この記事の結論
  • 結論:貸株中に権利確定日をまたぐと受け取るのは配当金ではなく「配当金相当額」で、税務上は雑所得(事業所得になる場合もあり)として総合課税の対象になります。
  • 理由:貸している間は株主としての権利を失っており、株主として配当を受ける立場にないためです。配当所得ではないので、配当控除も株式の譲渡損との損益通算も使えません。
  • 確認点:利用中の証券会社に、権利確定日に株を自動返却するコースがあるか、また今どのコースを選んでいるかを確認しましょう。

貸株サービスは、持っている株を証券会社に貸すだけで貸株金利を受け取れる手軽な仕組みです。ただし、貸している間に配当の権利確定日が来ると、入金されるのは「配当金」ではなく「配当金相当額」になります。入金額は配当金とほぼ同じでも、税金の扱いはまったく別物です。この記事では、税区分の違い、配当控除が使えない理由、権利確定日の前後にどう扱われるかを、国税庁の資料と証券会社の説明資料をもとに整理します。

配当金相当額とは何か:貸株中は株主ではない

貸株サービスの契約は、株式の消費貸借契約です。楽天証券は「貸借期間中は株主としての権利義務をすべて喪失します」と説明しています(楽天証券 貸株サービス案内、2026年10月9日確認)。貸している株は借りた側に移っているため、権利確定日に株主名簿に載るのはあなたではありません。

そこで証券会社は、本来受け取れたはずの配当の代わりとしてお金を支払います。これが配当金相当額です。

  • 金額:楽天証券では「配当金から所得税分を源泉徴収した金額と同等額」とされています(2026年10月9日確認)
  • 入金時期:楽天証券では、配当金の支払日からおおよそ5営業日後に預り金へ入金されます(同上)
  • 失うもの:配当のほか、株主優待や議決権も受けられません

権利確定日と権利付き最終日の関係があいまいな方は、先に権利確定日・権利付き最終日・配当支払日の違いを確認しておくと、この後の話が理解しやすくなります。

税区分の違い:配当所得ではなく雑所得になる

配当金と配当金相当額の比較

項目通常の配当金貸株中の配当金相当額
所得区分配当所得雑所得(場合により事業所得)
課税方式申告不要・申告分離・総合課税から選択総合課税
配当控除総合課税を選べば対象対象外
上場株式の譲渡損との損益通算申告分離課税を選べば可能不可

※各社の説明資料(2026年10月9日確認)と国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)に基づいて作成

楽天証券は、貸株金利と配当金相当額について、個人の場合は「一般に雑所得又は事業所得として、総合課税の対象」と説明しています。松井証券も、雑所得として総合課税の対象であること、配当控除が使えないこと、株式等の譲渡損失と損益通算できないことを明記しています(いずれも2026年10月9日確認)。

国税庁のタックスアンサーNo.1500では、雑所得を「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得」と定め、他の所得と合算して課税するとしています。配当金相当額は株主の立場で受け取るお金ではないため、配当所得には含まれず、この雑所得に分類されるという整理です。

配当控除が使えない影響

タックスアンサーNo.1250(令和8年4月1日現在法令等)によると、配当控除の対象は「確定申告において総合課税の適用を受けた配当所得」に限られます。控除率は、課税総所得金額等が1,000万円以下の場合、剰余金の配当で10%です。配当金相当額は配当所得ではないので、この控除は使えません。

総合課税で配当控除を使うと有利になる人(所得が比較的低い人など)ほど、貸株によって不利になる可能性があります。自分がどれに当てはまるかは、配当控除を使うか判断するための確認項目で整理できます。

確定申告が必要になる場合

タックスアンサーNo.1900(令和8年4月1日現在法令等)では、給与を1か所から受けていて全額が源泉徴収の対象になっている人でも、給与以外の所得金額の合計が20万円を超えると確定申告が必要になるとしています。この「20万円」には、貸株金利と配当金相当額をあわせた雑所得も含まれます。副業の所得などと合算して判定する点に注意が必要です。給与以外の所得が20万円以下で所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要かどうかは、お住まいの市区町村で確認してください。

権利確定日の前後で何が起きるか

自動返却サービスの仕組み

主要なネット証券は、権利確定日に貸している株を自動で口座に戻し、株主として権利を取れるようにするサービスを用意しています。

  • SBI証券:株券貸借取引に関する基本契約書(2023年1月14日改定)で、「株主優待及び配当金の権利確定日」に「株主権利自動取得サービス」を利用すると株が返還されると定めています。返還されている間は貸借料(貸株金利)は発生しません。
  • 楽天証券:「株主優待・配当金自動取得サービス」に次の3コースがあります(2026年10月9日確認)。
コース権利確定日の扱い受け取れるもの
金利優先貸したまま(自動返却なし)配当金相当額、その日1日分は5倍の貸株金利(優待はなし)
株主優待優先優待の権利確定日に自動返却株主優待
株主優待・予想有配優先優待や配当の権利確定日に自動返却株主優待・配当金

自動返却された株は、その後自動で再び貸し出されます。

意図せず配当金相当額になりやすいケース

  • 金利優先コースを選んでいる、または初期設定のまま変更していない
  • 優待だけを優先するコースで、優待のない配当銘柄を持っている
  • 楽天証券の「予想有配優先」は、コース名から見て会社予想で配当がある銘柄を前提としていると考えられます。そのため、配当予想が未定・無配の銘柄の扱いは、証券会社の資料で個別に確認する必要があります

コースの変更がいつまでに必要かは証券会社ごとに異なります。権利付き最終日の直前に慌てないよう、余裕をもって設定を確認しておきましょう。

貸株を続けるか判断するための視点

貸株を続けるか見直すかは、貸株金利で増える分と、税制面や信用面で失うものを比べて決めることになります。

メリットになりやすい点

  • 持っている株を動かさずに貸株金利を受け取れる
  • 楽天証券の金利優先コースでは、権利確定日の金利が通常の5倍になる

リスク・デメリット

  • 配当控除を使えず、譲渡損との損益通算もできない
  • 楽天証券の説明では、貸株は無担保の取引で、貸した株は分別保管や投資者保護基金による保護の対象外です。証券会社に信用上の問題が起きた場合の影響は、通常の保管とは異なります
  • 議決権や長期保有を条件とする株主権利を失う場合がある
  • 旧NISAとNISAの成長投資枠の株は、楽天証券では貸株サービスの対象外です

判断の条件

  • 総合課税で配当控除を使う予定なら、配当銘柄は自動返却コースを選ぶか、貸株の対象から外すことを検討する
  • 申告不要や申告分離課税で配当を受け取る人は、所得区分が変わることで確定申告が必要になるか(20万円の判定など)を確認する
  • 長期保有の優待を狙っている銘柄は、継続保有の扱いが不利にならないか、発行会社の条件を確認する

まとめ

貸株中に権利確定日をまたいで受け取るお金は、配当金ではなく配当金相当額です。入金額は税引後の配当とほぼ同じでも、所得区分は雑所得(場合により事業所得)で、総合課税の対象になります。配当控除も、株式の譲渡損との損益通算も使えません。避けたい場合は、権利確定日に株を自動返却するコースを選ぶのが基本です。どのコースが向いているかは、配当の課税方式をどう選んでいるか、優待や議決権をどれだけ重視するか、そして貸株金利の水準によって変わります。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

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