配当金の受取方式の選び方と変更手続き
- 結論:配当金の受取方式は4種類あるが、NISAの非課税メリットと特定口座の自動損益通算を両方活かせるのは「株式数比例配分方式」だけ。
- 理由:非課税口座からの配当は証券会社経由(株式数比例配分方式)で交付されたものに限り非課税となり、他の方式では発行会社や郵便局での受取時に20.315%が課税されるため。
- 確認点:現在の受取方式を証券会社のマイページで確認し、配当基準日より前に株式数比例配分方式への変更手続きを終えているか。
高配当株投資を始めるとき、意外と見落とされがちなのが「配当金をどう受け取るか」という設定です。実はこの受取方式を間違えると、NISA口座で買った株の配当が非課税にならない、あるいは特定口座の譲渡損と自動で損益通算されない、といった不利益が生じます。この記事では2026年9月4日時点の国税庁・日本証券業協会の情報をもとに、4つの受取方式の違いと正しい設定方法を解説します。
配当金の受取方式は4種類ある
上場株式の配当金は、証券会社を通じて次の4方式のいずれかで受け取ります。
- 配当金領収証方式:配当のたびに郵便局や指定の金融機関の窓口で現金化する方法。証券口座とは連動していない。
- 個別銘柄指定方式:銘柄ごとに、受け取る銀行口座を指定する方法。保有銘柄が増えると口座管理が煩雑になりやすい。
- 登録配当金受領口座方式:保有するすべての上場株式の配当を、1つの銀行口座にまとめて受け取る方法。証券保管振替機構(ほふり)に登録する。
- 株式数比例配分方式:証券会社の口座で、保有株式数に応じて配当が自動入金される方法。
このうち、NISAの非課税メリットと特定口座の損益通算の両方を活かせるのは株式数比例配分方式のみです。多くのネット証券では口座開設時にこの方式がデフォルトになっていますが、総合口座や古くから保有している銘柄では別方式のまま残っているケースもあるため、一度確認する価値があります。
NISAの非課税メリットを活かせるのは株式数比例配分方式だけ
国税庁のNISA制度に関する解説(令和7年4月1日現在)では、次のように明記されています。
> 非課税とされる配当等は非課税口座を開設している金融商品取引業者等を経由して交付されるもの(株式数比例配分方式を選択したもの)に限られていますので、上場株式等の発行者から直接交付されるものは課税扱いとなります
つまり、NISA口座で買い付けた株式であっても、受取方式を株式数比例配分方式にしていなければ配当は課税扱いになります。配当金領収証方式や登録配当金受領口座方式のままだと、非課税投資枠の恩恵を受けられずに20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%、国税庁No.1331・令和7年4月1日現在)の税金を差し引かれてしまう点に注意してください。NISAでの配当課税や損失の扱いについては、NISAで高配当株を持つ前に知りたい税制と注意点でも詳しく解説しています。
特定口座の自動損益通算にも株式数比例配分方式が有利
特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、株式の売却損と配当金は口座内で自動的に損益通算されます。ただしこれは、配当を証券口座(株式数比例配分方式)で受け取っていることが前提です。配当金領収証方式や登録配当金受領口座方式で銀行口座に受け取った配当は特定口座の管理対象外となり、自動的な損益通算の仕組みが働きません。
国税庁の解説(No.1474・令和7年4月1日現在)によれば、上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選択した配当所得から控除できます。特定口座内で自動通算されなかった場合でも、確定申告をすれば他の口座で保有する上場株式等の売却損との損益通算や、最大3年間の繰越控除が可能です。特定口座での配当課税と損益通算・確定申告の基本的な仕組みは、特定口座の配当金と損益通算・確定申告の基本で解説しています。なお、NISA口座内の譲渡損失は他の口座の利益や配当と損益通算できません(国税庁No.1474)。この点はNISA活用時に特に見落としやすいので注意が必要です。
受取方式の変更手続きと基準日の注意点
受取方式は、多くの場合ネット証券のマイページ(口座情報・お客様情報の変更メニューなど)からオンラインで変更できます。書面での届出が必要な証券会社もあるため、変更前に手順を確認してください。
日本証券業協会の案内(2026年9月4日閲覧)では、次の点が注意事項として挙げられています。
- 株式数比例配分方式で配当を受け取るには、保有銘柄の配当基準日までに手続きを完了させる必要がある。手続きに要する日数は証券会社によって異なるため、余裕を持って申請すること。
- 一度この方式を選択すると、証券保管振替機構(ほふり)を通じて、同一名義で保有する他の証券会社の口座にも自動的に同じ方式が適用される。
- 2009年の株券電子化に伴い「特別口座」に株式が残っている場合は、この方式を利用できない。
配当基準日は銘柄ごとに異なるため、権利付き最終日の直前に慌てて変更しても間に合わない可能性があります。高配当株の購入を検討している段階で、早めに受取方式を確認・変更しておくのが安全です。
受取方式ごとの比較
| 受取方式 | 受取場所 | NISAの非課税適用 | 特定口座の自動損益通算 |
|---|---|---|---|
| 配当金領収証方式 | 郵便局等の窓口 | 不可 | 不可 |
| 個別銘柄指定方式 | 銘柄ごとの指定銀行口座 | 不可 | 不可 |
| 登録配当金受領口座方式 | 1つの指定銀行口座 | 不可 | 不可 |
| 株式数比例配分方式 | 証券口座 | 可 | 可 |
表のとおり、非課税・損益通算のどちらの恩恵を受ける場合も株式数比例配分方式一択です。現金で受け取りたい、複数の銀行口座に分散したいといった事情がなければ、基本的にはこの方式を選んでおくのが合理的といえます。
まとめ
配当金の受取方式には4種類あり、証券会社の口座で自動的に受け取る株式数比例配分方式だけが、NISAの非課税適用と特定口座の自動損益通算の両方に対応しています。受取方式の変更は配当基準日までに完了させる必要があるため、高配当株投資を始める前、あるいは今の設定に不安がある場合は、証券会社のマイページで早めに確認しておきましょう。なお、税制や手続きの詳細は今後の制度改正で変わる可能性があるため、実際の変更時には証券会社や国税庁の最新情報も併せて確認してください。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- No.1535 NISA制度|国税庁(令和7年4月1日現在法令等)
- No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度|国税庁(令和7年4月1日現在法令等)
- No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除|国税庁(令和7年4月1日現在法令等)
- NISA特設ウェブサイト|金融庁(2026年9月4日閲覧)
- NISA口座における上場株式の配当金等受取方式に関する注意事項|日本証券業協会(2026年9月4日閲覧)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。