この記事の結論
  • 結論:大阪ガスの現行の株主還元方針は、「原則、減配をしない==累進配当==」「==株主資本配当率(DOE)3.5%==」「機動的な追加還元策の実施」の3本柱です。DOEの水準は2026年3月期の中間配当から3.0%を3.5%に引き上げたもので、中期経営計画2026(2024〜2026年度)の期間中に適用されています。
  • 理由:会社は、配当の基準を単年度の利益(配当性向)から株主資本(DOE)に変え、短期の利益の振れに左右されにくくしたと説明しています。3.5%への引き上げの理由は「実力利益の着実な向上と、財務基盤の安定性」です。
  • 確認点:年間配当は2026年3月期の実績が120円、2027年3月期の会社予想が130円です(2026年7月30日時点)。2027年度以降のDOE水準は、本記事で確認した資料には示されていません。累進配当には「原則」と付いており、減配しないことを保証するものではありません。

大阪ガスは、配当の目安を「配当性向30%」から「DOE」に切り替えた会社です。この記事では、方針の文言、DOEの水準が変わった時期、実際の配当額がDOEとどう対応しているかを、決算短信と経営計画の数字で確かめます。最後に、同じ都市ガス大手で累進配当を掲げる東京ガスと比べます。決算資料の読み方の基本は個別企業分析のやり方:決算・財務・事業を読む基本手順にまとめています。

現行方針の中身と適用期間

2026年3月13日公表の「2026年度 Daigasグループ経営計画」には、株主還元方針が次のように書かれています。

> 株主還元方針については、DOE 3.5%を基準とした累進配当と、機動的な自己株式の取得により資本効率の向上をはかる。

方針の経緯を表にまとめます。

時期方針出典
中期経営計画2026の公表時(2024年3月)原則、減配をしない累進配当/DOE 3.0%/機動的な追加還元策中期経営計画2026 主なQ&A(2024年3月8日開催)
2026年3月期の中間配当から原則、減配をしない累進配当/DOE 3.5%/機動的な追加還元策2026年3月期第2四半期決算説明会資料(2025年10月30日)
2026年度(2027年3月期)DOE 3.5%を基準とした累進配当と機動的な自己株式の取得2026年度経営計画(2026年3月13日)

中期経営計画2026の対象は2024〜2026年度(2025年3月期〜2027年3月期)で、2026年度が最終年度です。DOE 3.5%は、少なくともこの計画期間の最終年度まで続く前提で書かれています。その先の水準は、次の中期経営計画で示されるのを待つ必要があります。

DOEの分母は「株主資本」

大阪ガスのDOEは「株主資本配当率」で、分母は株主資本です。2024年3月のQ&Aでは、「DOEの分母が株主資本」「ROEの分母が自己資本」という違いはあるが、DOEは「ROE×配当性向」におおむね分解できると説明しています。ROE目標8%に従来の配当性向30%を掛けると2.4%程度ですが、還元を強めるため3%に決めた、というのが当初の根拠でした。

注意したいのは、決算短信の「純資産配当率(連結)」は自己資本ベースなので、会社のDOEとは数字がずれる点です。2026年3月期の短信では純資産配当率が2.7%と載っていますが、これは株主資本ベースのDOE 3.5%とは別の指標です。

配当額とDOEの対応を計算で確かめる

決算短信(連結)の数字を並べます。

決算期年間配当配当金総額配当性向(連結)親会社株主に帰属する当期純利益
2025年3月期(実績)95円380億円28.5%1,344億円
2026年3月期(実績)120円464億円30.7%1,527億円
2027年3月期(予想、2026年7月30日時点)130円――1,450億円

会社資料にはDOEの計算式(期首・期末の扱い)が明記されていないため、ここでは株主資本の期首と期末の平均で試算します。

  • 2025年3月期:配当金総額380億円 ÷ 株主資本の平均(1兆2,463億円と1兆3,020億円の平均)≒ 3.0%
  • 2026年3月期:配当金総額464億円 ÷ 株主資本の平均(1兆3,020億円と1兆3,508億円の平均)≒ 3.5%

