この記事の結論
  • 結論:令和6年度分(令和5年分の所得)以降の個人住民税では、上場株式等の配当について所得税と異なる課税方式を選べなくなりました。所得税で選んだ方式が住民税にもそのまま使われます。
  • 理由:令和4年度税制改正で課税方式を揃える改正が行われ、所得税の確定申告書の内容をもとに住民税を課税する仕組みになったためです。
  • 確認点:所得税で得をする方式でも、住民税・国民健康保険料・介護保険料・扶養判定まで含めると損になる場合があります。申告する前に家計全体で試算することが大切です。

上場株式の配当金を確定申告するときは、総合課税、申告分離課税、申告不要の3つから課税方式を選びます。以前は「所得税は総合課税で配当控除を受け、住民税は申告不要にする」といった組み合わせも使えましたが、この方法は今は使えません。この記事では、制度がどう変わったか、所得税と住民税が連動することで何に影響するか、方式を選ぶときの具体的な手順を一次情報をもとに整理します(制度の内容は2026年10月3日時点で確認した公表資料にもとづきます)。

何が変わったのか:所得税と住民税で課税方式が揃った

改正前は住民税だけ別の方式を選べた

以前は、上場株式等の特定配当等と、源泉徴収ありの特定口座で生じた譲渡所得について、個人住民税では所得税と異なる課税方式を選ぶことができました。そのため、住民税の納税通知書が届く前に自治体へ申告書を出し、「住民税は申告不要」とする方法がよく使われていました。

令和6年度分の住民税から異なる方式は選べない

令和4年度税制改正により、令和6年度分の個人住民税(令和5年分の所得が対象)から、上場株式等の配当所得等の課税方式を所得税と住民税で揃えることになりました。東京都小平市の案内(2025年11月5日更新)では、次のように説明されています。

  • 上場株式等の配当所得等を含めて所得税の確定申告書を出した場合、個人住民税もその内容をもとに所得税と同じ方式で課税される
  • 所得税で申告不要を選んだ場合は、個人住民税でも申告不要になる

神戸市の案内(2026年1月13日更新)でも、2023年分以降の所得については所得税と住民税で異なる課税方式を選べないと明記されています。

項目改正前(令和5年度分まで)改正後(令和6年度分から)
住民税の課税方式所得税と別に選べた所得税と同じ方式になる
所得税は総合課税、住民税は申告不要選べた選べない
住民税だけの申告書の提出方式を変えるために使われていた方式を変える目的では使えない

3つの課税方式の違いと税率

国税庁タックスアンサーNo.1330(令和8年4月1日現在法令等)によると、上場株式等の配当の源泉徴収税率は所得税・復興特別所得税15.315%(ほかに地方税5%)です。

方式主な特徴配当控除上場株式の譲渡損失との損益通算
総合課税給与などほかの所得と合計して累進税率で課税条件を満たせば受けられるできない
申告分離課税所得税15.315%・住民税5%で分離して課税受けられないできる
申告不要源泉徴収で課税関係が終わる受けられないできない(確定申告しないため)

配当控除の控除率は、課税総所得金額などが1,000万円以下の部分について、剰余金の配当等で10%、証券投資信託の収益分配で5%です(タックスアンサーNo.1250、令和8年4月1日現在法令等)。外国法人からの配当や、申告不要・申告分離課税を選んだ配当は対象外です。総合課税で得になるかどうかは課税所得の水準によって変わるため、詳しくは配当控除を使うか判断するための確認項目で確認してください。

なお、No.1330には、令和9年1月1日以降は復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税(1%相当)があわせて源泉徴収されるという注記があります。2027年以降に支払われる配当では、源泉徴収票の内訳が変わる点に注意してください。

方式選択のルール

  • 上場株式等の配当を申告するときは、申告する配当の全額について総合課税か申告分離課税のどちらかに揃える必要があります(タックスアンサーNo.1331)。
  • 申告不要にするかどうかは、1回に支払を受ける配当ごとに選べます。源泉徴収ありの特定口座に受け入れた配当は口座ごとに選びます(No.1330)。

つまり、「A口座の配当は申告不要、B口座の配当は申告分離課税」という使い分けはできます。一方、「申告する配当の一部は総合課税、残りは分離課税」という分け方はできません。

連動で影響が出るもの:住民税以外も確認する

住民税の課税方式が所得税と揃ったことで、所得税のために配当を申告すると、その所得が住民税の計算にも入ります。東京都北区の案内(2025年2月7日更新)によると、特定配当等を含む確定申告書を出した場合、これらの所得は住民税でも合計所得金額や総所得金額等に算入されます。その結果、次の項目に影響が出ることがあります。

  • 扶養控除・配偶者控除を受けられるかどうか(家族の扶養に入っている人が配当を申告した場合など)
  • 住民税の非課税判定
  • 国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料の算定
  • 所得をもとに判定する各種行政サービス

特に国民健康保険に加入している個人事業主・フリーランスや年金生活者は注意が必要です。配当控除や損益通算で所得税が少し戻っても、保険料の増加分がそれを上回ることがあります。反対に、会社員で社会保険に加入している人は保険料への影響が出にくく、所得税の還付額を中心に判断しやすい傾向があります。

課税方式を選ぶ手順

手順1:配当の受け取り状況を整理する

特定口座年間取引報告書や配当金の支払通知書で、口座ごとの配当額・源泉徴収税額・譲渡損益を確認します。NISA口座の配当は非課税なので、申告の対象外です。特定口座の仕組みについては特定口座の配当金と損益通算・確定申告の基本を参照してください。

手順2:申告する目的をはっきりさせる

  • 上場株式の譲渡損失と配当を通算したい場合は、申告分離課税が候補になる
  • 課税所得が低く、配当控除で税負担を下げたい場合は、総合課税が候補になる
  • 源泉徴収だけで済ませたい場合や、保険料・扶養への影響を避けたい場合は、申告不要が候補になる

手順3:所得税・住民税・保険料をあわせて試算する

所得税の還付額だけで判断するのは避けましょう。住民税は所得税と同じ方式で課税されるため、住民税の増減と、国保料・介護保険料の変化をあわせて比べます。保険料の算定方法は自治体ごとに違うため、お住まいの市区町村の案内で確認してください。

手順4:確定申告書で方式を選び、提出する

国税庁「令和7年分 確定申告の手引き」では、申告する配当について総合課税か申告分離課税を選び、申告書の該当欄に記入する手順が案内されています。申告不要にする配当は申告書に含めません。住民税は、提出した確定申告書の内容をもとに同じ方式で課税されます。

手順5:判断に迷うケースは相談する

扶養に入っている家族の配当、年金受給者の保険料、複数口座の組み合わせなどは影響が出る範囲が広くなります。税務署や市区町村の住民税担当課、税理士に確認してから申告すると安心です。

まとめ

  • 令和4年度税制改正により、令和6年度分の個人住民税(令和5年分の所得)から、上場株式等の配当の課税方式は所得税と住民税で揃うことになりました。
  • 所得税で総合課税・申告分離課税を選べば住民税も同じ方式になり、所得税で申告不要を選べば住民税も申告不要になります。
  • 上場株式等の配当の税率は所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%です(令和8年4月1日現在法令等)。申告する配当は総合課税か分離課税のどちらかに揃え、申告不要は支払ごと・口座ごとに選べます。
  • 配当を申告すると合計所得金額が増え、国保料・介護保険料・扶養判定に影響することがあります。所得税の還付額だけでなく、家計全体の負担で比べることが判断のポイントです。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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