この記事の結論
  • 結論:個人事業税は法定70業種にだけかかります。「プログラマー」「システムエンジニア」という業種名は法定業種にありません。ただし、デザイン業・コンサルタント業・請負業に当たると判断されれば課税されます。
  • 理由:課税されるかどうかは職種名ではなく、契約の中身と働き方の実態で、都道府県が確定申告書や決算書などをもとに判断するためです。
  • 確認点:①仕事の内容が法定業種に当たるか ②契約が「仕事の完成」を目的にしているか ③所得が事業主控除の290万円を超えているか、の3点を順に確認します。

フリーランスになって確定申告をすると、「8月に個人事業税の通知が来るのか」が気になります。税理士や美容師のように業種がはっきりしている人と違い、エンジニアやデザイナーは判断が分かれやすい職種です。この記事では、地方税法の条文と都道府県の公式資料(2026年10月7日に閲覧)をもとに、判定の見方を順番に整理します。

個人事業税の控除や納付時期といった全体の仕組みは、個人事業税の対象業種・控除・納付時期で解説しています。

個人事業税は「法定業種」にだけかかる

個人事業税は、所得がある個人事業主すべてにかかるわけではありません。東京都主税局は「地方税法等で定められた事業(法定業種)に対してかかる税金」と説明しており、法定業種は70あります。

法定業種は地方税法第72条の2の第8項(第1種事業)、第9項(第2種事業)、第10項(第3種事業)に列挙されています。これに政令で追加された業種を加えたものが全体です。

区分業種数税率(東京都の案内)主な業種
第1種事業375%物品販売業、製造業、請負業、印刷業、出版業、写真業、代理業、仲立業、広告業など
第2種事業34%畜産業、水産業、薪炭製造業
第3種事業305%(一部3%)医業、弁護士業、税理士業、コンサルタント業、設計監督者業、デザイン業、理容業など

第3種事業のうち、あん摩・マッサージ・はり・きゅう・柔道整復などの医業に類する事業と、装蹄師業は税率が3%です。

ここで押さえておきたいのは、法定業種の一覧に「ソフトウェア開発業」「プログラマー業」「システムエンジニア業」という名称がないことです。法定業種に当たらない事業であれば、所得がいくらあっても個人事業税はかかりません。これが「かからない業種」の考え方です。

エンジニア・デザイナーが当たりうる3つの業種

職種名が一覧にないからといって、すぐに非課税とは言えません。IT・クリエイティブ系の仕事で特に関係するのは、次の3業種です。

デザイン業(第3種・5%)

デザイン業は第3種事業として条文に明記されています。グラフィック、Web、UIなどのデザインを主な収入源にしている人は、課税対象になる可能性が高いと考えておくのが無難です。なお、印刷製版業は施行令第14条で第3種事業に追加されています。

コンサルタント業(第3種・5%)

ITコンサルティングや技術顧問のように、助言や提案が仕事の中心になっている場合は、コンサルタント業として扱われる余地があります。肩書きではなく、実際に何に対して報酬を受け取っているかが判断の材料になります。

請負業(第1種・5%)

エンジニアにとって一番の論点がこれです。神奈川県は、次の4つの要件をすべて満たす場合に請負業として課税するとしています。

  1. 仕事の完成を目的とした契約に基づいて収入を得ていること
  2. 資本的経営を行っていること
  3. 仕事の計画と進め方について独立性があること
  4. 危険負担があること

たとえば成果物の納品を約束する請負契約で受託開発をしている場合は、1つ目の要件に近づきます。一方、稼働時間に対して報酬が支払われる準委任契約中心の働き方は、1つ目の要件とずれやすい形です。ただし、これは一般的な見方にすぎません。結論は、契約書の文言や実際の働き方を見て都道府県が判断します。

都道府県はどうやって判定するのか

神奈川県は、要件に当たるかどうかを「所得税申告書や所得税申告書に添付された決算書等の記載内容で判定」すると説明しています。必要に応じて、県税事務所から「お仕事の内容について(回答)」という照会文書が届くこともあります。

東京都の案内でも、所得税の確定申告をした人は個人事業税の申告もしたものとみなされます。そのうえで、確定申告書の「職業名」欄と「事業税に関する事項」欄に必要なことを書くよう求めています。つまり、申告書に書いた職業名や業務内容が、判定の出発点になります。

通知が来る前に確認したい手順

  1. 業務内容を書き出す:開発、デザイン、助言、保守など、収入の内訳を作業の種類ごとに分けます。
  2. 契約形態を確認する:契約書が成果物の完成と納品を約束するもの(請負)か、作業の遂行そのものを約束するもの(準委任)かを確認します。
  3. 申告書の職業欄を実態に合わせる:「デザイナー」「コンサルタント」など、実態と違う職業名を書かないようにします。
  4. 照会には事実で答える:照会文書が届いたら、契約書や請求書をもとに正確に答えます。判定に納得できない場合は、所管の都道府県税事務所に根拠を確認します。

業種に当たっても税額が出ないケース

法定業種に当たると判断されても、すぐに税額が出るとは限りません。東京都の案内では、税額は次の式で計算します。

(事業所得 + 青色申告特別控除額 - 各種控除額)× 税率

ここで注意したい点が2つあります。

  • 事業主控除は年290万円:営業期間が1年に満たない場合は月割りになります(例:6か月なら145万円)。
  • 青色申告特別控除は使えない:所得税で差し引いた最大65万円の青色申告特別控除は、個人事業税では所得に足し戻します。

たとえば、事業所得が400万円(青色申告特別控除65万円を引いた後)の場合を考えます。400万円 + 65万円 - 290万円 = 175万円となり、税率5%なら年8万7,500円が目安です。納期は原則として8月と11月の2回で、東京都の場合の納期限は8月31日と11月30日です。

所得税の計算の仕組みはフリーランスの所得税を累進課税から理解するにまとめています。両方を合わせて、手取りの見込みを立てておくと安心です。

判断を分けるポイントとリスク

  • 非課税と見込める材料:法定業種に名称がない/準委任契約が中心/成果物の完成責任や危険負担がない。
  • 課税されうる材料:デザインやコンサルティングの収入が多い/請負契約で受託開発をしている/外注先を使い、自分の資本で事業を回している。
  • リスク:判定は都道府県ごとに個別に行われます。同じ職種でも契約の中身によって結論が変わることがあります。また、過年度分をまとめて課税される可能性もあります。

インターネット上の「エンジニアは非課税」といった言い切りをそのまま信じず、自分の契約書と申告内容を見て判断することが大切です。

まとめ

個人事業税は法定70業種にだけかかる税金です。プログラマーやシステムエンジニアという業種名は、地方税法にありません(2026年10月7日に条文を確認)。一方で、デザイン業とコンサルタント業は第3種事業(税率5%)、請負業は第1種事業(税率5%)に明記されています。仕事の中身によっては課税対象になります。判定は都道府県が確定申告書や決算書、照会への回答をもとに行います。業務内容、契約形態、申告書の職業欄の3点を実態どおりにそろえておくことが、いちばん確実な備えです。法定業種に当たる場合でも、事業主控除の290万円を引いた後の所得がなければ税額は出ません。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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