この記事の結論
  • 結論:今年の所得税が通知された予定納税基準額より少なくなりそうなら、令和8年分は2026年11月16日(月)まで「11月減額申請」で第2期分を減らせる可能性があります。
  • 理由:予定納税は前年の申告納税額をもとに自動で決まるため、今年の業績悪化は反映されていません。減額申請をすると、10月31日時点の見込みで第2期分を計算し直せます。
  • 確認点:見積もりの根拠資料を用意すること、令和8年度改正の基礎控除見直しは見積額の計算に入れないこと、承認されるかどうかは税務署が決めること、の3点です。

予定納税の減額申請とは:前年基準の負担を今年の実態に合わせる手続

予定納税は、予定納税基準額が15万円以上になる人が、その年の所得税と復興特別所得税の一部を先に納める制度です。予定納税基準額は、原則として「その年の5月15日時点で確定している前年分の申告納税額」と同じ金額です。この3分の1ずつを第1期分(7月)と第2期分(11月)で納めます(国税庁「令和8年分 予定納税について」、令和8年6月1日現在の法令に基づく)。

つまり、前年に売上が大きかった人ほど、今年の売上が落ちても前年並みの金額を先に納めることになります。この差を調整するのが予定納税額の減額申請です。

制度の全体像(対象条件・通知時期・納付方法)は予定納税の対象条件・時期・減額申請にまとめています。この記事では、減額申請の手順に絞って説明します。

減額申請ができる条件

国税庁の説明書では、今年分の申告納税見積額が、通知された予定納税基準額より少なくなると見込まれる場合の例として、次の4つを挙げています(令和8年6月1日現在)。

区分主な内容
(1) 廃業・休業・失業事業をやめた、休んでいる、職を失った
(2) 業況不振今年の所得が前年より明らかに少なくなると見込まれる
(3) 災害・盗難・横領事業用の資産や山林が損害を受けた
(4) 控除の増加雑損控除、医療費控除、扶養控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、住宅ローン控除などが前年より増える

売上が落ちた個人事業主は、通常 (2) にあたります。開業届を出して法人化した場合などは (1) にもあたります。申請書には「減額申請の具体的理由」を書く欄があるため、「主要取引先との契約終了により、1〜10月の売上が前年同期比で約4割減少」のように、事実と数字で書けるようにしておきます。

ひとつ注意点があります。令和8年度税制改正による基礎控除の見直しは、申告納税見積額の計算に含めません。そのため、(4) の「所得控除額が前年より増える場合」にもあたりません。この改正は確定申告のときに反映されます(国税庁「令和8年分 予定納税について」)。

提出期限:令和8年分は7月15日と11月16日

減額申請は年に2回あり、どの時点の状況で見積もるかが違います。

種類見積もりの基準日令和8年分の提出期限減額の対象
7月減額申請6月30日の現況2026年7月15日(水)第1期分・第2期分
11月減額申請10月31日の現況2026年11月16日(月)第2期分

申請書様式の注意書きでは、原則の期限は11月15日です。令和8年は11月15日が日曜日にあたるため、国税庁の説明書には11月16日(月)と書かれています。第2期分の納期限は2026年11月30日(月)で、振替納税を使っている場合も同じ日に引き落とされます。

この記事を書いている2026年10月時点では、7月減額申請の期限はすでに過ぎています。いまから使えるのは11月減額申請です。11月減額申請で見直されるのは第2期分だけで、7月に納めた第1期分がこの申請で戻ってくるわけではありません。第1期分は翌年の確定申告で精算します。

申告納税見積額の出し方と計算例

申請書の裏面には「申告納税見積額等の計算書」がついていて、確定申告に近い流れで今年分の税額を見積もります(国税庁「令和7年分 予定納税額の7月(11月)減額申請書」の書き方による)。

