GitHub Sponsorsやストック販売の収入と税金:エンジニアの小口収入の申告
- 結論:スポンサー収入やストック販売の小口収入は、多くのケースで「業務に係る雑所得」に区分され、帳簿書類を保存しているかどうかが事業所得との分かれ目になります(所得税基本通達35-2、令和4年10月7日付改正)。
- 理由:同通達は「帳簿書類の保存がない場合(収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得に該当する」と定めており、記帳の有無が判定の実務的な決め手になっているためです。
- 確認点:会社員なら給与以外の所得が20万円を超えるかどうか、雑所得なら前々年の収入金額が300万円・1,000万円を超えるかどうか、そして外貨受取の円換算とプラットフォーム手数料の処理を先に固めてください。
GitHub Sponsors、Zenn/noteの有料記事、テンプレートや3Dモデル・写真素材のストック販売、個人開発アプリの売上。エンジニアの副収入は「1件数百円〜数千円が大量に積み上がる」形が多く、事業と呼ぶには小さいけれど放置もできない、という中途半端な規模になりがちです。ここでは国税庁の一次資料に沿って、所得区分の判定と申告手順を整理します(本記事の制度内容は2026年9月10日時点で確認したものです)。
GitHub Sponsorsやストック販売は「雑所得」か「事業所得」か
所得税では所得を10種類に区分し、事業所得は「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得」、雑所得は「利子所得から一時所得までのいずれにも該当しない所得」とされています(国税庁タックスアンサーNo.1300、令和8年4月1日現在法令等)。スポンサー収入や素材販売は、この定義だけを読んでもどちらとも読めてしまいます。
判定の出発点は「社会通念」、実務上の決め手は帳簿
判断枠組みを示しているのが、令和4年10月7日付で改正された所得税基本通達35-2の(注)です。原文は次のように定めています。
> 事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
> なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。
つまり、帳簿書類を作って保存しているかが第一の関門です。同通達の解説に付されている区分イメージは次のとおりです。
| 収入金額 | 記帳・帳簿書類の保存あり | 記帳・帳簿書類の保存なし |
|---|---|---|
| 300万円超 | 概ね事業所得 | 概ね業務に係る雑所得 |
| 300万円以下 | 概ね事業所得 | 業務に係る雑所得 |
ただし帳簿を保存していても、解説では次の2つのケースは個別判断になるとされています。ひとつは収入金額が僅少と認められる場合で、例として「例年、300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満」が挙げられています(「例年」は概ね3年程度)。もうひとつは営利性が認められない場合で、例年赤字かつ赤字を解消するための取組を実施していないケースです。
本業の給与が600万円のエンジニアがGitHub Sponsorsで年30万円を受け取っている、という典型例は「主たる収入の10%未満かつ300万円以下」に当たり、帳簿があっても事業と認められるかは個別判断になります。多くの小口収入は業務に係る雑所得として申告するのが素直、というのが出発点です。
なお、業務に係る雑所得で赤字が出ても、他の所得との損益通算はできません(No.1500、令和8年4月1日現在法令等)。「サーバー代や機材代で赤字にして給与の税金を取り戻す」という発想は、雑所得では成り立ちません。
申告が必要になるライン:「20万円ルール」の正確な読み方
会社員として給与をもらいながら副収入がある場合、確定申告が必要になるのは、1か所から給与を受けていて年末調整も済んでいる人なら「給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える」ときです(No.1900)。給与収入が2,000万円を超える人や、2か所以上から給与を受けている人には別の判定があります。
ここで間違えやすいのが、20万円は「収入」ではなく「所得」(収入金額−必要経費)だという点です。ストック販売の売上が28万円で、素材制作に使ったソフト代や機材の按分が10万円あるなら、所得は18万円で申告不要の範囲に収まり得ます。逆に、経費のほとんどないスポンサー収入は売上がほぼそのまま所得になります。
また、この20万円の判定はあくまで所得税の話です。住民税には同様の少額不申告の仕組みがないため、所得税の確定申告をしない場合でも市区町村への住民税申告が必要になることがあります。お住まいの自治体の案内を必ず確認してください。
収入と経費の集計でつまずく3点
プラットフォーム手数料は「差引後の入金額」ではない
決済手数料や販売手数料が差し引かれて入金される場合でも、総収入金額は原則として手数料控除前の金額です。事業所得の計算は「総収入金額−必要経費」であり(No.1350、令和8年4月1日現在法令等)、雑所得も同じ構造です。手数料は収入から勝手に消えるのではなく、必要経費側に立てます。ダッシュボードでは「支払額(Net)」ではなく「売上(Gross)」と「手数料」を分けてCSVを落としておくと、後が楽になります。
外貨受取は円換算が必要
GitHub Sponsorsのように米ドルで受け取る収入は、円換算して申告します。換算方法は所得税基本通達57の3-2「外貨建取引の円換算」に定めがあり、原則は取引日の電信売買相場の仲値(TTM)、継続適用を条件に、売上は電信買相場、経費は電信売相場によることも認められています。月ごとにレートの根拠を残す(利用した銀行のTTM一覧を保存する)だけでも、後日の説明コストが変わります。
