フリーランスが使える所得控除の一覧:申告で漏れやすい控除と必要書類
- 結論:所得控除は16種類あります。フリーランスは年末調整がないため、自分で申告しなければ1円も差し引かれません。
- 理由:社会保険料、小規模企業共済、iDeCo、生命保険料などは「払っているのに申告書に書いていない」という漏れが起きやすい控除です。
- 確認点:控除証明書、受領証、医療費の明細書をそろえ、e-Taxで添付を省略した書類も法定申告期限から5年間は保存しておきます。
会社員は年末調整で一部の控除が自動的に反映されます。一方、フリーランス(個人事業主)はすべての所得控除を自分で確定申告書に書く必要があります。この記事では、国税庁タックスアンサーの内容(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月5日確認)をもとに、所得控除の全体像、漏れやすい控除、控除ごとの必要書類を整理します。
所得控除が税額にどう効くかは、累進課税の仕組みを知ると分かりやすくなります。基本はフリーランスの所得税を累進課税から理解するで解説しています。
所得控除は16種類:まず全体像を押さえる
国税庁タックスアンサーNo.1100によると、所得税の所得控除は次の16種類です(令和8年4月1日現在法令等)。
| 区分 | 控除の名称 |
|---|---|
| 支払ったお金に応じた控除 | 社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、医療費控除 |
| 損失に応じた控除 | 雑損控除 |
| 本人の事情による控除 | 障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、基礎控除 |
| 家族の事情による控除 | 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、特定親族特別控除(令和7年分以降) |
よく誤解されますが、青色申告特別控除は所得控除ではありません。これは事業所得を計算する段階で差し引くもので、上の16種類とは別枠です。青色申告特別控除を使っていても、所得控除はそれとは別に申告します。
基礎控除は令和7年分・令和8年分で金額が変わる
すべての人が対象になる基礎控除は、税制改正で金額が変わりました。国税庁タックスアンサーNo.1199の金額は次のとおりです(令和8年4月1日現在法令等)。
| 合計所得金額 | 令和7年分 | 令和8年分 |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 | 104万円 |
| 132万円超336万円以下 | 62万円 | 62万円 |
| 336万円超489万円以下 | 68万円 | 68万円 |
| 489万円超655万円以下 | 63万円 | 67万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 |
| 2,350万円超2,500万円以下 | 48万〜16万円(段階的に減少) | 48万〜16万円(段階的に減少) |
| 2,500万円超 | 0円 | 0円 |
令和8年分の規定は令和8年12月1日施行とされています。2027年2〜3月に行う令和8年分の申告では、申告ソフトや国税庁の作成コーナーが新しい金額に対応しているかを確認してください。基礎控除は所得によって金額が変わるので、「一律〇万円」と思い込まないことが大切です。
フリーランスが申告で漏らしやすい控除
社会保険料控除:家族分も払えば対象
国民健康保険、国民年金、介護保険などの保険料は、その年に実際に支払った金額の全額が控除されます。国税庁タックスアンサーNo.1130によると、生計を一にする配偶者やその他の親族が負担すべき保険料を本人が払った場合も、本人の控除にできます。
漏れやすいのは次のようなケースです。
- 学生の子や配偶者の国民年金保険料を本人の口座から払っている
- 前年の未納分や前納分をまとめて払った(判断基準は「支払った年」)
- 年の途中で会社を辞め、退職後に払った国民健康保険料を計上していない
小規模企業共済等掛金控除:iDeCoもここに入る
国税庁タックスアンサーNo.1135によると、次の3つが対象で、支払った掛金の全額が控除されます(令和8年4月1日現在法令等)。
- 中小企業基盤整備機構の小規模企業共済の掛金(旧第二種共済は除く)
- 確定拠出年金の企業型・個人型(iDeCo)の掛金
- 地方公共団体の心身障害者扶養共済制度の掛金
全額が控除される一方、資金を長く引き出せないという制約があります。節税額と資金拘束のバランスは小規模企業共済の節税効果と資金拘束を確認するで比較しています。
生命保険料控除・地震保険料控除:上限額に注意
生命保険料控除は、一般・介護医療・個人年金の3区分の合計で最高12万円です。新契約(平成24年1月1日以後)の場合、各区分の年間支払保険料が8万円を超えると、その区分の控除額は4万円になります(国税庁タックスアンサーNo.1140)。令和8年分は、23歳未満の扶養親族がいれば一般の新生命保険料控除の上限が6万円に引き上げられる特例があります。
地震保険料控除は、地震保険料が年5万円以下なら全額、5万円を超えれば一律5万円です。一定の旧長期損害保険料と合わせても、上限は5万円です(国税庁タックスアンサーNo.1145)。
医療費控除:明細書の添付が必要
