年の取得分は、取得日によって上限が違う点に注意してください。開発用PCやクラウド・AIツール代の具体例は開発用PC・クラウド・AIツール代の経費処理:エンジニアの判断軸で解説しています。
ステップ3:家事分を除いてから科目に入れる
家賃・電気代・通信費のように私生活と共通する支出は家事関連費です。No.2210では、必要経費になるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」に限られるとしています。
科目に計上するのは、按分した後の事業分だけです。家事分は事業主貸で処理するか、最初から帳簿に載せないようにします。
ステップ4:複数の候補があれば「継続性」で決める
サブスク代を「通信費」にするか「支払手数料」にするかのように、どちらの科目でも説明がつく支出はよくあります。どちらを選んでも所得の金額は変わりません。大切なのは、一度決めた科目を毎年同じように使うことです。年によって科目が変わると、前年比較で不自然な増減に見え、自分でも集計ミスに気づきにくくなります。サブスクの科目と年払いの扱いはサブスク費用の勘定科目と前払費用:年払いは支払った年に全額落とせるかを参照してください。
空欄科目と雑費の使い分け
決算書の経費欄には、既定の科目のあとに空欄が並び、最後が㉛雑費です。迷ったときに何でも雑費に入れてしまいがちですが、次のように使い分けるのがおすすめです。
- 毎年ある程度の金額が出る支出:空欄に科目名を書いて独立させます(例:支払手数料、研修費、新聞図書費)。
- 単発で少額の支出:雑費に入れます。
雑費が経費全体の中で大きくなると、何に使ったのかが決算書から読み取れなくなります。目安として、繰り返し出てくる支出は独立した科目にしておくと、帳簿を見直すときも説明しやすくなります。
経費以外で使う科目も押さえる
経費の科目だけでなく、貸借対照表の科目も迷いやすいポイントです。決算書の書き方では次のように説明しています。
- 事業主貸:生活費などの家事上の費用、所得税・住民税など必要経費にならない租税公課、家事消費の金額など
- 事業主借:事業主から事業資金として受け入れた金額、預金利息など事業所得以外の収入で事業に受け入れたもの
- 預り金:従業員への給与などから源泉徴収し、まだ納めていない所得税等
また、損益計算書と貸借対照表の「青色申告特別控除前の所得金額」は必ず一致します。一致しないときは、科目の振り間違いや二重計上がないか確認してください。
まとめ
- 勘定科目は、青色申告決算書の損益計算書に印字された経費科目(⑧〜㉛)を基準に選ぶと、決算書への転記まで迷わずに進められます。
- 迷ったときは「経費になるか」「金額で資産になるか」「家事分を除いたか」「前年と同じ科目か」の順に確認します。
- 備品は10万円・20万円・40万円(令和8年3月31日までの取得は30万円)の区切りで、消耗品費か減価償却費かが変わります。
- 繰り返し出る支出は空欄科目で独立させ、雑費は単発の少額支出にとどめます。
- 所得税・住民税や生活費は経費科目ではなく、事業主貸で処理します。
制度の数値は、2026年10月9日時点で確認できた国税庁の資料に基づいています。判断に迷う支出は、所轄の税務署や税理士に確認してください。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」(令和7年10月1日現在の法令等、2026年10月9日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月9日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月9日閲覧)