経費にならない支出の見分け方:フリーランスが否認されやすい支出の型
- 結論:経費にならない支出は「税金・社会保険料」「罰金・加算税」「家事関連費のうち事業分を区分できない部分」「生計を一にする親族への支払い」の4つの型にほぼ分けられます。
- 理由:所得税法第45条が、事業に関係があるように見える支出でも必要経費にしないものを個別に列挙しているためです(2026年10月1日施行の条文で確認)。
- 確認点:支出ごとに「法律で除外されていないか」「事業分を記録で区分できるか」「支払先が生計を一にする親族ではないか」の3点をチェックします。
判断の土台は「第37条で入れて、第45条で外す」
事業所得の必要経費は、所得税法第37条で「総収入金額を得るために直接要した費用」や「販売費・一般管理費その他業務上の費用」とされています。ただ、事業に関係があるからといって、すべてが経費になるわけではありません。
所得税法第45条は、業務に関連して支払ったものでも必要経費にしない支出を号ごとに挙げています。つまり判断は2段階です。
- 第37条:その支出は事業の売上を得るために必要だったか
- 第45条:法律で必要経費から外されていないか
「仕事のために払った」という理由だけでは2段階目を通れない支出があります。否認されやすいのはこの部分です。経費になるかどうかの全体的な考え方はフリーランスの経費になるもの・ならないものの判断軸で整理しているので、本記事では「ならない側」に絞って型ごとに見ていきます。
型1:税金・社会保険料は「種類」で分かれる
「租税公課」の勘定科目に入れる税金でも、経費になるものとならないものがあります。国税庁「令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方」(令和7年10月1日現在の法令等に基づく)では、次のように分けています。
| 区分 | 主な例 | 扱い |
|---|---|---|
| 経費になる | 事業税、事業用の固定資産税・自動車税、印紙税、登録免許税、税込経理方式で納付した消費税等、商工会・同業者組合の会費 | 必要経費(固定資産税などは業務用部分のみ) |
| 経費にならない | 所得税及び復興特別所得税、住民税、相続税、国民健康保険税、国民年金の保険料 | 必要経費にならない |
所得税は第45条第1項第2号、住民税(道府県民税・市町村民税)は同項第4号で除外されています。国民健康保険税や国民年金の保険料も経費にはなりませんが、確定申告で社会保険料控除(所得控除)として差し引けます。「経費にならない=まったく税負担が減らない」ではないので、入れる場所を間違えないようにしてください。
国税庁タックスアンサーNo.2210(令和8年4月1日現在法令等)も、「事業税は全額必要経費になりますが、固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になります」「所得税や住民税は必要経費になりません」としています。
型2:罰金・反則金・延滞税などのペナルティ
業務中に起きたことでも、制裁として払うお金は経費になりません。第45条第1項は、次のものを除外しています。
- 所得税以外の国税の延滞税・加算税、印紙税の過怠税(第3号)
- 地方税の延滞金・加算金(第5号)
- 罰金・科料・過料(第7号。外国で課された罰金なども含む)
収支内訳書の書き方では、交通反則金も必要経費にならないものとして挙げられています。取引先へ向かう途中の駐車違反や速度違反でも同じ扱いです。タックスアンサーNo.2210では、公務員への賄賂なども必要経費にならないとされています。
なお、所得税の利子税のうち、事業所得などを生む事業を行う人が納付する一定のもの(政令で定めるもの)は、第2号のかっこ書きで除外の対象外になっています。ペナルティに見える支出でも扱いが異なるものがあるため、迷ったら条文か税務署で確認してください。
型3:家事関連費のうち「区分できない部分」
フリーランスで一番否認されやすいのがこの型です。自宅家賃、電気代、スマホ代など、生活と仕事の両方に使う支出を家事関連費といいます。
所得税法施行令第96条は、家事関連費のうち経費にできる部分を次のように定めています。
- 白色・青色共通:主たる部分が業務の遂行上必要で、その必要な部分を明らかに区分できる場合の、その部分(第1号)
- 青色申告者:取引の記録などに基づいて、業務の遂行上直接必要だったことが明らかにされる部分(第2号)
逆に言えば、区分できない部分はまるごと経費にならないということです。収支内訳書の書き方でも、衣料費や食費などの家事上の費用、店舗併用住宅の住宅部分の家賃・固定資産税、水道料・電気料の家事分は必要経費にならないとされています。区分の基準は「使用面積や使用時間などの適切な基準」です。
否認されやすいのは、たとえば次のような支出です。
- 日常の服、普段の食事、生活用品
- 按分の根拠がない家賃・光熱費の全額計上
- 家族や友人との飲食を「交際費」とする処理
按分の具体的な計算は家事按分の考え方:自宅家賃・通信費・光熱費で解説しています。
型4:生計を一にする親族への支払い
同居の配偶者や親に「事務所スペースの家賃」や「手伝いの給料」を払っても、原則として経費になりません。タックスアンサーNo.2210は、生計を一にする配偶者や親族に払う地代家賃や給与賃金は必要経費にならないとしています(青色事業専従者給与は除きます)。
白色申告者の場合は、一定の要件を満たせば事業専従者控除を受けられます。収支内訳書の書き方(令和7年分)では、控除額は専従者1人につき86万円(配偶者以外は50万円)と、事業所得を専従者数+1で割った額のいずれか少ない方です。親族に払ったお金そのものを経費にするのではなく、別の制度で手当てする形です。
経費にはなるが「今年全額」ではない支出
「経費にならない」と混同しやすいのが、計上の時期や方法が限られる支出です。
- 資産の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする修理代は、原則として資本的支出となり、減価償却で数年に分けて経費にします(収支内訳書の書き方)。
- 消費税の課税事業者は、税抜経理方式なら原則として消費税相当額を除いた金額が経費になります。税込経理方式なら、納付した消費税等は原則として申告書を提出した年の租税公課になります。
- 仕入税額控除は、帳簿と請求書等を保存していないと適用されません(消費税法第30条第7項)。所得税の経費とは別の論点ですが、記録が足りないと両方で不利になります。
領収書がない支出の記録方法は領収書がないときの経費処理:出金伝票と記録の残し方を参考にしてください。
まとめ
経費にならない支出は、思いつきで判断するよりも型で覚える方が確実です。
- 所得税・住民税・国保・国民年金は経費にならない(国保・年金は社会保険料控除へ)
- 罰金・科料・過料・交通反則金、延滞税・加算税も経費にならない
- 家事関連費は事業分を記録で区分できた部分だけが経費になる
- 生計を一にする親族への家賃・給与は原則として経費にならない(専従者の制度は別)
判断に迷う支出は、「どの条文で除外されるか」「区分の根拠を説明できるか」を考え、記録を残しておくことが否認を避ける一番の対策です。個別の事情によって扱いが変わることがあるため、金額が大きいものは税務署や税理士に確認してください。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁 タックスアンサーNo.2210 やさしい必要経費の知識(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月9日閲覧)
- 国税庁「令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方」(令和7年10月1日現在の法令等、2026年10月9日閲覧)
- e-Gov法令検索 所得税法(昭和40年法律第33号)第37条・第45条(2026年10月1日施行版、2026年10月9日閲覧)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令(昭和40年政令第96号)第96条(2026年10月9日閲覧)
- e-Gov法令検索 消費税法(昭和63年法律第108号)第30条第7項(2026年10月1日施行版、2026年10月9日閲覧)