この記事の結論
  • 結論:手取りは「売上−経費−社会保険料−所得税−住民税」の5ステップで概算でき、売上600万円・経費150万円のモデルでは年間約343万円(月約28.6万円)が目安になる。
  • 理由:所得税率・基礎控除・国民年金保険料は国税庁・日本年金機構が公表する固定の数値のため、国民健康保険料さえ自分の自治体で確認すれば誰でも同じ手順で計算できるから。
  • 確認点:国民健康保険料は自治体ごとに料率が異なること、住民税は前年の所得に課税されること、業種によっては個人事業税や消費税が加わることの3点。

フリーランスは会社員と違い、振り込まれた売上がそのまま使えるお金ではありません。そこから経費・社会保険料・税金を引いた残りが、生活費に回せる手取りです。この記事では、国税庁と日本年金機構の一次資料の数値(2026年7月29日確認)を使って、令和8年分(2026年分)の手取りを5ステップで概算する手順を解説します。売上・所得・手取りという言葉の違いから整理したい方は、先にフリーランスの売上・手取り・所得の違いをご覧ください。

手取り計算の全体像:5つのステップ

計算の流れは次の一本の式に集約されます。

手取り = 売上 −(1)経費 −(2)社会保険料 −(3)所得税 −(4)住民税

これを順に求めるため、次の5ステップで進めます。

  1. 売上から経費を引いて事業所得のベースを出す
  2. 国民年金・国民健康保険の年間負担額を出す
  3. 所得控除を引いて所得税を計算する
  4. 住民税を計算する
  5. すべてを売上から差し引いて手取りを出す

ポイントは、税金の計算に使う「所得」と、手元に残る「手取り」が別物だという点です。特に青色申告特別控除は税金を減らす控除であって現金の支出ではないため、手取り計算では引き算しません。

ステップ1〜2:事業所得と社会保険料を出す

事業所得のベースを出す

まず「売上 − 必要経費」を計算します。青色申告をしている場合、税金計算上はここからさらに青色申告特別控除を引けます。国税庁タックスアンサーNo.2072(令和7年4月1日現在法令等)によると、控除額は次の3段階です。

控除額主な要件
65万円複式簿記+貸借対照表等の添付+期限内申告に加え、e-Tax申告または電子帳簿保存
55万円複式簿記+貸借対照表等の添付+期限内申告
10万円上記の要件を満たさない青色申告者

社会保険料を出す

フリーランスの社会保険は原則、国民年金国民健康保険の2つです。

  • 国民年金:日本年金機構の資料によると、令和8年度(令和8年4月〜令和9年3月)の保険料は月額17,920円、年間で215,040円です(2026年7月29日確認)。
  • 国民健康保険:保険料率は市区町村ごとに異なり、全国一律の数字はありません。前年の所得をもとに計算されるため、正確な額はお住まいの自治体の料率表かシミュレーションページで必ず確認してください。粗い目安が欲しい段階では「所得の1割前後」と仮置きし、後で実額に差し替えるのが実務的です。

支払った社会保険料は全額が社会保険料控除として所得から差し引けます。

ステップ3〜4:所得税と住民税を計算する

所得税の計算

課税所得は「事業所得(青色申告特別控除後) − 社会保険料控除 − 基礎控除など」で求めます。令和7年度税制改正で基礎控除が大きく変わり、国税庁の資料によると令和7年分・令和8年分は次のとおりです(令和7年4月1日現在法令等)。

合計所得金額基礎控除額(令和7・8年分)
132万円以下95万円
132万円超336万円以下88万円
336万円超489万円以下68万円
489万円超655万円以下63万円
655万円超2,350万円以下58万円

※95万円の区分を除く上乗せ部分は令和7・8年分限定の措置で、令和9年分以後は多くの区分で58万円に戻ります。

課税所得に、国税庁タックスアンサーNo.2260の速算表(令和7年4月1日現在法令等)を当てはめます。

課税所得金額税率控除額
195万円未満5%0円
195万円以上330万円未満10%97,500円
330万円以上695万円未満20%427,500円
695万円以上900万円未満23%636,000円

さらに2037年分まで復興特別所得税(所得税額の2.1%)が上乗せされます。

住民税の計算

住民税の所得割は、総務省の資料によると標準税率で10%(市町村民税6%+道府県民税4%)、均等割は年4,000円に森林環境税1,000円が併せて徴収されます(2026年7月29日確認)。住民税の基礎控除は所得税と異なる金額(43万円)が使われる点と、前年の所得に対して翌年度に課税される点に注意してください。開業1年目は住民税の負担が翌年にずれ込みます。

モデルケース:売上600万円・経費150万円の場合

令和8年分の数値で、e-Tax申告の青色申告者(65万円控除)を想定した概算です。国民健康保険料は自治体差があるため年40万円と仮置きしています。

項目金額計算内容
売上600万円
必要経費▲150万円
事業所得(青色控除後)385万円600万−150万−65万
国民年金▲21.5万円17,920円×12か月
国民健康保険(仮置き)▲40万円自治体の料率で要差し替え
所得税+復興特別所得税約▲16.1万円課税所得255.4万円×10%−97,500円→×1.021
住民税(概算)約▲28.9万円(385万−61.5万−43万)×10%+均等割等
手取り(年)約343.5万円600万−150万−61.5万−16.1万−28.9万

月あたり約28.6万円が生活費に回せる目安です。売上600万円でも手取りは6割弱まで下がることがわかります。所得税の課税所得を求める際の基礎控除は、合計所得385万円に対応する68万円を使っています。

概算の精度を上げるための確認点

上の手順はあくまで概算です。次の点を確認すると精度が上がります。

  • 国民健康保険料の実額:料率・上限額は自治体で大きく異なります。仮置きの数字を必ず自治体の計算例で差し替えてください。
  • 個人事業税:法定業種に該当する場合、事業主控除290万円を超える部分に原則3〜5%が課されます(モデルケースなら5%業種で約8万円)。該当業種かどうかは都道府県のページで確認が必要です。
  • 消費税・インボイス:課税事業者(インボイス登録者を含む)は、上記とは別に消費税の納税が発生します。
  • 国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済:掛金は全額所得控除になり、手取りの中から将来資金を積み立てつつ税負担を下げられます。

税金・保険・資金繰りを含めたお金の管理全体は、フリーランスのお金管理:税金・保険・資金繰りの全体像で体系的に解説しています。

まとめ

フリーランスの手取りは「売上−経費−社会保険料−所得税−住民税」の5ステップで概算できます。国民年金(令和8年度は月17,920円)や所得税率・基礎控除は公的資料で確定している一方、国民健康保険料だけは自治体ごとに異なるため、そこを実額に差し替えることが精度の分かれ目です。基礎控除の上乗せは令和7・8年分限定の措置が含まれるため、令和9年分以降は同じ売上でも手取りが変わる可能性がある点も押さえておきましょう。本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

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