予定納税の対象条件・時期・減額申請
- 結論:前年の申告納税額をもとに計算した予定納税基準額が15万円以上だと、6月15日までに通知が届き、7月と11月に所得税を前払いする義務が生じる。
- 理由:確定申告での納税を年1回にまとめず分割前払いさせる制度で、対象になるかどうかは所得の水準で機械的に決まり、任意選択ではない。
- 確認点:今年の所得が前年より大きく減る見込みなら、6月30日時点の見積もりに基づき7月15日(第1期・第2期分)または11月15日(第2期分のみ)までに減額申請をすれば、払いすぎを防げる。
6月ごろに税務署から届く「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」を見て、身に覚えのない請求に戸惑う個人事業主は少なくありません。予定納税は前払いの仕組みであり、確定申告で必ず精算されますが、資金繰りへの影響は無視できません。本記事では、対象となる条件、納付時期、そして所得が減った場合に使える減額申請の手続きを、国税庁の一次資料に基づいて整理します。
なお、フリーランスの税金・保険・資金繰り全体の考え方はフリーランスのお金管理:税金・保険・資金繰りの全体像で解説しています。あわせて、報酬から源泉徴収されている方は源泉徴収される報酬と確定申告での精算方法も参考にしてください。
予定納税とは何か——対象になる条件
予定納税は、その年の所得税及び復興特別所得税の一部を、確定申告を待たずにあらかじめ納付する制度です。国税庁のタックスアンサーによれば、予定納税基準額が15万円以上になると対象となります(2026年6月1日現在の法令等に基づく)。
予定納税基準額は、原則として「その年の5月15日現在で確定している前年分の申告納税額」を基に計算されます。つまり、前年の所得や税額を基準に「今年も同程度の所得があるはず」という前提で、税務署が自動的に金額を算出する仕組みです。事業を始めたばかりで前年の実績がない場合や、前年の所得が譲渡所得・一時所得など特定の要因による場合は対象外になることもあります。
対象となった場合、税務署長からその年の6月15日までに、書面またはe-Taxによる通知で予定納税額が知らされます。通知の金額に驚いても、まずは制度上の前払いであることを理解した上で、次章の納付スケジュールを確認してください。
納付時期と金額の考え方
予定納税の納付は年2回に分かれています。
| 区分 | 納付期間 |
|---|---|
| 第1期分 | その年の7月1日〜7月31日 |
| 第2期分 | その年の11月1日〜11月30日 |
各期の納付額は、原則として予定納税基準額の3分の1ずつです。納期限が土日祝日に当たる場合は翌営業日にずれます。納付方法は金融機関の窓口、税務署窓口、e-Taxなど複数の選択肢があります。
重要なのは、予定納税はあくまで前払いであり、翌年の確定申告で確定税額と精算されるという点です。確定税額が予定納税額より少なければ還付、多ければ追加納付となります。したがって「予定納税額=最終的な税額」ではなく、資金繰り上の一時的な立て替えと捉えるのが実態に近い理解です。
減額申請ができる条件
前年より所得が大きく落ち込みそうな年に、前年基準の予定納税額をそのまま払うのは資金繰りを圧迫します。こうした場合に備えて、国税庁は予定納税額の減額申請という手続きを用意しています。
国税庁の案内によれば、廃業、休業又は業況不振などの理由で、その年6月30日の現況による申告納税見積額が、予定納税基準額よりも少なくなると見込まれる場合に、減額申請を行うことができます。第2期分についてはさらに、10月31日の現況による見積額が既に承認済みの見積額よりも少なくなる場合の再申請も可能です。
減額が認められる典型的な事由としては、次のようなケースが挙げられます。
- 主要な取引先を失うなどして売上が大きく減少した
- 廃業・休業により事業所得そのものが発生しなくなった
- 災害や盗難などで損失が生じた
- 医療費控除など各種控除の増加が見込まれる
申請にあたっては、6月30日(または10月31日)時点の実績と見通しをもとに、その年の申告納税見積額を自分で試算する必要があります。過去の帳簿や試算表をベースに、売上・経費の推移から現実的な着地見込みを立てることが前提になります。
減額申請の期限と提出方法
減額申請には期限があり、これを過ぎると原則として当初の通知額どおりに納付することになります。
- 第1期分・第2期分の両方を減額したい場合:その年の7月1日から7月15日まで
- 第2期分のみを減額したい場合(特別農業所得者の減額申請を含む):その年の11月1日から11月15日まで
申請書は「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」で、国税庁のホームページからダウンロードするか、税務署窓口で入手できます。提出は書面による郵送・持参のほか、e-Taxを使ったオンライン申請にも対応しています。
なお、減額申請はあくまで見積もりに基づく手続きです。申請後に実際の所得が見積もりより多かった場合は、確定申告で不足分を追加納付することになります。逆に見積もりより所得が少なかった場合は還付されるため、過度に楽観的な見積もりを立てるインセンティブは基本的にありません。無理のない、根拠のある試算を心がけましょう。
予定納税に備える実務上のポイント
予定納税への対応で押さえておきたい実務ポイントを整理します。
- 通知を無視しない:6月15日までに届く通知は納税義務の発生を意味します。金額に疑問があれば早めに税務署や税理士に確認しましょう。
- 資金を計画的に確保する:7月・11月の納付月に向けて、事業用口座に納税資金を別建てで積み立てておくと資金ショートを防げます。
- 所得が減る見込みがあれば早めに動く:減額申請の期限は短く、7月15日は意外とすぐに来ます。6月時点で今年の着地見込みを試算しておくことが重要です。
- 確定申告での精算を前提に管理する:予定納税額と確定申告時の実際の税額との差は、還付・追加納付という形で必ず調整されます。年間を通じた損益管理と合わせて把握しておくと安心です。
まとめ
予定納税は、前年の所得を基準に一定額以上の税額が見込まれる個人事業主に課される前払い制度で、予定納税基準額15万円以上が対象の目安です。6月15日までに通知が届き、7月と11月の2回に分けて納付します。今年の所得が前年より大きく落ち込む見込みがある場合は、6月30日時点の現況をもとに、7月15日(または11月15日)までに減額申請を行うことで、過大な前払いを避けられます。いずれも最終的には確定申告で精算される仕組みであるため、通知が届いたら慌てず、まずは自身の今年の所得見通しを確認することが第一歩です。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- No.2040 予定納税|国税庁(令和8年6月1日現在法令等)
- A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁(2026年8月13日確認)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。