この記事の結論
  • 結論:個人事業税は「法定70業種に当てはまるか」で課税の有無が決まり、当てはまっても事業所得等が年290万円以下なら税額はゼロになる
  • 理由:地方税法が課税対象を70の法定業種に限定しており、さらに年290万円の事業主控除が全事業者に一律で適用されるため
  • 確認点:自分の業種区分と税率(3〜5%)、青色申告特別控除が使えない点、納期が8月・11月の年2回である点の3つ(2026年8月2日時点)

フリーランスとして独立して2〜3年目に入ると、「8月末に見覚えのない納税通知書が届いた」という相談が増えます。その多くが個人事業税です。所得税・住民税・国民健康保険料に気を取られていると、この税金だけが資金繰りの計画から抜け落ちがちです。

一方で、同じような働き方をしていても個人事業税がまったくかからない人もいます。この差は「稼いでいるかどうか」だけでなく、法定業種に該当するかどうかで決まります。この記事では、対象業種・控除・納付時期の3点を公式資料ベースで確認していきます。

個人事業税とは──「法定70業種」に当てはまるかがすべて

個人事業税は、国に納める所得税とは別に、都道府県に納める地方税です。総務省の地方税制度の解説によれば、個人で事業を営む場合に納める税として位置づけられ、事業の種類に応じて3つの区分に分類されています(総務省「地方税制度|個人事業税」、2026年8月2日参照)。

納税義務者になる3つの条件

東京都主税局は納税義務者を「都内に事務所や事業所を設けて、法定業種の事業を行っている個人の方」と定義しています(2026年8月2日参照)。整理すると、次の3条件をすべて満たす人が対象です。

条件内容
場所その都道府県内に事務所・事業所があること
業種地方税法が定める法定業種に該当すること
所得事業所得・不動産所得から各種控除を引いた額がプラスであること

注意したいのは、自宅兼事務所でも「事務所を設けている」と判断され得る点です。オフィスを借りていないから対象外、という理解は誤りになりやすいところです。

課税されない業種が存在する理由

個人事業税の最大の特徴は、すべての事業が対象ではないことです。地方税法は課税対象を70の法定業種に限定して列挙しており、そこに書かれていない事業は、どれだけ利益が出ていても個人事業税がかからない構造になっています。

実務上よく話題になるのが、システムエンジニア、プログラマー、ライター、翻訳家、画家、音楽家、スポーツ選手といった職種です。これらは法定業種の一覧に固有名として登場しません。ただし、業務の実態が「請負業」や「デザイン業」「コンサルタント業」に該当すると判断されれば課税対象になります。神奈川県が請負業について独立した解説ページを設けていることからもわかるように、この線引きは実態判断であり、自己判断で「うちは対象外」と決めつけるのは避けたほうが安全です。

判断に迷う場合は、所管の都道府県税事務所に業務内容を具体的に伝えて確認するのが最も確実で、費用もかかりません。

業種区分と税率(第1種5%・第2種4%・第3種3〜5%)

法定業種は3区分に分かれ、区分ごとに税率が定められています。以下は東京都主税局および総務省の資料に基づく整理です(2026年8月2日時点)。

区分業種数税率主な業種
第1種事業37業種5%物品販売業、製造業、請負業、飲食店業、不動産貸付業、駐車場業、広告業、出版業、印刷業、旅館業、運送業 など
第2種事業3業種4%畜産業、水産業、薪炭製造業
第3種事業30業種5%または3%医業、歯科医業、弁護士業、税理士業、公認会計士業、社会保険労務士業、司法書士業、行政書士業、デザイン業、コンサルタント業、理容業、美容業、クリーニング業 など(5%)

第3種事業のうち、あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業と装蹄師業だけは税率3%と定められています。フリーランスとして働く整体・鍼灸の施術者は、ここに当たるかどうかで負担が変わります。

税率は地方税法が標準を定めているため、多くの都道府県で共通していますが、地方税である以上、細かな運用や様式は自治体ごとに異なります。必ず自分が事業所を置く都道府県の公式ページで確認してください。

不動産貸付業・駐車場業は「規模」で判定される

副業的に不動産を持つフリーランスが見落としやすいのが、不動産貸付業と駐車場業です。これらは第1種事業として5%の対象ですが、一定規模以上でなければ事業とは認定されません。

東京都主税局は認定基準の一部として、住宅なら一戸建て10棟以上、マンション等なら10室以上、駐車場は寄託を受けて保管するものは1台以上、それ以外は10台以上といった目安を示しています(2026年8月2日参照)。神奈川県も「一定の規模以上のアパートや駐車場などを貸し付けている場合」は課税対象になると案内しており、具体的な基準は所管の県税事務所への確認を求めています。

