この記事の結論
  • 結論:資本剰余金を原資とする配当は、税務上「みなし配当(配当所得)」と「みなし譲渡収入(株式の譲渡所得等)」の2つに分けて扱います。
  • 理由:会社法上は配当でも、税法では資本剰余金の減少を伴う配当を「資本の払戻し」として扱い、出資の返還にあたる部分を株式の一部譲渡とみなすためです。
  • 確認点:発行会社から届く通知書の「1株当たりみなし配当額」と「純資産減少割合」を使って、譲渡損益を計算し、以後の取得費を減らします。

配当金の案内に「本配当の原資は資本剰余金です」と書かれていて、手続きが必要なのか迷う人は多いはずです。このケースは通常の配当と税務上の扱いが違い、受け取ったお金が「配当」と「株を一部売った代金」に分かれます。本記事では、国税庁の資料と法令、実際の企業開示をもとに、通知書の読み方と取得費を調整する手順を説明します。制度は2026年10月6日時点で確認した内容です。

資本剰余金を原資とする配当は税務上「資本の払戻し」

会社の配当原資には、主に事業で稼いだ利益の蓄積である利益剰余金と、株主からの払込みなどに由来する資本剰余金があります。利益剰余金からの配当は通常の配当所得です。一方、資本剰余金の減少を伴う配当は、税法上「資本の払戻し」として扱われます。

国税庁タックスアンサーNo.1536(令和8年4月1日現在法令等)は、株式に係る剰余金の配当のうち資本剰余金の額の減少に伴うものなどを「資本の払戻し」と定義しています。そのうえで、払戻しとして受け取る金銭等を株式等の譲渡所得等の収入金額とみなす場合の一つに挙げています。

受け取った金額は、次の2つに分かれます。

区分中身所得区分課税の流れ
みなし配当会社の利益積立金に相当する部分配当所得通常の配当と同じく源泉徴収
みなし譲渡収入出資の返還にあたる部分(交付額−みなし配当)株式等の譲渡所得等取得費を差し引いて損益を計算

上場株式等の配当等の源泉徴収税率は、所得税・復興特別所得税15.315%(ほかに地方税5%)です(国税庁タックスアンサーNo.1330、令和8年4月1日現在法令等。大口株主等を除く)。みなし配当部分にはこの税率がかかります。一方、みなし譲渡収入の部分は配当所得ではないため、扱いは株式の売却と同じ考え方になります。

通知書で見る2つの数値

資本剰余金からの配当を行った会社は、株主への案内や決算短信などで計算に必要な数値を開示します。必ず確認したいのは次の2つです。

  • 1株当たりみなし配当額:配当所得として扱う金額
  • 純資産減少割合(法令上は「払戻等割合」):取得費のうち何割を「売った」とみなすかの割合

純資産減少割合の法令上の定義

所得税法施行令第61条第2項第4号イでは、この割合は大まかに「資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額 ÷ 前事業年度終了時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を差し引いた金額」とされています。小数点以下3位未満の端数は切り上げます。ただし、払戻し直前の資本金等の額が零以下の場合、割合は零となります。株主が自分で計算できる数値ではないため、会社が開示した値をそのまま使います。

企業開示の実例:すかいらーくHD

すかいらーくホールディングスの「2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年2月13日開示)には、2025年12月期の配当原資に資本剰余金が含まれる旨の注記があります。開示された内訳は以下のとおりです。

基準日1株当たり配当金配当金総額
2025年12月期 第2四半期末8円00銭1,820百万円
2025年12月期 期末14円00銭3,185百万円

注記には「純資産減少割合 0.000」とあります。割合がゼロであれば、後述の計算式で取得費から差し引く額は0円です。資本剰余金からの配当でも、取得費の調整が実際に必要になるとは限らないことを示す例です。みなし配当として扱う額は、会社から届く通知で確認してください。

取得費を調整する手順と計算例

所得税法施行令第114条第1項では、払戻し後の旧株1株当たりの取得価額は「従前の取得価額 −(従前の取得価額 × 払戻等割合)」と定められています。これを手順に落とすと次のようになります。

  1. みなし配当額 = 1株当たりみなし配当額 × 保有株数
  2. みなし譲渡収入 = 交付を受けた金額 − みなし配当額
  3. 譲渡原価 = 従前の取得費の合計 × 純資産減少割合
  4. みなし譲渡損益 = みなし譲渡収入 − 譲渡原価
  5. 調整後の取得費 = 従前の取得費の合計 − 譲渡原価

仮の数値で計算してみる

次の条件は説明のための仮の数値で、実在の銘柄ではありません。100株を取得費合計200,000円(1株2,000円)で保有し、資本剰余金から1株50円(計5,000円)の配当を受けたとします。通知書には「1株当たりみなし配当額20円、純資産減少割合0.020」とあったものとします。

項目計算金額
みなし配当20円×100株2,000円
みなし譲渡収入5,000円−2,000円3,000円
譲渡原価200,000円×0.0204,000円
みなし譲渡損益3,000円−4,000円−1,000円
調整後の取得費200,000円−4,000円196,000円(1株1,960円)

この例では1,000円の譲渡損が出て、以後の取得費は1株1,960円になります。調整を忘れると、将来その株を売ったときに取得費が過大になり、譲渡益を少なく計算してしまいます。

口座の種類による違いと確定申告の判断

扱いは口座の種類や金融機関によって異なります。auカブコム証券の案内(2026年10月6日確認)には、特定口座内の株式でも、資本剰余金を原資とする配当のみなし譲渡損益は株主自身が計算し、原則として確定申告が必要と書かれています。また、資本の払戻しがあった日に保有している株式は、純資産減少割合に応じて取得価額を修正(減額)する必要があるとしています。証券会社によって処理が違う可能性があるため、次の点を確認してください。

  • 口座の取得単価が払戻し後に自動で修正されているか
  • 年間取引報告書にみなし譲渡損益が反映されているか
  • 反映されていない場合、確定申告で別途計算する必要があるか

みなし配当部分は通常の配当と同じく源泉徴収されます。そのため、申告不要制度を選ぶか、損益通算のために申告するかは、ほかの配当と合わせて判断します。特定口座の配当と譲渡損失の通算については「特定口座の配当金と損益通算・確定申告の基本」で整理しています。

投資判断で見ておきたい点

資本剰余金からの配当は、会社にとっては資本構成の調整や安定配当の維持という目的がある場合もあります。一方で、利益だけでは配当を賄えていない局面を示す場合もあります。判断の際は、配当性向、利益剰余金の残高、配当方針の説明をあわせて確認してください。一時的な上乗せか継続的なものかを見分ける視点は「特別配当・記念配当を通常配当と分けて見る方法」も参考になります。

まとめ

  • 資本剰余金を原資とする配当は税法上の「資本の払戻し」にあたり、みなし配当とみなし譲渡収入に分かれます。
  • 計算には、通知書や開示資料にある「1株当たりみなし配当額」と「純資産減少割合」を使います。
  • 取得費は「従前の取得費 ×(1−純資産減少割合)」に減額され、減らした額が今回の譲渡原価になります。
  • すかいらーくHDの2025年12月期のように純資産減少割合が0.000と開示される例もあり、その場合は取得費の調整額が0円になります。
  • 特定口座でも自動処理されるとは限りません。取得単価の修正状況と年間取引報告書を確認し、必要なら確定申告を検討してください。判断に迷う場合は、税務署や税理士への確認をおすすめします。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

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