配当金計算書(支払通知書)の見方:源泉徴収税額の内訳と確定申告で使う場面
- 結論:配当金計算書は「配当金額(税引前)− 源泉徴収税額(所得税・住民税)= 支払金額(手取り)」の順に読めば大筋が分かります。
- 理由:上場株式等の配当からは、2026年4月1日時点で所得税と復興特別所得税の15.315%に加え、住民税5%が差し引かれています。合わせて20.315%です。
- 確認点:確定申告をしないなら保管するだけで足ります。配当控除や損益通算のために申告する場合は、計算書の金額をもとに申告書を作ります。株式数比例配分方式の方は、証券会社から届く書類を使います。
配当の支払時期になると、株主総会の決議通知などと一緒に「配当金計算書」が届きます。税額の欄が「*」になっていたり、口座に入ったお金が配当金額より少なかったりして、戸惑った方もいるでしょう。この記事では、計算書の各欄が何を表しているかを整理し、確定申告で計算書が必要になる場面を一次情報にもとづいて説明します。
配当金計算書とは:支払通知書を兼ねる書類
配当金計算書は、上場企業の株主名簿を管理する株主名簿管理人(信託銀行など)や発行会社が、配当を払うたびに株主へ送る明細です。三井住友信託銀行の証券代行FAQでは、配当の支払時期に株主総会決議通知や中間報告書などに同封して送るこの計算書を、確定申告書の作成に使えると案内しています(2019年5月24日更新)。
ただし、ここで説明している信託銀行発行の計算書は、配当金領収証や銀行振込で受け取る方式が前提です。株式数比例配分方式で証券口座に入金されている方は、扱いが次のように変わります。
- 計算書の税額欄は「*」と表示され、金額が載りません。みずほ証券FAQ(2023年12月6日更新)では、税金の計算と源泉徴収を証券会社側で行うためと説明しています
- 確定申告に使う明細は、証券会社が出す「上場株式配当等の支払通知書」か「特定口座年間取引報告書」です
受取方式の違いや変更手続きは配当金の受取方式の選び方と変更手続きにまとめています。
各欄の見方:配当金額・源泉徴収税額・支払金額
株主名簿管理人によって書式は異なりますが、主に次の欄が並んでいます。
| 欄 | 意味 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 所有株式数 | 基準日時点で持っていた株数 | 自分の保有数と合っているか |
| 1株当たり配当金 | 決議された1株当たりの配当額 | 決算短信などの公表値と合っているか |
| 配当金額 | 株式数 × 1株当たり配当金(税引前) | 確定申告で「収入金額」として使う数字 |
| 源泉徴収税額 | 所得税(復興特別所得税を含む)と住民税 | 比例配分方式なら「*」と表示される |
| 支払金額 | 配当金額から税額を引いた手取り | 実際に口座に入る額や、領収証で受け取る額 |
源泉徴収税額の内訳(2026年4月1日時点)
国税庁タックスアンサーNo.1330(令和8年4月1日現在法令等)によると、上場株式等の配当等には次の税率で源泉徴収がかかります。
- 所得税と復興特別所得税:15.315%(復興特別所得税の課税期間は令和25年12月31日まで)
- 住民税(配当割):5%
- 合計:20.315%
対象は大口株主等以外の個人です。発行済株式の3%以上を持つ大口株主などは扱いが別になるので、ここで説明する前提は当てはまりません。
計算例
例として、100株を保有し、1株当たり配当金が50円だった場合を考えます。
- 配当金額:100株 × 50円 = 5,000円
- 所得税等:5,000円 × 15.315% ≒ 765円
- 住民税:5,000円 × 5% = 250円
- 支払金額(手取り):5,000円 − 765円 − 250円 = 3,985円
端数をどう処理するかで1円程度ずれることがあります。申告では、自分で計算し直した数字ではなく、計算書に書かれた金額を使ってください。
確定申告で配当金計算書を使う場面
タックスアンサーNo.1330では、大口株主等以外が受け取る上場株式等の配当は、金額の大きさにかかわらず確定申告不要を選べるとされています。申告しなければ、源泉徴収されたところで課税は終わり、計算書は保管しておくだけで構いません。
申告すると得になる可能性があるのは、次のような場合です。
1. 配当控除を受けたい(総合課税)
国税庁タックスアンサーNo.1250(令和8年4月1日現在法令等)によると、総合課税を選ぶと配当控除を受けられます。控除額は、課税総所得金額等が1,000万円以下の部分について、剰余金の配当に係る配当所得の10%です。注意点は次のとおりです。
