この記事の結論
  • 結論:東京ガスの現行方針(2025年10月29日決議、2026年3月期の中間配当から適用)は、1株当たり利益の中長期的な成長に合わせた増配を中核とする==累進配当==です。余剰資金は成長投資と自己株式取得に振り分けます。2026〜2028年度の中期経営計画では、3カ年で2,000億円以上の株主還元と、2028年度に1株140円までの増配を目標にしています。
  • 理由:2030年頃のROE10%に向けて、総還元性向に連動させるやり方をやめ、中期のキャッシュフロー計画の中で成長投資と還元に柔軟にお金を配る方式へ変えたためです。
  • 確認点:配当性向やDOEの数値目標はありません。年間配当は2026年3月期の実績が110円、2027年3月期の会社予想が120円です(2026年7月30日時点)。累進配当は会社の方針であり、減配しないことを保証するものではありません。

東京ガスの配当方針は、2025年10月に「総還元性向○%」という比率の目標から、「累進配当+規模で示す還元額」へ変わりました。この記事では、開示資料の日付順に、何がいつ変わったのか、配当と自社株買いの比重がどう動いたのかを確認します。決算資料の読み方の基本は個別企業分析のやり方:決算・財務・事業を読む基本手順にまとめています。

旧方針と新方針を並べて比べる

2025年10月29日の「株主還元方針の変更に関するお知らせ」では、旧方針(2023年2月22日公表)と新方針が並べて示されています。

項目旧方針(2023年2月22日公表)新方針(2025年10月29日決議)
中核の指標総還元性向(連結当期純利益に対する配当と自己株式取得の割合)を各年度4割程度中長期的な1株当たり利益(EPS)の成長に合わせた増配
配当の考え方安定配当を維持し、成長に合わせて緩やかに増配累進配当で成長の成果を安定的に還元
自社株買い消却を前提に還元策のひとつとして実施余剰資金を成長投資と「資本コントロールのための自己株式取得」に配分
適用時期―2025年度(2026年3月期)の中間配当から

変更の理由は「ROEを最重要指標とし、2030年頃のROE10%に向けて成長投資と還元に最適な配分をするため」と説明されています。旧方針では、還元額が毎年の純利益の4割程度に連動していました。新方針では配当を下げにくい土台として固め、自社株買いは余ったお金の使い道として扱います。比率の目標そのものがなくなった点が最大の違いです。

累進配当とDOEの性質の違いは累進配当とDOEの違い:配当方針を比較するポイントで整理しています。東京ガスの新方針には、DOE(自己資本配当率)や配当性向の数値目標はありません。

中期経営計画が示す還元の規模

同じ日に公表された「2026-2028年度 中期経営計画」では、還元の目標が比率ではなく金額と1株配当で示されています。

  • 株主還元:2,000億円以上(3カ年計)
  • 1株配当:140円(2028年度)
  • ROE:9%(2028年度)
  • 3カ年累計の可処分キャッシュフロー4,000億円を「株主還元0.2兆円」と「戦略的資金0.2兆円」に配分

戦略的資金の2,000億円は、ROE向上につながる案件への投資か、株主還元のどちらかに使うと説明されています。つまり還元額は「2,000億円以上」が下限の目安で、そこから上積みされるかどうかは投資案件の出方しだいです。本記事で確認した資料の範囲では、3カ年の還元額のうち配当と自社株買いをそれぞれいくらにするかの内訳は数値で示されていません。

中期経営計画の還元方針を読むときの見分け方は中期経営計画の株主還元方針の読み方:総還元性向・DOE・下限配当を見分けるも参考にしてください。

開示の時系列で見る配当の推移

方針変更の前後で、配当予想は次のように動きました。

公表日開示内容
2025年7月30日配当予想2026年3月期の年間配当予想80円(中間40円)
2025年10月29日方針変更・配当予想の修正中間配当を50円に決定し、年間予想を100円へ引き上げ
2026年4月28日期末配当の増配期末を予想の50円から60円に引き上げ、年間110円に確定
2026年4月28日決算短信2027年3月期の年間配当予想120円(中間60円・期末60円)
2026年7月30日第1四半期決算短信年間120円の予想を据え置き(修正なし)

