付加年金と国民年金基金は併用できない:選ぶときの比較軸と手続き
- 結論:付加年金と国民年金基金は同時に加入できません。少額で始めて、いつでもやめられる付加年金か、掛金を増やせる代わりに途中で脱退できない国民年金基金かを選ぶことになります。
- 理由:国民年金基金の1口目には付加年金に相当する給付が含まれているため、基金の加入者は付加保険料を納められません。
- 確認点:毎月の掛金を何年払い続けられるか、終身で受け取る年金をどれだけ厚くしたいか、iDeCoと合わせた拠出の上限はいくらか。この3点を先に確認してください。
国民年金の第1号被保険者であるフリーランスは、会社員のような厚生年金がありません。将来の年金を上乗せする公的な手段として、まず候補になるのが付加年金と国民年金基金です。ただし、この2つは同時に使えません。この記事では、日本年金機構と国民年金基金連合会の資料を確認したうえで(確認日:2026年10月3日)、両制度の違いと選ぶときの考え方をまとめます。
国民年金そのものの仕組みは「国民年金と付加年金:フリーランスの基礎保障」で解説しています。
併用できないルールと、その理由
日本年金機構の「付加保険料の納付」ページ(2026年7月23日更新)では、付加保険料を納められるのは第1号被保険者と65歳未満の任意加入被保険者で、国民年金基金の加入者は対象外とされています。
理由は国民年金基金連合会のQ&Aに書かれています。基金の1口目の給付には、国民年金の付加年金に相当する部分が含まれているためです。つまり基金に入ると、付加年金の役割は基金が引き受けることになります。その裏付けとして、老齢基礎年金を繰上げ受給している間は、基金から付加年金に相当する部分だけを受け取る仕組みになっています。
なお、付加年金とiDeCo(個人型確定拠出年金)は同時に加入できます。ただし日本年金機構は、iDeCoの拠出限度額によっては付加保険料と併用できない場合があるとして、確認を求めています。
保険料・給付・控除の比較表
| 項目 | 付加年金 | 国民年金基金 |
|---|---|---|
| 毎月の負担 | 月額400円の定額 | 加入時の年齢・性別・給付の型・口数で決まる(上限は月額68,000円) |
| 年金額 | 200円 × 付加保険料を納めた月数(年額) | 1口目は加入時の年齢に応じて年金月額2万円・1万5千円・1万円。2口目以降で上乗せできる |
| 受け取り方 | 老齢基礎年金に上乗せ(定額で、物価スライドなし) | 1口目は終身年金(A型・B型)、2口目以降は終身年金または確定年金(Ⅰ〜Ⅴ型) |
| 税制 | 国民年金保険料として社会保険料控除の対象 | 掛金の全額が社会保険料控除の対象 |
| 途中でやめられるか | 辞退の申出ができる | 自己都合で任意に脱退することはできない |
| iDeCoとの関係 | 併用できる(限度額に注意) | 基金とiDeCoの掛金の合計で月額68,000円が上限 |
※2026年10月3日時点で日本年金機構と国民年金基金連合会のWebサイトを確認した内容です。
参考までに、国民年金保険料は令和8年度で月額17,920円です(日本年金機構、2026年4月1日更新)。付加保険料はこれに月400円を足して納めます。
付加年金は約2年で元が取れる計算
付加年金は、納めた月数1か月につき年200円の年金が増えます。たとえば10年(120か月)納めた場合は次のとおりです。
- 納める付加保険料の合計:400円 × 120か月 = 48,000円
- 増える年金額:200円 × 120か月 = 年24,000円
受給開始から2年で払った分を回収できる計算になります。日本年金機構は、40年間納めた場合に年96,000円が上乗せされる例を示しています。一方で金額は定額のため、物価が上がっても年金額は増えません。インフレが続く局面では実質的な価値が目減りする点がリスクです。
国民年金基金は掛金が大きいぶん年金も厚くできる
国民年金基金連合会の解説では、30歳の誕生月に1口目のA型に加入した場合、掛金月額は12,110円で年金月額は2万円という例が示されています。掛金月額表(男性)を見ると、35歳0月加入の1口目B型は9,360円、A型は10,275円です。
