この記事の結論
  • 結論:12月の着地見込みが固まった時点で「所得税・住民税・国保・個人事業税・消費税」の5本を同時に逆算すれば、翌年に必要な納税資金を先に確保できる
  • 理由:これらは課税年と支払年がズレており、令和8年分の所得に対する支払いは2027年3月から翌年初めまで、断続的に分散して到来するため
  • 確認点:令和8年分から所得税の基礎控除は最大104万円になる一方、住民税の基礎控除は43万円のまま。所得税が軽くなっても住民税と国保はほとんど軽くならない

フリーランスの資金繰りが年明けに崩れる原因は、赤字ではなく「支払時期の集中」であることが多いです。売上が伸びた年ほど翌年の負担は重くなりますが、その請求書は年をまたいでから届きます。12月に着地見込みが見えた時点で試算しておけば、必要額を12か月ではなく残りの数か月で積み増す判断もできます。

12月に試算する理由:負担は翌年に分散して到来する

その年(令和8年分=2026年1〜12月)の所得に対する支払いは、翌年以降に次の順で発生します。

時期(令和8年分の所得に対応)内容
2027年2月16日〜3月15日所得税・復興特別所得税の確定申告と納付
2027年3月31日消費税・地方消費税の申告と納付(個人事業者の特例で3月31日まで延長)
2027年6月ごろから年4回個人住民税(普通徴収)
2027年6月ごろから翌年にかけて分割国民健康保険料(回数は自治体により異なる)
2027年8月・11月個人事業税(東京都の場合の納期)
2027年7月・11月令和9年分の予定納税(予定納税基準額15万円以上の場合、各3分の1)

所得税の申告・納付期限は原則としてその年の翌年3月15日、個人事業者の消費税は翌年3月31日です(国税庁タックスアンサー、令和8年4月1日現在法令等)。住民税は前年の所得に対して課税される仕組みのため、廃業や大幅な減収があっても1年遅れで請求が来ます。

令和8年分の前提:所得税と住民税で基礎控除の差が広がった

令和8年度税制改正により、所得税の基礎控除は本則58万円から62万円へ引き上げられ、さらに租税特別措置法による加算が乗ります。国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」によると、令和8年・9年分の控除額は次のとおりです(令和8年4月1日現在の法令等)。

合計所得金額令和8・9年分改正前の令和8年分
489万円以下104万円95万〜68万円
489万円超655万円以下67万円63万円
655万円超2,350万円以下62万円58万円

一方、個人住民税の基礎控除は据え置きです。総務省「令和8年度地方税制改正(案)について」(令和7年12月)は、個人住民税の非課税限度額や基礎控除等について「地域社会の会費」的な性格を踏まえ、必要な対応を「検討する」とするにとどめています。結果として、合計所得489万円以下の層では基礎控除の差が104万円対43万円まで開きます。所得税だけを見て「今年は軽そうだ」と判断すると、住民税と国保で資金が足りなくなる可能性があります。

着地見込みから逆算する手順と試算例

手順は4ステップ

  1. 12月時点の売上見込みから必要経費と青色申告特別控除を引き、合計所得金額を出す
  2. その年に実際に支払った国民健康保険料・国民年金保険料などを社会保険料控除として集計する
  3. 所得税は基礎控除104万円(合計所得489万円以下の場合)、住民税と国保は基礎控除43万円と、控除額を使い分けて別々に計算する
  4. 個人事業税と消費税を上乗せし、翌年に出ていく総額を確定させる

試算例:売上800万円・経費250万円

単身・40歳未満・青色申告特別控除65万円・東京23区在住・扶養なしを想定します。事業所得は800万円−250万円−65万円=485万円、社会保険料控除は年間の支払実績を仮に75万円とします。

項目計算金額
所得税+復興特別所得税課税所得306万円×10%−9.75万円、税率2.1%加算約21.3万円
住民税+森林環境税課税所得367万円×10%+5,000円約37.2万円
国民健康保険料旧ただし書き所得442万円に令和8年度の練馬区料率を適用約53.5万円
個人事業税(550万円−事業主控除290万円)×5%13.0万円
合計約125万円
消費税(2割特例適用時)800万円×10%×20%16.0万円
総合計約141万円

売上に対して約17.6%です。国保の所得割は旧ただし書き所得(総所得金額等−43万円)を基礎に計算され、料率は自治体ごと・年度ごとに改定されるため、上記はあくまで東京23区の令和8年度率での目安になります。また所得税が15万円以上になったため、2027年は確定申告分に加えて7月・11月の予定納税(各約7.1万円)も発生します。

積み立て額の決め方と、試算がズレる要因

上の例なら月11.8万円、または入金額の18%を納税専用口座へ移す運用になります。着地見込みの精度が粗いうちは、売上に対して15〜20%を機械的に取り分けておき、確定申告後に差額を戻す運用のほうが破綻しにくいです。入金予定と支払予定を並べる作業は入金遅延に備えるキャッシュフロー表の作り方の手順がそのまま使えます。

試算が有利に振れる条件は、12月中の設備投資や小規模企業共済・iDeCoの掛金、未払費用の計上などで合計所得が下がる場合です。特に合計所得489万円をわずかに超えるゾーンでは、基礎控除が104万円から67万円へ段階的に下がるため、控除の追加が効きやすくなります。

逆にズレる要因は3つあります。第一に、12月納品・翌年入金の売上も発生主義でその年の所得に入るため、手元資金がないまま課税所得だけが増えること。第二に、国保の料率と賦課限度額が毎年度改定されること。第三に、消費税の2割特例は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間が対象で、暦年課税期間の個人事業者では令和8年分が最後になる点です(国税庁の令和8年度税制改正特集では、令和9年分・令和10年分について個人事業者向けの3割特例が案内されています。2026年9月15日時点)。翌々年の負担が増える前提で資金計画を立てておくほうが安全です。

住民税だけを素早く概算したい場合は住民税はいくら備える?フリーランスの概算方法、予定納税の条件や減額申請は予定納税の対象条件・時期・減額申請を併せて確認してください。

まとめ

年末の試算で押さえるべきは、所得税・住民税・国保が別々の控除額と別々の支払時期で動くという構造です。令和8年分は所得税の基礎控除が最大104万円まで引き上げられた一方、住民税は43万円のまま据え置かれており、所得税の減り方だけを見て資金計画を組むと不足が出やすくなっています。売上に対する納税・社会保険の総負担を一度実額で出し、月次の積立額に置き換えておくことが、翌年の資金繰りを守る最も確実な方法です。具体的な税額や料率は自治体・年度・個別事情で変わるため、最終判断は所轄税務署や自治体窓口、税理士への確認をおすすめします。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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