- 確定申告不要を選んだ配当や、申告分離課税を選んだ配当には適用されません
- REIT(投資法人)から受け取る分配金なども対象外です
所得が比較的低い方は、源泉徴収された所得税の一部が戻る場合があります。
2. 株式の譲渡損失と相殺したい(申告分離課税)
同じ年に上場株式等の売却で損が出ていれば、申告分離課税を選んで配当と損益通算できます。このとき、計算書の「配当金額」と「源泉徴収税額」が申告書の入力項目になります。特定口座との関係は特定口座の配当金と損益通算・確定申告の基本で詳しく説明しています。
3. 添付は不要でも保管は必要
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の「上場株式配当等支払通知書等の見方」には、確定申告書を出すときに支払通知書等を添付する必要はないと書かれています。ただし、申告書はこれらの書類にもとづいて作るものです(みずほ証券FAQ、2026年1月7日更新)。税務署から確認を求められたときに備えて、捨てずに取っておきましょう。
申告するか決める前の注意点とリスク
申告すると還付を受けられる場合がある一方で、デメリットもあります。
- 社会保険料や扶養への影響:申告した配当所得は合計所得金額に含まれます。国民健康保険料が上がったり、扶養の判定に影響したりする可能性があります
- 住民税の課税方式:住民税も所得税と同じ方式で課税される前提で考える必要があります。所得税と住民税で別々の方式を選んで有利にする、という使い方は前提にできません
- 申告単位の判断:総合課税・申告分離課税・申告不要のどれが有利かは、ほかの所得や損失の状況で変わります。還付額と負担増の両方を試算してから決めると安全です
判断の目安としては、「課税所得が低く配当控除の効果が大きい」「損失と相殺したい」のどちらかに当てはまるなら申告を検討し、どちらでもないなら申告不要を基本に考える、という整理が分かりやすいでしょう。
計算書をなくした場合
三井住友信託銀行の証券代行FAQ(2026年7月6日更新)によると、配当金計算書は再発行できません。代わりに前年1年分の「配当金支払明細書」を発行して登録住所に送ってもらえ、確定申告書の作成にも使えます。対応は株主名簿管理人ごとに違うので、計算書に書かれている管理人の窓口に確認してください。
まとめ
- 配当金計算書は「配当金額(税引前)」「源泉徴収税額」「支払金額(手取り)」の3つを押さえれば読めます
- 2026年4月1日時点の源泉徴収税率は、所得税等15.315%と住民税5%を合わせた20.315%です
- 株式数比例配分方式では税額欄が「*」と表示されます。明細は証券会社の支払通知書や特定口座年間取引報告書で確認します
- 確定申告で計算書が必要になるのは、主に配当控除(総合課税)や損益通算(申告分離課税)を使う場合です。添付は不要ですが、保管はしておきましょう
- 申告すると社会保険料などに影響することがあるため、還付額と負担増の両方を比べてから判断してください
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月4日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.1250 配当控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月4日閲覧)
- 三井住友信託銀行 証券代行FAQ「確定申告で使用できる証明書はありますか」(2019年5月24日更新、2026年10月4日閲覧)
- 三井住友信託銀行 証券代行FAQ「配当金計算書を再発行することはできますか」(2026年7月6日更新、2026年10月4日閲覧)
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「上場株式配当等支払通知書」等の見方(PDF)(2026年10月4日閲覧)
- みずほ証券FAQ「配当金計算書が届きました。株式数比例配分方式を選択した場合」(2023年12月6日更新、2026年10月4日閲覧)
- みずほ証券FAQ「確定申告書等には特定口座年間取引報告書や上場株式配当等の支払通知書の添付が必要ですか?」(2026年1月7日更新、2026年10月4日閲覧)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。