つまり、同じ物件数でも都道府県によって判定が変わり得るということです。区分所有マンションを買い増していく段階では、事前に基準を確認しておく価値があります。

控除のしくみ──290万円の事業主控除が効く

課税対象の業種に該当しても、すぐに税額が発生するわけではありません。東京都主税局が示す計算式は次のとおりです。

> (事業所得又は(及び)不動産所得+所得税の事業専従者給与額-個人事業税の事業専従者給与額+青色申告特別控除額-各種控除額)×税率

この「各種控除額」の中心が事業主控除で、年間を通じて事業を行っている場合は一律290万円が差し引かれます。青色申告・白色申告を問わず適用され、申請も不要です。年の途中で開業・廃業した場合は月割となり、東京都の場合は1か月あたり242,000円、12か月で2,900,000円と示されています。

実務的な意味は明快で、事業所得等が年290万円以下であれば個人事業税は発生しません。売上ではなく所得(経費を引いた後の利益)で判定される点も押さえておきたいところです。

青色申告特別控除は個人事業税では使えない

上の計算式で見落としやすいのが「+青色申告特別控除額」という項目です。所得税では最大65万円が控除されますが、個人事業税ではこれを加算して戻す、つまり適用されません。

たとえば所得税の申告所得が280万円でも、65万円の青色申告特別控除を使っている場合、個人事業税の計算上は345万円となり、事業主控除290万円を引いた55万円が課税標準になります。第1種事業なら税額は約2万7,500円です。「所得税の申告書上は290万円以下だから大丈夫」と考えていると、通知書を見て驚くことになります。

事業専従者控除と損失の繰越

家族に事業を手伝ってもらっている場合、青色申告者は適正な給与支払額の全額、白色申告者は配偶者86万円・その他の親族1人につき50万円を上限に控除できます(白色は「その年の所得÷(専従者数+1)」との低いほうという制限もあります)。

赤字が出た年については、青色申告者であれば損失を翌年以降3年間繰り越して事業の所得から控除できます。神奈川県は特定非常災害の場合に5年間となる旨も案内しています。白色申告者は、被災事業用資産の損失に限って3年間の繰越が認められます。

納付時期は8月と11月──申告・届出のタイミングも押さえる

個人事業税は自分で計算して納める税ではなく、確定申告のデータをもとに都道府県が計算し、納税通知書を送ってくる仕組みです。

時期内容
3月15日個人事業税の申告期限(所得税・住民税の申告をしていれば原則不要)
8月第1期分の納付(東京都の納期限は8月31日)
11月第2期分の納付(東京都の納期限は11月30日)

所得税の確定申告書または住民税の申告書を提出していれば、個人事業税の申告は原則不要です。ただし東京都・神奈川県ともに、年の途中で事業を廃止した場合は別途申告が必要としています。また神奈川県は、事業の開始・廃業から1か月以内に「個人事業開業・休業・廃業届出書」を県税事務所へ提出するよう求めています。

納期は原則2回ですが、税額が1万円以下の場合は8月に全額を納付する扱いとしている自治体があります(秋田県、神奈川県で確認、2026年8月2日時点)。第1期の納期限までに一括納付することも可能ですが、一括納付による割引はありません。納期限が土日祝日にあたる場合は翌開庁日にずれます。

資金繰りにどう落とし込むか

8月は住民税の第2期、11月は所得税の予定納税第2期と重なりやすい月です。個人事業税だけを単独で見るのではなく、年間の納税カレンダー全体で資金を確保しておく発想が要ります。フリーランスの税・保険・資金繰りを一枚で捉える考え方は、フリーランスのお金管理:税金・保険・資金繰りの全体像で整理しています。住民税の概算方法とあわせて備えたい場合は、住民税はいくら備える?フリーランスの概算方法も参考になります。

なお、国税庁のタックスアンサーNo.2210は「事業税は全額必要経費になります」と明記しています(令和7年4月1日現在法令等)。所得税や住民税は必要経費になりませんが、個人事業税は翌年の所得税計算で経費に算入できるため、実質的な負担は税率どおりの金額より小さくなります。この点も含めて資金計画を立てると精度が上がります。

まとめ

個人事業税は、法定70業種への該当性という「入口」と、290万円の事業主控除という「金額のハードル」の2段階で課税の有無が決まります。確認すべき順序は次のとおりです。

  • 自分の事業が法定業種に該当するか(迷う場合は都道府県税事務所へ確認)
  • 該当する場合、第1種5%・第2種4%・第3種3〜5%のどこに入るか
  • 青色申告特別控除を戻した後の所得が290万円を超えるか
  • 8月・11月の納期に向けた資金を確保できているか

強気に見れば、税率が3〜5%と限定的で、しかも翌年の必要経費になるため、負担は事前に読み切れる性質の税金です。一方でリスクとして、業種判定が実態ベースであること、不動産貸付業の規模基準が都道府県で異なり得ること、青色申告特別控除が使えず想定より課税標準が膨らみやすいことが挙げられます。判断条件としては、所得が290万円前後に近づいた時点、あるいは業務内容や事業規模が変わった時点で、所管の都道府県税事務所に確認を取るのが実務的です。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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