どちらもその年の方針の水準とほぼ一致します。2027年3月期の予想EPSは380.73円(2026年7月30日時点)なので、配当性向を試算すると130円÷380.73円≒34.1%です。純利益が前期比5.1%減の予想でも増配を予想しているのは、配当が利益ではなく株主資本に連動する設計だからです。この挙動の違いは配当性向とDOE、減配に強いのはどちらか:業績が落ちた局面での挙動を比べるで詳しく扱っています。

自己株式取得と還元の総額

配当とは別に、自己株式の取得も続いています。

  • 2026年3月期の自己株式取得:635億円(連結キャッシュ・フロー計算書)
  • 2026年5月8日の取締役会決議:上限2,800万株・800億円、取得期間は2026年5月11日〜2027年3月31日

2026年3月期の還元を試算すると、配当金総額464億円と自己株式取得635億円の合計約1,100億円で、純利益1,527億円の約72%にあたります。ただし、自己株式の取得額は支払ベースの数字で、取得のタイミングと決算期は完全には一致しません。参考値として見てください。

2026年度経営計画では、2024〜2026年度の株主還元の累計見通しを「2,400億円+β」としています。当初計画の「1,140億円+β」から1,260億円増えた計算です。2026年度の自己株式取得については「利益推移や投資の進捗、各種財務目標達成の見通し等を踏まえ総合的に実施判断」と注記されており、規模は保証されていません。

東京ガスとの方針の違い

同じく累進配当を掲げる東京ガスと並べると、配当の「ものさし」の違いがはっきりします。

項目大阪ガス東京ガス
配当の中核原則、減配をしない累進配当EPSの中長期的な成長に合わせた増配と累進配当
数値指標DOE 3.5%(株主資本ベース)DOE・配当性向の数値目標なし
還元の目標の示し方DOEの比率金額と1株配当(2026〜2028年度で2,000億円以上、2028年度に140円)
自己株式取得機動的に実施余剰資金を成長投資と資本コントロールのための取得に配分
年間配当(直近予想)130円(2027年3月期、2026年7月30日時点)120円(2027年3月期、2026年7月30日時点)

大阪ガスは株主資本が積み上がるほど配当の目安も上がるので、配当額を読者が自分で試算しやすい方針です。東京ガスは比率の目標を持たず、到達目標の配当額と還元総額を先に示しています。2社の方針の背景は東京ガスの配当方針はどう変わったか:累進配当と自社株買いを読む、両者の性質の違いは累進配当とDOEの違い:配当方針を比較するポイントで解説しています。

強気材料とリスク

強気材料として読める点:

  • DOEを3.0%から3.5%へ計画の途中で引き上げ、年間配当は95円→120円→予想130円と推移している
  • 自己資本比率は54.4%(2026年3月末)と厚く、会社は45%を許容範囲と説明している

注意すべき点:

  • 2026年度経営計画の数値は、中東情勢の不安定化の影響を織り込んでいないと注記されている
  • 原油価格や為替(前提は65ドル/バレル、155円/ドル)が動くと、タイムラグによる損益が振れる
  • 自己株式取得で株主資本が減ると、DOEが同じでも配当総額の伸びは鈍る。一方で株数も減るため、1株配当への影響は両方を見て判断する必要がある

まとめ

  • 大阪ガスの現行方針は「原則、減配をしない累進配当」「DOE 3.5%」「機動的な追加還元策」の3本柱
  • DOEは2026年3月期の中間配当から3.0%→3.5%に引き上げられ、中期経営計画2026(2024〜2026年度)の期間中に適用されている。2027年度以降の水準は未公表
  • DOEの分母は株主資本で、短信の純資産配当率(自己資本ベース)とは別物。株主資本の平均で試算すると、2026年3月期の配当はDOE約3.5%に対応する
  • 年間配当は120円(2026年3月期実績)、130円(2027年3月期予想、2026年7月30日時点)
  • 東京ガスはDOEや配当性向の目標を持たず、還元額と到達配当額で示す点が大きく違う

次に確かめたいのは、次期中期経営計画でDOEの水準と累進配当の文言が続くかどうかです。累進配当は会社の方針であって、減配しない保証ではありません。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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