見積もりの手順

  1. 所得金額を見積もる:10月31日(7月申請なら6月30日)の現況で、今年1年分の事業所得などを見積もります。1〜10月の実績に、11〜12月の見込みを足すのが現実的です。
  2. 所得控除を差し引く:社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、扶養控除なども、同じ基準日の現況で年間分を見込みます。
  3. 税額を計算する:課税所得金額に所得税の税率をかけ、税額控除と源泉徴収税額を差し引きます。
  4. 復興特別所得税を加える:差し引いた後の所得税額 × 2.1% を加えた金額が「申告納税見積額」です(百円未満は切り捨て)。15万円未満なら0と書きます。

所得税の税率は、課税所得195万〜329.9万円の部分が10%(控除額97,500円)、330万〜694.9万円の部分が20%(控除額427,500円)です(国税庁タックスアンサーNo.2260、令和8年4月1日現在)。年末までの着地見込みの作り方は、年末に納税額を先に見積もる:着地見込みから所得税・住民税・国保を逆算するで詳しく説明しています。

第2期分の計算式(11月減額申請)

  • 第1期分:税務署から通知された第1期分の金額(7月減額申請が承認された場合は、承認後の金額)
  • 第2期分:(申告納税見積額 − 第1期分)× 1/2

7月減額申請の場合は、第1期分・第2期分ともに申告納税見積額の3分の1です。

計算例(仮定の数字)

前年の申告納税額が90万円で、第1期分・第2期分に30万円ずつ通知された人の例です。今年は売上が落ち、10月31日時点の見込みで課税所得が400万円になるとします(税額控除・源泉徴収はないものとします)。

項目金額
所得税(400万円 × 20% − 427,500円)372,500円
復興特別所得税(× 2.1%)7,822円
申告納税見積額(百円未満切捨て)380,300円
第1期分(通知額・納付済み)300,000円
第2期分((380,300 − 300,000) × 1/2)約40,000円

通知どおりなら11月に30万円を納めるところが、承認されれば約4万円になります。11月に手元に残る現金は約26万円増えます。ただし、年税額そのものが減るわけではありません。年末に売上が回復して実際の税額が見積もりを上回れば、その分は翌年3月の確定申告で納めます。

提出の手順と注意点

提出の流れ

  1. 予定納税額の通知書(例年6月15日までに届く)で、予定納税基準額と各期の金額を確認する
  2. 国税庁サイトから「予定納税額の7月(11月)減額申請書」を入手する(11月申請のときは「7月」を消して使う)
  3. 計算書で申告納税見積額と第2期分を計算する
  4. 帳簿の月次集計や試算表など、見積もりの根拠資料を添付書類として記入・添付する
  5. 期限までに所轄の税務署へ提出する(e-Taxでも提出でき、承認通知を電子交付で受け取ることもできます)

判断するときの注意点

  • 承認されるとは限らない:税務署は申請を審査し、承認・一部承認・却下のいずれかを書面で通知します。根拠の弱い見積もりは一部承認や却下になることがあります。
  • 楽観的にも悲観的にもしない:見積もりを低く出しすぎると、確定申告での納付額(第3期分)が大きくなり、資金繰りの山が3月に移るだけです。逆に、減額をためらって手元資金が不足し、仕入れや生活費が苦しくなるのも避けたいところです。
  • 住民税・国保は別:予定納税は所得税と復興特別所得税の制度です。住民税と国民健康保険料は、この申請では変わりません。
  • 災害の場合は別の手続:7月1日以降に災害で住宅や家財の2分の1以上の損害を受け、今年の所得金額が1,000万円以下と見込まれる場合は、災害減免法による減額申請(被災日から2か月以内)も使えます。

まとめ

予定納税は前年の実績で決まるため、売上が落ちた年ほど負担が重く感じられます。今年の所得税が通知された予定納税基準額を下回りそうなら、令和8年分は2026年11月16日(月)までの11月減額申請で、10月31日現況にもとづいて第2期分を計算し直せます。第2期分は「(申告納税見積額 − 第1期分)× 1/2」で計算し、令和8年度改正の基礎控除見直しは見積もりに含めません。承認は税務署の判断で、年末に業績が戻れば確定申告で納める額が増えます。根拠資料をそろえたうえで、資金繰りと翌年3月の納付の両方を見て判断してください。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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