この記事の結論
  • 結論:売上1,000万円・経費200万円・青色申告・単身40歳未満・横浜市在住というモデルケースでは、手取りは年間約538万円で、売上に対する割合は約54%になる。
  • 理由:所得税が20%の税率帯に入り、国民健康保険料も所得割で80万円台まで増えるため、売上600万円の場合(手取り率約61%)よりも引かれる割合が大きくなる。
  • 確認点:国保料の料率、年齢(40歳以上は介護分が加わる)、インボイス登録の有無で結果は数十万円単位で変わる。自分の条件に置き換えて計算し直すこと。

「売上が1,000万円を超えたら法人化」とよく言われますが、判断する前に、まず個人のままでいくら残るのかを正確に把握する必要があります。この記事では、売上1,000万円のモデルケースについて、社会保険料と税金を一つずつ計算します。計算の流れは売上600万円のフリーランスの手取り:税金・保険料の内訳と試算手順と同じなので、比べながら読むと所得が増えたときに負担がどう重くなるかが分かります。

試算の前提条件

項目前提
年間売上1,000万円(インボイス未登録の免税事業者)
必要経費200万円
申告方法青色申告(青色申告特別控除65万円)
家族構成単身・40歳未満(国保の介護分なし)
住所神奈川県横浜市(国保料の料率に使用)
税制令和8年分(2026年)の所得税。基準日は2026年10月6日
所得控除社会保険料控除と基礎控除のみ

事業所得は、1,000万円 − 200万円 − 65万円 = 735万円です。この金額が税金と国保料を計算する出発点になります。

なお、2026年の所得にかかる国保料と住民税は、2027年度(令和9年度)に請求されます。本記事では、2026年10月時点で公表されている令和8年度の料率を代わりに使っています。

社会保険料:国民年金と国民健康保険

国民年金保険料:215,040円

日本年金機構によると、令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円です(2026年10月6日閲覧)。年額は215,040円で、所得が増えても金額は変わりません。

国民健康保険料:約83.7万円

横浜市が2026年5月25日の告示で決めた令和8年度の料率を使います。令和8年度からは「子ども・子育て支援金分」が新しく加わりました。所得割の計算の基礎になる金額は、総所得金額から43万円を引いた692万円です。

区分所得割均等割小計賦課限度額
医療分8.33%40,870円617,306円67万円
支援分2.62%13,380円194,684円26万円
子ども分0.34%1,770円25,298円3万円
合計837,288円

どの区分も限度額には届いていないため、所得が増えればその分だけ保険料も増えます。40〜64歳の場合は介護分(所得割2.84%+均等割16,200円)が加わりますが、この所得水準では限度額の17万円に達するため、上乗せは17万円になります。

社会保険料の合計は 1,052,328円 です。

所得税・住民税・個人事業税

所得税:約72.3万円

国税庁タックスアンサーNo.1199によると、令和8年分の基礎控除は、合計所得金額が655万円を超え2,350万円以下の場合に62万円です。合計所得金額が489万円以下の人に対する上乗せ特例の対象にはなりません。この改正は2026年12月1日に施行され、令和8年分から適用されます。

  • 課税所得:735万円 − 1,052,328円 − 62万円 → 5,677,000円(1,000円未満切捨て)
  • 所得税:5,677,000円 × 20% − 427,500円 = 707,900円(No.2260の速算表で330万円超695万円以下の区分)
  • 復興特別所得税(2.1%)を加えて 約72.3万円

課税所得が695万円を超えると税率は23%になります。経費や控除が少し変わるだけで税率の区分が変わる水準である点に注意してください。

住民税:約58.9万円

住民税の基礎控除は、令和8年度も43万円のままです(合計所得金額2,400万円以下の場合)。

  • 課税所得:735万円 − 1,052,328円 − 43万円 → 5,867,000円
  • 所得割10%で586,700円、調整控除2,500円を差し引き、均等割と森林環境税(約5,000円)を加えて 約58.9万円

ここでは標準税率で計算しています。神奈川県の水源環境保全税のように独自の上乗せ課税がある自治体では、この金額より少し増えます。

個人事業税:25.5万円

税率5%の業種の場合です。個人事業税では青色申告特別控除が使えず、代わりに事業主控除290万円を差し引きます。

  • (1,000万円 − 200万円 − 290万円)× 5% = 255,000円

課税の対象外の業種や、税率が3〜4%の業種もあるので、都道府県の業種区分で確認してください。

手取りの一覧と結果を左右する条件

項目金額
売上1,000万円
必要経費−200万円
国民年金保険料−約21.5万円
国民健康保険料−約83.7万円
所得税・復興特別所得税−約72.3万円
住民税−約58.9万円
個人事業税−25.5万円
手取り約538万円(月あたり約44.8万円)

税金と社会保険料の合計は約262万円です。40〜64歳の場合は介護分17万円が加わり、その分の社会保険料控除で税金が少し減るため、手取りは差し引き約12万円少ない約526万円になります。

消費税の確認点

国税庁タックスアンサーNo.6501によると、消費税の納税義務が免除されるのは、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下の場合です。売上がこれを少しでも超えた年があると、その2年後は課税事業者になります。また、前年1〜6月の売上が1,000万円を超えた場合(特定期間の判定)や、インボイス登録をしている場合は、売上の規模に関係なく納税が必要です。課税事業者になると消費税の分だけ手取りが減るため、別に見積もっておきましょう。

法人化を検討する場合の判断材料

法人化には、役員報酬の設定次第で税率を抑えられるという利点があります。一方で、社会保険への加入義務、税理士報酬、法人住民税の均等割などのコストが増えます。個人のままの手取りを基準にして比較するのが出発点です。詳しくは法人成りを検討するタイミングのチェックリストで確認してください。

まとめ

売上1,000万円・経費200万円・青色申告・単身40歳未満のモデルケースでは、手取りは約538万円(売上の約54%)でした。ポイントは次の3つです。

  1. 令和8年分の基礎控除は合計所得655万円超で62万円になり、上乗せ特例は受けられない
  2. 国保料は限度額に届かない範囲で所得に比例して増え、令和8年度からは子ども・子育て支援金分が加わった
  3. 国保料・住民税・個人事業税は翌年に請求されるため、資金を確保しておく必要がある

自分の経費、住んでいる自治体の料率、iDeCoなどの追加控除に置き換えて試算する手順は、フリーランスの手取りを概算する計算手順にまとめています。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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