海外プラットフォームからの支払いは、日本の源泉徴収の対象になりません。一方、国内企業からの原稿料や講演料などは源泉徴収されるため、精算の考え方は源泉徴収される報酬と確定申告での精算方法を参照してください。海外側では、米国のプラットフォームでW-8BEN等の税務書類の提出を求められることがあります。提出要否は各プラットフォームの案内に従ってください。
計上時期は入金日とは限らない
収入は原則として、その年に確定したものを計上します。12月に売上が確定し、翌1月に振り込まれた分は前年の収入です。ただし業務に係る雑所得については、その年の前々年分の収入金額が300万円以下であれば、現金主義(入金ベース)で計算する特例を選べます。適用には確定申告書への記載が必要です(No.1500)。
必要経費の線引きは雑所得でも事業所得でも共通で、業務との関連性を客観的な記録で示せるかが軸になります。自宅兼作業場の家賃や通信費の按分など具体的な考え方はフリーランスの経費になるもの・ならないものの判断軸にまとめています。
なお、経費が少ない人が期待しがちな「家内労働者等の必要経費の特例」は、令和8年分以降は69万円(令和7年分は65万円、令和2〜6年分は55万円)まで必要経費が認められる制度ですが、対象は家内労働者や外交員、集金人のほか「特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人」です(No.1810、令和8年4月1日現在法令等)。不特定多数へのストック販売やスポンサー収入は、この「特定の者」に当たらないのが通常で、安易に当てはめないでください。
事業所得で申告するなら、記帳と青色申告をセットにする
副業を本格化させて事業所得で申告する方針なら、帳簿書類の保存が前提条件になります。あわせて検討したいのが青色申告です。対象は不動産所得・事業所得・山林所得のある人で、承認申請の期限は原則その年の3月15日、1月16日以後に新規開業した場合は業務開始日から2か月以内です。特別控除は、複式簿記+貸借対照表・損益計算書の添付+e-Tax申告(または優良な電子帳簿保存)で65万円、e-Taxによらない場合は55万円、簡易な記帳のみなら10万円です(No.2070)。
一方、業務に係る雑所得のままでも記録義務はあります。前々年の収入金額が300万円を超えると現金預金取引等関係書類の保存義務が生じ、1,000万円を超えると確定申告書に収支内訳書等の添付が必要です(No.1500)。収入300万円は「事業所得への入口」ではなく「書類保存義務の入口」と覚えておくと混乱しません。
消費税は「1,000万円」と「内外判定」の2軸で確認する
消費税は、基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら原則として納税義務が免除されます。ただし、インボイス発行事業者として登録している場合は売上規模にかかわらず免除されません。また特定期間(前年1〜6月)の課税売上高が1,000万円を超える場合も免除されません(No.6501、令和7年4月1日現在法令等)。
小口収入の段階では免税事業者に収まることが多い一方、判断が要るのが海外プラットフォーム経由の売上です。電子書籍・広告配信などの「電気通信利用役務の提供」は、提供者の所在地ではなく役務の提供を受ける者の住所地等で国内取引かどうかを判定します(No.6118)。国内取引に当たらなければ課税売上高の集計も変わるため、海外比率が高い人は取引形態を整理したうえで税務署や税理士に確認してください。
判断材料の整理
- 追い風になる材料:帳簿を付けて事業所得と認められれば青色申告特別控除や損益通算の余地が生まれ、経費の裏付けも強くなる。
- リスク材料:雑所得は損益通算ができず、赤字前提の節税は成立しない。区分を誤ると、後から更正や加算税の対象になり得る。
- 判断条件:主たる給与に対する副収入の割合、継続年数、赤字が続いていないか、帳簿を実際に保存し続けられるか。
まとめ
GitHub Sponsorsやストック販売の収入は、規模が小さいうちは業務に係る雑所得として申告するのが基本線で、帳簿書類を保存しているか、収入が300万円を超えるか、社会通念上の事業と言える活動かで事業所得への道が開きます。会社員は給与以外の所得20万円超で確定申告が必要になり、それ以下でも住民税の申告が残る点に注意してください。まずは、プラットフォームの売上・手数料CSVを月次で保存し、外貨は換算根拠を残す。この2つを今年分から始めるだけで、区分がどちらに転んでも対応できます。個別の判定は事実関係で変わるため、金額が大きくなってきたら所轄税務署か税理士への確認をおすすめします。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」法第35条《雑所得》関係(35-2および解説)(令和4年10月7日付改正、2026年9月10日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.1500 雑所得(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.1300 所得の区分のあらまし(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(2026年9月10日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.1810 家内労働者等の必要経費の特例(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.2070 青色申告制度(2026年9月10日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.6501 納税義務の免除(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 所得税基本通達 法第57条の3《外貨建取引の換算》関係(2026年9月10日閲覧)