配当控除を使うか判断するための確認項目
- 結論:配当控除は「総合課税を選べること」と「課税所得が高くなりすぎないこと」の両方を満たす人向けの制度で、誰にでも有利とは限らない。
- 理由:配当控除は総合課税を選択した国内株の配当所得にしか使えず、控除率も課税総所得金額1,000万円を境に下がる。所得税率が高い人ほど申告分離課税や申告不要制度の方が有利になりやすい。
- 確認点:配当の発生元が国内法人かどうか、確定申告での課税方式(総合課税・申告分離課税・申告不要)をどう選ぶか、自分の課税所得が所得税の速算表でどの区分に入るかを順に確認する。
国内株の配当を受け取ると、証券会社の特定口座では源泉徴収だけで完結させる「申告不要」を選ぶこともできますが、確定申告で「総合課税」を選ぶと配当控除という税額控除を使える場合があります。ただし配当控除は誰にとっても得になるわけではなく、対象条件と自分の所得税率の両方を確認しないと判断できません。本記事では国税庁の公表資料をもとに、配当控除を使うかどうかを判断するための確認項目を整理します。
配当控除とは何か
配当控除は、国内法人からの剰余金の配当などについて、確定申告で総合課税の適用を受けた場合に一定の税額控除を受けられる制度です(国税庁 No.1250、令和7年4月1日現在法令等)。法人税と所得税の二重課税を調整する趣旨の制度で、対象となるのは国内法人からの配当所得に限られます。
控除率は課税総所得金額等の水準によって段階的に変わります。
| 課税総所得金額等 | 剰余金の配当等 | 証券投資信託の収益分配金 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下の部分 | 10% | 5%(一定の外貨建等資産の割合により異なる) |
| 1,000万円を超える部分 | 5% | 2.5%前後(内容により変動) |
この表からもわかる通り、課税所得が1,000万円を超えると控除率が半分程度に下がるため、高所得者ほど配当控除の恩恵は小さくなります。
配当控除を使うための条件
配当控除を使うには、次の条件を満たす必要があります。
- 配当の支払元が国内法人であること(外国法人からの配当は対象外)
- 確定申告で総合課税を選択していること(申告分離課税や申告不要制度を選んだ配当は対象外)
- NISA口座(非課税口座)で受け取った配当は、そもそも課税されていないため配当控除の対象にならない
米国株など外国株式の配当については、配当控除の対象外であり、二重課税の調整は別の制度である外国税額控除で行います。二重課税の仕組みが気になる場合は、外国税額控除で米国株配当の二重課税を調整する流れも参考にしてください。
なお、上場株式等の配当所得は、確定申告をする際に「総合課税」「申告分離課税」のいずれかを選べます(申告そのものをしない「申告不要制度」を選ぶことも可能です)。配当控除が使えるのは、このうち総合課税を選んだ場合に限られる点が最初の分岐点になります。
所得税率と照らし合わせて有利不利を確認する
配当控除を使うかどうかの実質的な判断は、自分の課税所得に対する所得税率と、控除後の実質税負担を比べることで行います。所得税の税率は、次の速算表の通り7段階の累進税率です(国税庁 No.2260、令和7年4月1日現在法令等)。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円未満 | 5% | 0円 |
| 195万円以上330万円未満 | 10% | 97,500円 |
| 330万円以上695万円未満 | 20% | 427,500円 |
| 695万円以上900万円未満 | 23% | 636,000円 |
| 900万円以上1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円以上4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
配当所得を総合課税で申告すると、配当所得も含めた課税所得全体にこの累進税率が適用されたうえで、配当控除(剰余金配当なら課税所得1,000万円以下の部分で10%)が差し引かれます。一方、申告不要制度や申告分離課税を選んだ場合の税率は、所得税・住民税を合わせて約20.315%で一定です。
大まかな目安として、次のような傾向があります(実際の有利不利は住民税の課税方式選択や他の所得控除の状況によっても変わるため、最終的には税理士や国税庁の計算ツールで確認してください)。
- 課税所得が695万円未満(所得税率20%以下)の人は、配当控除により所得税分の実質負担が申告分離課税より軽くなりやすい
- 課税所得が900万円以上(所得税率33%以上)になると、配当控除を差し引いても申告分離課税の約20.315%を上回りやすく、総合課税が不利になりやすい
- 695万円〜900万円のあたりは所得税率と配当控除率の兼ね合いで有利不利が逆転しやすく、個別に計算が必要
配当控除を使うかどうかのチェックリスト
以下の項目を順番に確認すると、配当控除を使うべきかどうかの判断がしやすくなります。
- 配当の支払元は国内法人か(外国株式配当は対象外)
- NISA口座ではなく課税口座で受け取った配当か
- 確定申告で総合課税を選ぶ予定か(申告不要のままなら配当控除は関係ない)
- 配当所得を合算した後の課税所得が、所得税の速算表でどの区分に入るか
- 課税所得が695万円未満なら総合課税、900万円以上なら申告分離課税を軸に検討しているか
- 住民税の課税方式(申告不要か申告するか)も所得税と合わせて確認したか
- 扶養控除や配偶者控除などの他の控除に、配当所得を合算することで影響が出ないか確認したか
最後の項目は見落とされがちですが、総合課税を選ぶと配当所得が「合計所得金額」に加算されるため、扶養控除や配偶者控除、国民健康保険料の算定などに波及する可能性があります。配当控除で所得税が下がっても、他の控除が使えなくなって総合的には不利になるケースもあるため、単純な税率比較だけで判断しないことが重要です。
株式投資を始めたばかりで配当の受け取り方自体を整理したい場合は、高配当株投資の始め方:利回りだけで選ばない基本手順もあわせて確認してください。
まとめ
配当控除は、国内法人からの配当を総合課税で申告した場合に使える税額控除で、課税所得1,000万円以下の部分では剰余金配当に対して10%の控除率が適用されます。ただし対象は国内株の配当に限られ、外国株式配当やNISA口座の配当は対象外です。判断の軸になるのは自分の所得税率で、課税所得が695万円未満なら総合課税が有利になりやすく、900万円以上なら申告分離課税の方が有利になりやすい傾向があります。加えて、総合課税を選ぶと配当所得が合計所得金額に算入されるため、扶養控除や社会保険料への影響も確認したうえで、どの課税方式を選ぶか総合的に判断してください。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- No.1250 配当所得があるとき(配当控除)|国税庁(令和7年4月1日現在法令等)
- No.2260 所得税の税率|国税庁(令和7年4月1日現在法令等)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。