加入する年齢が若いほど1口目の年金月額が大きく、掛金は割安になります。A型は、年金を受け取る前や保証期間中に亡くなった場合に遺族へ一時金が出る型です。B型にはこの保証がない代わりに、掛金が安く設定されています。
選ぶときの比較軸
1. 何年も払い続けられるか
国民年金基金は自己都合で脱退できません。2口目以降は減らせますが(減口)、1口目は変更できません。収入が不安定な時期が続くと、掛金が重く感じられる可能性があります。付加年金は月400円で、辞退の申出もできます。
2. 上乗せしたい年金の厚さ
付加年金で増える年金は、40年納めても年96,000円です。老後の生活費を終身年金でしっかり確保したいなら、口数を増やせる国民年金基金のほうが目標額を設計しやすくなります。
3. 節税をどこまで重視するか
どちらの掛金も社会保険料控除の対象です。ただ、付加保険料は年4,800円なので控除額も小さくなります。基金は掛金が大きいぶん、課税所得を減らす効果も大きくなります。所得が高くて税率が高い人ほど、この差を意識する価値があります。
4. iDeCoとの枠の配分
基金とiDeCoは、掛金の合計で月額68,000円という同じ枠を分け合います。運用で増やすことを狙ってiDeCoを中心にするなら付加年金とiDeCoの組み合わせ、運用リスクを取らずに終身年金を確保したいなら基金、という整理ができます。詳しくは「国民年金基金とiDeCoを比較するポイント」をご覧ください。
| こんな人 | 向いている選択肢 |
|---|---|
| 収入の波が大きく、固定の負担を小さくしたい | 付加年金(+余力があればiDeCo) |
| 運用リスクを取らずに、一生受け取れる年金を厚くしたい | 国民年金基金 |
| 運用益が非課税になるメリットを優先したい | 付加年金+iDeCo |
手続きの流れ
付加年金
- 申込先:住所地の市(区)役所・町村役場、近くの年金事務所。電子申請もできます。
- 納付期限:納付対象月の翌月末日。期限を過ぎても2年間は納められます。
- やめるとき:辞退を申し出ると、申出月の前月分で納付が終わります。
国民年金基金
- 「国民年金基金加入申出書」に記入し、加入したい国民年金基金へ郵送などで提出します。
- 加入できるのは、国民年金保険料を納めている20歳以上60歳未満の第1号被保険者と、60歳以上65歳未満の任意加入被保険者などです。
- 掛金は口座振替で納めます。4月から翌年3月までの1年分を前納すると、0.1か月分が割引されます。
- 付加保険料を納めている人が基金に加入すると、それ以降は付加保険料を納められなくなります。切り替える時期の納付状況は、年金事務所などで確認しておくと安心です。
まとめ
付加年金と国民年金基金は、同時に加入できません。基金の1口目が付加年金に相当する給付を含んでいるためです。付加年金は月400円と負担が小さく、約2年で元が取れる計算ですが、物価スライドがなく上乗せできる額にも限りがあります。国民年金基金は掛金の全額が控除の対象になり、終身年金を厚くできますが、任意に脱退できない点が最大の確認ポイントです。どちらを選ぶかは、長く払い続けられるか、iDeCoとの枠をどう配分するか、インフレへの備えをどう考えるかで決めてください。積立全体の優先順位は「フリーランスの積立の優先順位:iDeCo・小規模企業共済・NISAの使い分け」も参考になります。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 日本年金機構「付加保険料の納付」(2026年7月23日更新、2026年10月3日確認)
- 日本年金機構「付加年金」(2023年2月10日更新、2026年10月3日確認)
- 日本年金機構「国民年金保険料」(2026年4月1日更新、令和8年度保険料、2026年10月3日確認)
- 国民年金基金連合会「よくあるご質問(ご加入に関して)」(2026年10月3日確認)
- 国民年金基金連合会「よくあるご質問(掛金納付に関して)」(2026年10月3日確認)
- 国民年金基金連合会「給付の種類」(2026年10月3日確認)
- 国民年金基金連合会「掛金月額表」(2026年10月3日確認)
- 国民年金基金連合会「掛金について」(2026年10月3日確認)
- 国民年金基金連合会「Lesson3」(2026年10月3日確認)