フリーランスの手取り早見表:年収300万〜1,500万円を同じ前提で並べる
- 結論:同じ前提で並べると、手取り率は売上300万円で約59%、1,500万円で約52%です。売上が増えるほど、手取りとして残る割合は少しずつ下がります。
- 理由:所得税は所得が増えるほど税率が上がります(累進課税)。さらに令和8年分の基礎控除は、合計所得489万円超と655万円超で段階的に減ります。
- 確認点:経費率・青色申告の控除額・住んでいる自治体の国保料率・年齢(40歳以上は介護分が加わる)の4つで結果が大きく変わります。自分の数字で計算し直してください。
「売上が○○万円なら、手取りはいくらか」を知りたくて早見表を探しても、サイトごとに経費率や控除の前提が違い、数字を比べられないことがよくあります。本記事では前提条件をすべて揃えて、売上300万〜1,500万円の手取りを1つの表にまとめました。
売上・所得・手取りの言葉の違いがあいまいな方は、先にフリーランスの売上・手取り・所得の違いを読むと表が読みやすくなります。
早見表の前提条件(2026年9月30日時点の制度で試算)
| 項目 | 前提 |
|---|---|
| 売上 | 消費税抜きの金額(消費税の納税は考慮しない) |
| 経費率 | 売上の25% |
| 申告方法 | 青色申告で特別控除65万円(e-Taxで申告する前提) |
| 家族構成 | 単身・扶養なし、40歳未満(国保の介護分なし) |
| 国民年金 | 月17,920円×12か月=215,040円(令和8年度) |
| 国民健康保険 | 世田谷区などの特別区で共通の令和8年度料率(医療分7.51%+支援金分2.80%+子ども・子育て支援分0.27%、均等割の合計67,073円) |
| 所得税 | 令和8年分の基礎控除(合計所得489万円以下は104万円、489万円超655万円以下は67万円、655万円超は62万円)、復興特別所得税2.1% |
| 住民税 | 所得割10%、基礎控除43万円、均等割4,000円+森林環境税1,000円、調整控除2,500円 |
国保と住民税は、本来は前年の所得をもとに計算されます。本表は「同じ年の所得に令和8年度の料率を当てはめた概算」です。個人事業税、iDeCo、小規模企業共済は含めていません。
売上300万〜1,500万円の手取り早見表
(単位:万円。国民年金21.5万円はすべての行で共通のため列を省略。端数処理の都合で合計が0.1万円ずれる行があります)
| 売上 | 経費 | 事業所得 | 国保 | 所得税 | 住民税 | 手取り | 手取り率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 300 | 75 | 160 | 19.1 | 0.8 | 7.9 | 175.7 | 58.6% |
| 400 | 100 | 235 | 27.0 | 4.2 | 14.6 | 232.7 | 58.2% |
| 500 | 125 | 310 | 35.0 | 7.6 | 21.3 | 289.6 | 57.9% |
| 600 | 150 | 385 | 42.9 | 12.2 | 28.0 | 345.4 | 57.6% |
| 800 | 200 | 535 | 58.8 | 35.5 | 41.4 | 442.8 | 55.3% |
| 1,000 | 250 | 685 | 74.6 | 63.9 | 54.8 | 535.1 | 53.5% |
| 1,200 | 300 | 835 | 90.5 | 91.3 | 68.2 | 628.5 | 52.4% |
| 1,500 | 375 | 1,060 | 95.9 | 141.8 | 90.2 | 775.5 | 51.7% |
表の「手取り」は、売上から経費・税金・社会保険料を引いた後に残るお金です。青色申告特別控除の65万円は、実際にお金が出ていく費用ではないため、手取りの計算では差し引いていません。売上600万円の内訳をもっと詳しく知りたい方は売上600万円のフリーランスの手取り:税金・保険料の内訳と試算手順をご覧ください。経費の見積もり方が違うため、金額は本表と少し異なります。
表から読み取れる3つのポイント
1. 売上600万円までは手取り率がほぼ横ばい
合計所得が489万円以下の間は、令和8年分の基礎控除が104万円と大きく、所得税は5〜10%の税率帯にとどまります。そのため売上300万〜600万円では、手取り率は58%前後でほぼ変わりません。この価格帯では、税金よりも国保と国民年金の負担のほうが目立ちます。
2. 基礎控除が減る段階が2か所ある
- 合計所得が489万円を超える(本表の前提では売上約739万円)と、基礎控除は104万円から67万円に下がります
- 合計所得が655万円を超える(売上約960万円)と、さらに62万円に下がります
