この記事の結論
  • 結論:売上600万円・経費100万円・青色申告のモデルケースでは、税金・社会保険料を差し引いた手取りは年間約365万円(売上の約61%)になる。
  • 理由:会社員と違い、国民年金・国民健康保険・所得税・住民税・個人事業税をすべて自分で負担するため、売上と手取りの差が大きくなる。
  • 確認点:国民健康保険料は自治体ごとに料率が異なり、住民税は前年所得ベースで翌年に請求される。必ず自分の経費額と自治体の料率で再計算すること。

「売上600万円なら会社員の年収600万円と同じくらい暮らせるだろう」と考えて独立すると、翌年の納付書を見て驚くことになります。フリーランスの手取りは、売上から必要経費と税金・社会保険料をすべて差し引いた後の金額だからです。

この記事では、売上600万円のモデルケースを使って、何がいくら引かれるのかを一つずつ計算します。計算の流れさえ押さえれば、自分の経費額に置き換えて何度でも試算できます。そもそもの用語整理から始めたい方は、フリーランスの売上・手取り・所得の違いを先に読むと理解がスムーズです。

モデルケースの前提条件

試算の前提を固定します。条件が1つ変わるだけで結果は変わるため、まず「誰の・いつの・どんな条件の計算か」を明確にすることが重要です。

項目前提
年間売上600万円
必要経費100万円
申告方法青色申告(青色申告特別控除65万円)
家族構成単身・40歳未満(介護保険料負担なし)
適用年分令和8年分(2026年)の所得税制・令和8年度の年金保険料
所得控除社会保険料控除と基礎控除のみ(生命保険料控除・iDeCo等はなし)

この前提での事業所得(青色申告特別控除後)は、600万円 − 経費100万円 − 65万円 = 435万円です。この435万円が、税金計算の出発点になる「合計所得金額」です。

社会保険料:国民年金と国民健康保険

フリーランスが最初に確保すべき固定費が社会保険料です。所得税・住民税の計算で全額が社会保険料控除になるため、先に金額を出します。

国民年金保険料:年額215,040円

日本年金機構によると、令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の国民年金保険料は月額17,920円です(2026年9月7日時点)。年額では 17,920円 × 12カ月 = 215,040円。所得にかかわらず定額で、まとめて前納すると割引があります。

国民健康保険料:約50万円(自治体により変動)

国民健康保険料は「所得割+均等割(自治体により平等割等も)」で構成され、料率が市区町村ごとに異なります。このモデルケース(40歳未満・単身、青色控除後所得435万円)では、都市部の料率を前提とするとおおむね年間50万円前後が目安です。

ここは試算のブレが最も大きい項目です。必ず自分の自治体のサイトで料率を確認するか、自治体の試算シートに所得を入力して実額を出してください。本記事では以降、50万円として計算を進めます。

社会保険料の合計は 215,040円 + 500,000円 = 約71.5万円です。

所得税と住民税の計算手順

所得税:約20.2万円

国税庁タックスアンサーNo.1199によると、令和7年分・令和8年分の基礎控除は合計所得金額に応じた段階制で、合計所得336万円超489万円以下の場合は68万円です(令和7年度税制改正による上乗せ後の金額。2026年9月7日時点)。

課税所得は次のとおりです。

  • 435万円 −社会保険料控除71.5万円 − 基礎控除68万円 = 課税所得 約295.4万円(1,000円未満切捨てで295万4,000円)

国税庁タックスアンサーNo.2260の税率表(令和7年4月1日現在法令等)では、課税所得195万円超330万円以下の税率は10%・控除額97,500円です。

  • 所得税:295万4,000円 × 10% − 97,500円 = 197,900円
  • 復興特別所得税(基準所得税額の2.1%、令和19年分まで)を加えると 約20.2万円

住民税:約32.3万円

住民税の基礎控除は所得税と異なり43万円のまま据え置かれている点に注意が必要です。

  • 課税所得:435万円 − 71.5万円 − 43万円 = 約320.4万円
  • 所得割10% + 均等割・森林環境税(年5,000円程度)− 調整控除 = 約32.3万円

さらに重要なのが支払時期です。住民税は前年の所得に対して翌年6月から請求されます。独立1年目は住民税負担が軽く見えますが、2年目に前年分がまとめて来るため、手取りの中から翌年分を積み立てておく必要があります。

個人事業税:約10.5万円

多くの業種では、事業所得に対して個人事業税(標準税率5%)がかかります。計算上は事業主控除290万円を引きますが、青色申告特別控除65万円は適用されません。

  • (600万円 − 100万円 − 290万円)× 5% = 10.5万円

なお、売上600万円は消費税の免税点(課税売上高1,000万円)以下ですが、インボイス発行事業者として登録している場合は消費税の納税義務が生じます。該当する方は別途上乗せして見積もってください。

手取り額のまとめ:売上600万円→約365万円

ここまでの結果を一覧にします。

項目金額
売上600万円
必要経費−100万円
国民年金保険料(令和8年度)−約21.5万円
国民健康保険料(概算)−約50万円
所得税・復興特別所得税(令和8年分)−約20.2万円
住民税(概算)−約32.3万円
個人事業税−約10.5万円
手取り約365万円(月あたり約30.4万円)

売上600万円に対する手取り率は約61%です。会社員の額面600万円と比べると、厚生年金の会社負担分がない分だけ将来の年金額も少なくなる点も含めて、同列には比較できないことがわかります。

自分の数字で試算し直す場合は、①経費を実額に置き換える、②国保料を自治体の料率で出す、③iDeCoや小規模企業共済など追加の所得控除を反映する、の3点を修正すれば十分です。手順の詳細はフリーランスの手取りを概算する計算手順で汎用的な形にまとめています。

まとめ

売上600万円・経費100万円・青色申告のフリーランスは、国民年金・国民健康保険・所得税・住民税・個人事業税を差し引くと手取り約365万円(売上の約61%)というのがモデルケースの結論です。試算のポイントは、①青色申告特別控除65万円で課税所得を圧縮できる、②国保料は自治体差が大きく実額確認が必須、③住民税は前年所得ベースで翌年に来るため積み立てが必要、の3点です。基礎控除は令和7年分・令和8年分で金額が改正されているため、古い記事の「48万円」で計算しないよう注意してください。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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