医療費控除は、「支払った医療費 − 保険金などで補てんされる金額 − 10万円(総所得金額等が200万円未満なら総所得金額等の5%)」で計算し、最高200万円です(国税庁タックスアンサーNo.1120)。売上が少ない年や経費が多かった年は、5%基準のほうが有利になる場合があります。セルフメディケーション税制とはどちらか一方しか選べないので、医療費控除とセルフメディケーション税制の使い分けで損益分岐点を確認してください。
寄附金控除:ふるさと納税も申告書に書く
寄附金控除は、「特定寄附金の合計額」と「総所得金額等の40%」のうち低いほうから2,000円を引いた額です(国税庁タックスアンサーNo.1150)。ふるさと納税も特定寄附金に含まれます。そのため、確定申告をするフリーランスは、寄附分を申告書に書き忘れないよう注意が必要です。
家族の控除:事業専従者は対象外
配偶者控除(納税者の合計所得金額が900万円以下なら38万円)と扶養控除(一般の扶養親族は38万円)には、青色事業専従者として給与を受けた人や白色事業専従者は対象外という要件があります(国税庁タックスアンサーNo.1191・No.1180)。家族に専従者給与を払っている場合、配偶者控除や扶養控除との二重適用はできません。
配偶者・扶養親族の合計所得金額の要件は、令和7年分が58万円以下、令和8年分が62万円以下と案内されています。ひとり親控除は35万円で、本人の合計所得金額が500万円以下であることなどが要件です(国税庁タックスアンサーNo.1171)。
控除ごとの必要書類一覧
| 控除 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 社会保険料控除 | 国民年金保険料の控除証明書(令和8年分以後は一定の明細書で代替可と案内) |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 掛金の証明書、または二次元バーコード付きの電磁的記録印刷書面 |
| 生命保険料控除・地震保険料控除 | 保険会社の控除証明書、または電磁的記録印刷書面 |
| 寄附金控除 | 寄附先の受領証(ふるさと納税は特定事業者の「寄附金控除に関する証明書」も可) |
| 医療費控除 | 医療費控除の明細書(医療費通知を添付すれば記載を簡略化できる)。領収書は申告期限等から5年間保存 |
| 障害者控除など | 状況に応じて障害者手帳などで確認 |
国民健康保険料は年末調整で集計されないため、市区町村からの納付額のお知らせや通帳の記録で、1年分の支払額を自分で集計しておくと安心です。
e-Taxで申告する場合、生命保険料・地震保険料・社会保険料・寄附金の証明書や医療費通知などは、記載内容を入力すれば添付を省略できます。ただし国税庁のe-Tax案内によると、原則として法定申告期限から5年間は、税務署から提示や提出を求められることがあります。求めに応じなければ、添付がなかったものとして扱われます。省略した書類も捨てずに保存しておきましょう。
まとめ
- 所得控除は16種類あり、フリーランスはすべて自分で申告する必要があります。青色申告特別控除は所得控除とは別枠です。
- 基礎控除は令和7年分・令和8年分で金額が変わり、所得によって控除額が違います(令和8年4月1日現在法令等)。
- 家族分の社会保険料、iDeCo・小規模企業共済、ふるさと納税、医療費は特に漏れやすい控除です。
- 控除証明書や受領証は1月〜2月に届くものが多いので、届いたらまとめて保管し、e-Taxで添付を省略した場合も5年間は保存します。
税制は毎年のように改正されます。申告の前には、その年分の国税庁「確定申告の手引き」やタックスアンサーで最新の要件を確認し、判断が難しい場合は税理士や税務署に相談してください。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1100 所得控除のあらまし(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1199 基礎控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1130 社会保険料控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1135 小規模企業共済等掛金控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1140 生命保険料控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1145 地震保険料控除(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)(2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1191 配偶者控除(2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除(2026年10月5日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1171 ひとり親控除(2026年10月5日確認)
- 国税庁 確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)(2026年10月5日確認)
- e-Tax 第三者作成書類の添付省略の制度について(2026年10月5日確認)