この段階を超えると、所得税の負担が一段増えます。売上800万円の行で手取り率が55%台に下がるのはこのためです。なお、令和8・9年分の上乗せ(特例加算)は期間限定です。令和10年分以後は仕組みが変わる予定なので、翌年以降も同じ数字になるとは限りません。
3. 国保には上限があるが、所得税は増え続ける
特別区の令和8年度の国保料には上限(賦課限度額)があります。医療分は67万円、支援金分は26万円、子ども・子育て支援分は3万円です。本表の前提では売上約1,250万円で医療分が上限に達します。そのため売上1,500万円でも国保は95.9万円で頭打ちになります。一方、所得税は課税所得900万円超で税率33%の帯に入るため、売上が増えるにつれて税金の比重が大きくなっていきます。
自分の条件で計算し直す手順
表の数字をそのまま使うのではなく、以下の順番で自分の数字に入れ替えてください。計算式を1本ずつ確認したい方はフリーランスの手取りを概算する計算手順も参考になります。
ステップ1:事業所得を出す
事業所得 = 売上 − 経費 − 青色申告特別控除
65万円の控除を受けるには、複式簿記で記帳し、貸借対照表などを添付したうえで、e-Taxで申告する(または電子帳簿保存を行う)必要があります。条件を満たさない場合は55万円または10万円になり、白色申告なら控除はありません。
ステップ2:国保料を自治体の料率で計算する
国保料 = 均等割 +(事業所得 − 43万円)× 所得割率
この計算方法を「旧ただし書き方式」といいます。料率は市区町村ごとに異なり、特別区の中でも中野区と江戸川区は料率が違います。40〜64歳の方は介護分(特別区は所得割2.43%+均等割17,800円、目黒区は所得割2.35%)が加わります。
ステップ3:所得税を出す
課税所得 = 事業所得 − 社会保険料(国保+国民年金)− 基礎控除 − その他の所得控除
課税所得を1,000円未満切り捨てにし、国税庁の速算表(例:330万〜694.9万円は税率20%・控除額427,500円)で税額を出します。その税額に1.021を掛けると、復興特別所得税を含めた金額になります。配偶者や扶養家族がいる方は、ここで配偶者控除・扶養控除を差し引きます。
ステップ4:住民税を出す
住民税 =(事業所得 − 社会保険料 − 43万円 − その他の控除)× 10% − 調整控除 + 均等割
住民税の基礎控除は43万円で、所得税の基礎控除とは金額が違います。ここを取り違えないよう注意してください。
表とずれやすいケース
- 開業1年目:国保と住民税は前年の所得で決まります。そのため1年目は負担が小さく、2年目にまとめて重くなることがあります
- 消費税の課税事業者:インボイス登録をしている場合などは、売上とは別に消費税の納付が発生します
- 個人事業税:業種によっては課税されますが、本表には含めていません
- 経費率が大きく違う:経費率を25%から10%に下げると、同じ売上でも事業所得が増えます。その結果、税金と保険料も増えます
まとめ
経費率25%、青色申告65万円、単身・40歳未満、特別区の令和8年度料率という同じ前提で並べると、手取り率は売上300万円で約59%、600万円で約58%、1,000万円で約54%、1,500万円で約52%でした。表の数字はあくまで比較のための目安です。実際の手取りは、経費率・申告方法・自治体・年齢・家族構成で変わります。手順どおりに自分の数字へ置き換えて、納税資金を取り分ける目安にしてください。制度の数値は2026年9月30日時点で確認したものです。基礎控除の特例加算は令和8・9年分に限られるので、毎年の確定申告前に最新の情報を確認してください。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁 タックスアンサーNo.2260 所得税の税率(令和8年4月1日現在法令等、2026年9月30日確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.1199 基礎控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年9月30日確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2072 青色申告特別控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年9月30日確認)
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱(基礎控除の見直し、2026年9月30日確認)
- 日本年金機構 国民年金保険料(令和8年度月額17,920円、2026年9月30日確認)
- 東京都保健医療局 令和8年度 特別区国民健康保険料一覧表(令和8年4月1日現在)
- 東京都主税局 個人住民税(税率・基礎控除・調整控除・均等割、2026年9月30日確認)
- 世田谷区 住民税のあらまし(均等割・森林環境税、2024年8月1日更新)