決算短信(連結)の数字で並べると次のとおりです。

決算期年間配当配当性向(連結)親会社株主に帰属する当期純利益
2025年3月期(実績)80円41.6%742億円
2026年3月期(実績)110円16.8%2,268億円
2027年3月期(予想、2026年7月30日時点)120円―1,370億円

2027年3月期の予想EPSは418.28円(2026年7月30日時点)なので、配当性向を試算すると120円÷418.28円≒28.7%です。

2026年3月期の配当性向16.8%は低く見えますが、この期の純利益には為替換算調整勘定取崩益680億円や固定資産売却益487億円などの特別利益が入っています。2027年3月期の純利益は前期比39.6%減の予想で、増配しても配当性向は上がる計算になります。

自社株買いの比重はどう変わったか

自社株買いは配当よりずっと大きな金額で動いています。会社のIRページと適時開示で確認できた取得実績は次のとおりです。

決算期取得株数取得額
2024年3月期3,442万株1,129億円
2025年3月期2,936万株1,197億円
2026年3月期3,613万株1,998億円(2025年4〜9月に1,199億円、2025年11月〜2026年3月に799億円)
2027年3月期801万株約500億円(2026年5月7日〜9月18日、上限500億円の枠で取得を終了)

2026年3月期を試算すると、配当金総額373億円と自己株式取得額1,998億円の合計2,371億円は、純利益2,268億円の約105%にあたります。ただし、2025年4〜9月の取得分は方針変更より前に始まっているため、新方針だけの結果として読むのは適切ではありません。あくまで参考値です。

取得した株は消却も進んでいます。2026年4月24日には3,613万株(消却前の発行済株式総数の9.7%)が消却されました。会社は2026年3月期の増配理由として「自己株式取得による株数減に伴うEPS上昇」を挙げています。自社株買いでEPSを押し上げ、それに合わせて配当を増やす。この連動が新方針の骨格です。配当と自社株買いの効果の違いは自社株買いと配当はどちらが株主還元か:比較の軸で解説しています。

強気材料と注意点

強気材料として読める点:

  • 1株配当は80円(2025年3月期)から110円(2026年3月期)に増え、2027年3月期も120円を予想している(2026年7月30日時点)
  • 140円という到達目標と、3カ年2,000億円以上という還元規模が先に示されている

注意すべき点:

  • 累進配当は会社が掲げる方針で、業績や財務の状況によって変わる可能性があります。予想の注記にも「達成を約束するものではない」と明記されています
  • 2027年3月期の純利益予想は為替155円/ドル、原油85ドル/バレルを前提にしています
  • 自社株買いは余剰資金しだいで、年度ごとの規模は保証されていません

まとめ

  • 東京ガスは2025年10月29日に、総還元性向4割程度を目安とする方針から、EPS成長に合わせて増配する累進配当を中核とする方針へ切り替えた
  • 2026〜2028年度の中期経営計画で、3カ年2,000億円以上の還元と2028年度140円の配当を目標に掲げた
  • 年間配当は80円(2025年3月期)、110円(2026年3月期)と推移し、2027年3月期の予想は120円(2026年7月30日時点)
  • 自社株買いは2026年3月期に約2,000億円と配当総額を大きく上回り、株数を減らすことでEPSと配当の伸びを支える形になっている
  • DOEや配当性向の数値目標はなく、累進配当は減配しない保証ではない

比べるときは、年度ごとの純利益の振れ(特別利益の有無)と、戦略的資金2,000億円が投資と還元のどちらに回るかを、四半期ごとの開示で確かめていくのが現実的です。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

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