配当金で扶養から外れる?申告方法で変わる合計所得金額の判定
- 結論:上場株式等の配当を「申告不要」にすれば、扶養判定の合計所得金額に含まれません。総合課税か申告分離課税で確定申告すると、その配当所得は合計所得金額に入ります。
- 理由:国税庁は、確定申告をしないことを選んだ配当等を配偶者控除の判定に使う合計所得金額から除くと説明しています(令和8年4月1日現在の法令等)。
- 確認点:令和8年分からは、配偶者控除・扶養控除の所得要件が合計所得金額62万円以下になります。家族が還付や損益通算のために申告する前に、扶養への影響を家族全体で試算してください。
扶養内で働く配偶者や、学生の子どもが自分の口座で配当投資をしている家庭は珍しくありません。そこで気になるのが「配当金をもらうと扶養から外れるのか」という点です。
答えは、配当金の額そのものではなく、確定申告でどの課税方式を選ぶかで決まります。この記事では、国税庁のタックスアンサーと確定申告の案内をもとに、申告方法ごとの合計所得金額の扱いを整理します。制度の内容は、特に断りがない限り令和8年4月1日現在の法令等を基準にしています。
扶養判定の基準は「合計所得金額」
まず、税金上の扶養(配偶者控除・扶養控除)は、家族の合計所得金額で判定します。国税庁のタックスアンサーによる所得要件は次のとおりです。
| 区分 | 令和7年分 | 令和8年分から |
|---|---|---|
| 扶養控除(扶養親族) | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 配偶者控除(配偶者) | 58万円以下 | 62万円以下(給与のみなら給与収入136万円以下) |
| 配偶者特別控除(配偶者) | 58万円超133万円以下 | 62万円超133万円以下 |
※令和8年分からの改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用されます。配偶者控除・配偶者特別控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であることも条件です。
合計所得金額は、給与所得や事業所得、総合課税の配当所得などを損益通算した後に合計した金額です。申告分離課税の所得も含まれます。一方で、国税庁は確定申告不要制度を選んだものは含めないと案内しています。つまり、同じ配当金でも申告するかどうかで判定が変わります。
申告方法ごとの合計所得金額の扱い
上場株式等の配当(大口株主等を除く)では、次の3つから課税方法を選べます。
| 申告方法 | 合計所得金額への算入 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 申告不要 | 算入しない | 所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%の源泉徴収で課税が終わる |
| 総合課税 | 算入する | 配当控除を使える。上場株式の譲渡損失とは損益通算できない |
| 申告分離課税 | 算入する | 税率は合計20.315%。上場株式等の譲渡損失と損益通算できるが、配当控除は使えない |
※税率は令和8年4月1日現在の法令等によるものです。国税庁は、令和9年1月1日以後は復興特別所得税率が1.1%に下がり、防衛特別所得税も源泉徴収される予定だとしています。
具体例:配当収入80万円の配偶者の場合
給与収入がなく、特定口座(源泉徴収あり)で上場株式の配当を年80万円受け取った配偶者で考えます(借入金の利子はないものとします)。令和8年分の判定は次のようになります。
- 申告不要を選んだ場合:配当は合計所得金額に入らず、合計所得金額は0円です。配偶者控除の要件(62万円以下)を満たします。
- 総合課税または申告分離課税で申告した場合:配当所得80万円が合計所得金額に入ります。62万円を超えるため配偶者控除は使えず、配偶者特別控除の対象(62万円超133万円以下)になります。控除額は配偶者の合計所得金額に応じて段階的に小さくなります。
源泉徴収が終わっている配当を、わざわざ申告したことで扶養から外れるケースがある、ということです。
申告したくなる場面と、その落とし穴
扶養されている家族の側から見ると、申告したほうが得に見える場面があります。
総合課税で還付を受けたい場合
所得が少ない人は、総合課税で申告すると適用される所得税率が低くなります。配当控除と合わせて、源泉徴収された所得税の一部が戻ることがあります。ただし、その配当は合計所得金額に入るため、家族の配偶者控除・扶養控除がなくなったり減ったりする可能性があります。自分の還付額と家族の増税額を比べて判断してください。配当控除が使えるかどうかの確認は、配当控除を使うか判断するための確認項目で整理しています。
損益通算や繰越控除をしたい場合
