この記事の結論
  • 結論:受託開発・SES・デザインなど、IT系フリーランスの主な売上は原則として第5種事業(みなし仕入率50%)に当たります。
  • 理由:国税庁のフローチャートで、日本標準産業分類の大分類が「情報通信業」や「学術研究、専門・技術サービス業」に当たる事業は第5種とされているためです。
  • 確認点:仕入れた機器の転売や事業用PCの売却は別の区分になります。売上を取引ごとに分けて記録しておかないと、不利な率が適用されることがあります。

簡易課税を選ぶと、納める消費税は「売上にかかる消費税×みなし仕入率」を差し引いて計算します。このみなし仕入率は事業区分で決まるため、「自分の売上は第何種か」が分からないと、簡易課税が得かどうか判断できません。

この記事では、システムエンジニアやデザイナーなどIT系フリーランスの売上について、国税庁のフローチャートと法令にもとづいて事業区分の判定方法を整理します。制度の内容は2026年10月4日時点で確認した国税庁・e-Gov・e-Statの情報にもとづいています。

簡易課税の事業区分とみなし仕入率(2026年4月1日時点の法令)

簡易課税制度は消費税法37条で定められており、みなし仕入率と事業区分は消費税法施行令57条で決められています。国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在の法令等)では、次の6区分になっています。

区分主な事業みなし仕入率
第1種卸売業(仕入れた商品を形を変えずに事業者へ販売)90%
第2種小売業、農林漁業のうち飲食料品の譲渡80%
第3種農林漁業(飲食料品以外)、建設業、製造業など70%
第4種第1〜3・5・6種以外(飲食店業など)60%
第5種運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く)50%
第6種不動産業40%

簡易課税を使えるのは、基準期間(個人は前々年)の課税売上高が5,000万円以下で、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出した事業者です。適用を始めると、原則として2年間はやめられません。

課税事業者になるかどうかの判定がまだの場合は、先に消費税の課税事業者になる条件と判定フローを確認してください。

国税庁フローチャートでの判定手順

国税庁の質疑応答事例「簡易課税制度の事業区分について(フローチャート)」では、おおむね次の順で判定します。

  1. 商品を譲渡しているか:他から仕入れた商品を、性質や形状を変えずに販売していれば、販売先が事業者なら第1種、消費者なら第2種です。
  2. 事業用の固定資産の譲渡か:仕事で使っていたPCや機材を売った場合は第4種です。
  3. 日本標準産業分類の大分類で判定:建設業・製造業などなら第3種(ただし加工賃などで役務を提供する場合は第4種)、情報通信業・学術研究、専門・技術サービス業・サービス業などなら第5種、不動産業なら第6種です。
  4. どれにも当たらない場合:第4種です。

なお、事業区分は「事業者全体」ではなく、原則として課税資産の譲渡等ごと(取引ごと)に判定します。国税庁は第3種と第5種について、「おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定」するとしています。

エンジニア・デザイナーの売上は第何種か

日本標準産業分類(令和5年7月改定)にあてはめると、IT系フリーランスのよくある売上は次のように整理できます。

売上の内容日本標準産業分類での位置づけ事業区分(目安)
受託開発・システム開発・SES的な開発支援大分類G 情報通信業(3911 受託開発ソフトウェア業)第5種(50%)
自作アプリ・パッケージソフトの販売大分類G 情報通信業(ソフトウェア業)第5種(50%)
グラフィック・UI/UX・パッケージなどのデザイン大分類L 学術研究、専門・技術サービス業(7261 デザイン業)第5種(50%)
仕入れたPC・周辺機器を形を変えずに取引先企業へ販売商品の譲渡(販売先が事業者)第1種(90%)
事業で使っていたPCや機材の売却事業用固定資産の譲渡第4種(60%)

受託開発・SESは「情報通信業」で第5種

e-Statの分類では、3911 受託開発ソフトウェア業を「顧客の委託により、電子計算機のプログラムの作成及びその作成に関して、調査、分析、助言などを行う事業所」と説明しています。例として、プログラム作成業、情報システム開発業、システム開発コンサルタント業などが挙げられています。大分類は情報通信業で、フローチャートでは第5種です。

「成果物を納品するから製造業(第3種)では?」と考える人もいます。しかしソフトウェアの作成は情報通信業に分類されるため、第3種にはなりません。

デザイン業も第5種。プログラミングを伴うWeb制作は分類が変わる

7261 デザイン業には、グラフィックデザインやUI/UXデザインなどが含まれ、大分類は「学術研究、専門・技術サービス業」です。一方、e-Statの説明では、プログラミングを伴うソフトウェア作成はデザイン業から除かれています。そのためコーディング込みのWeb制作は情報通信業側に分類されると考えられます。ただし、どちらの大分類でもフローチャート上は第5種なので、みなし仕入率は50%で変わりません。

注意が必要なのは「物の販売」と「資産の売却」

案件にあわせて機器を仕入れ、そのまま取引先に販売した部分は、開発費とは別に第1種として扱える可能性があります。逆に、請求書で開発費と機器代を一括にすると区分の根拠が残りません。また、買い替えで手放した事業用PCの売却額は第4種になります。売上帳の段階で摘要を分けておくことが大切です。

複数の事業区分がある場合の計算

区分の異なる売上がある場合は、売上の税額を区分ごとのみなし仕入率で加重平均して計算するのが原則です。

計算例(税込10%の概算。受託開発700万円+機器販売100万円、いずれも税抜)

  • 売上の消費税額:70万円+10万円=80万円
  • 原則計算のみなし仕入税額:70万円×50%+10万円×90%=44万円
  • 納付税額:80万円−44万円=36万円

国税庁によると、1種類の事業の売上が全体の75%以上を占める場合は、その事業のみなし仕入率を全体に使える特例があります。上の例では第5種が87.5%なので全体に50%を使えますが、その場合の納付税額は40万円です。特例は有利なときに選べる仕組みなので、どちらが少なくなるかを比べてから選びます。

また、区分していない売上には、その中で最も低いみなし仕入率が適用されます。機器販売の記録を分けていなければ、上の例は全体が50%で計算されます。

簡易課税を選ぶか検討する際の判断材料

IT系フリーランスは仕入れや外注が少ないことが多く、第5種の50%でも本則課税より納付額が少なくなる場合があります。ただし、次のような場合は不利になることもあります。

  • 有利になりやすい:経費の多くが自分の作業時間で、課税仕入れ(外注費・機材費など)が売上の半分を大きく下回る
  • 不利になりやすい:再委託の外注費が大きい、高額な機材を購入する予定がある(本則なら還付を受けられる場合もある)
  • 判断条件:選んだら2年間は継続が必要で、届出は適用を受けたい課税期間の初日の前日までです(2割特例などの経過措置を使っている人には例外があります)

本則課税との具体的な比べ方は、簡易課税と本則課税を比較するための確認項目で整理しています。

まとめ

  • みなし仕入率は事業区分で決まり、区分は取引ごとに日本標準産業分類の大分類を基礎として判定します。
  • 受託開発・ソフトウェア販売・デザインなど、IT系フリーランスの主な売上は原則として第5種(50%)です。
  • 仕入れた機器の転売(第1種・第2種)や事業用資産の売却(第4種)は区分が変わるため、請求と帳簿を分けておきます。
  • 複数の事業がある場合は、原則計算と75%特例のうち有利なほうを選べます。区分していない売上には最も低い率が適用されます。
  • 個別の案件の区分が判断しにくい場合は、所轄の税務署や税理士に確認してください。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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