複数の証券会社にまたがる譲渡損失と配当を損益通算するには、申告分離課税で申告します。このときの扱いは次のとおりです。
- その年の譲渡損失との損益通算は、配当所得を減らす方向に働きます。
- 前年以前から繰り越した損失を差し引く繰越控除は、合計所得金額の判定では「適用前」の金額を使います。
国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、上場株式等の譲渡損失の繰越控除を受けている場合、合計所得金額は繰越控除を適用する前の金額で判定すると説明しています。「繰越損失で税金が0円になったから扶養内のまま」とは限りません。特定口座内で配当と損失が自動的に相殺される仕組みは、特定口座の配当金と損益通算・確定申告の基本を参照してください。
住民税だけ申告不要にはできない
以前は、所得税は申告して住民税は申告不要、という使い分けができました。しかし令和4年度税制改正により、令和6年度(令和5年分)以後は所得税と住民税で異なる課税方式を選べません。所得税で配当を申告すれば、住民税でも申告したものとして扱われます。国税庁の作成コーナーでも、住民税で配当を申告すると国民健康保険料などに影響する場合があると注意しています。
家族で事前に確認したいポイント
- 家族の配当がどの口座で、源泉徴収されているか:特定口座(源泉徴収あり)や上場株式の配当なら、通常は申告不要を選べます。NISA口座で受け取る配当は非課税なので、合計所得金額には入りません。
- 給与や事業の所得と合わせて62万円を超えないか:パート収入やフリーランス収入がある場合は、配当を申告するとその分だけ合計所得金額が増えます。働き方ごとの収入ラインは扶養内フリーランスの収入ライン:配偶者控除と社会保険を参考にしてください。
- 年末調整との整合:年末調整で配偶者控除を受けた後に家族が配当を申告し、要件を外れることがあります。その場合は、勤務先での訂正や確定申告での修正が必要になることがあります。
- 社会保険の扶養は別の基準:健康保険の被扶養者認定は税金とは別の基準(年間収入の見込み)で判断します。配当を収入に含めるかどうかは加入先の健康保険によって違うことがあるため、勤務先の健康保険組合や協会けんぽに確認してください。
- 選んだ方式は後から変えにくい:国税庁は、確定申告で選んだ課税方式は、後から更正の請求や修正申告をしても変えられないとしています。申告前に、どの方式が家族全体にとって有利かを決めておくことが大切です。
まとめ
- 配当金で扶養から外れるかどうかは、受け取った額ではなく申告方法で決まります。
- 上場株式等の配当を申告不要にすれば、扶養判定の合計所得金額には含まれません。
- 総合課税か申告分離課税で申告すると合計所得金額に入り、令和8年分は62万円を超えると配偶者控除・扶養控除の対象外になります。
- 繰越控除をしても合計所得金額は適用前の金額で判定され、住民税だけを申告不要にすることもできません。
- 還付や損益通算のメリットと、家族の控除が減るデメリットを両方試算してから申告方法を決めましょう。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁 No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月7日確認)
- 国税庁 No.1191 配偶者控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月7日確認)
- 国税庁 No.1195 配偶者特別控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月7日確認)
- 国税庁 No.1180 扶養控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月7日確認)
- 国税庁 No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月7日確認)
- 国税庁 No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度(2026年10月7日確認)
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「合計所得金額とは」(令和5年分、2026年10月7日確認)
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「配当所得がある方の入力(住民税等に関する事項)」(令和6年分、2026年10月7日確認)
- 東京都北区「令和6年度より上場株式等の配当所得等及び譲渡所得等について所得税と異なる課税方式を選択することが出来なくなりました」(2026年10月7日確認)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。