フリーランスの減価償却:パソコンや機材の処理
- 結論:取得価額10万円以上の仕事道具は原則減価償却。ただし青色申告なら30万円未満は「少額減価償却資産の特例」で購入年に全額経費にできる。
- 理由:国税庁の資料で、10万円未満・20万円未満・30万円未満と金額帯ごとに処理が明確に区分されているため。
- 確認点:少額特例の期限と金額基準は令和8年度税制改正で見直しが進行中。申告前に最新の国税庁情報を必ず確認する。
フリーランスが20万円のパソコンや30万円のカメラを買ったとき、「全額をその年の経費にしていいのか」は毎年の確定申告で迷いやすいポイントです。答えは購入金額と申告の種類(青色か白色か)で変わります。本記事では、国税庁の一次資料(令和7年4月1日現在法令等)に基づき、減価償却の基本と金額帯ごとの処理、そして青色申告者が使える少額減価償却資産の特例を整理します。
減価償却の基本:高額な道具は分割して経費にする
国税庁タックスアンサーNo.2100(令和7年4月1日現在法令等)によると、減価償却とは「事業に使う資産の取得金額を、使用可能期間の全体に分割して必要経費にしていく手続き」です。パソコンや撮影機材のように時間の経過で価値が減る資産は減価償却資産と呼ばれ、購入した年に全額を経費にするのではなく、法定の耐用年数にわたって少しずつ経費化します。
償却方法には定額法と定率法があり(平成19年4月1日以後取得分)、個人事業主は原則として毎年同額を償却する定額法を使います。定率法を使いたい場合は税務署への届出が必要です。
パソコンの耐用年数は4年:主な機材の年数一覧
耐用年数は資産の種類ごとに法令で決まっています。国税庁の確定申告書等作成コーナー「耐用年数(器具・備品)」(2026年8月11日閲覧)によると、フリーランスが使う主な機材は次のとおりです。
| 資産 | 耐用年数 |
|---|---|
| パソコン(サーバー用を除く) | 4年 |
| サーバー用のパソコン | 5年 |
| カメラ | 5年 |
| 複写機(コピー機) | 5年 |
| 事務机・椅子(金属製) | 15年 |
| 事務机・椅子(その他) | 8年 |
たとえば仕事用のノートパソコンなら4年、ミラーレスカメラなら5年で償却するのが基本です。中古で購入した場合は、法定耐用年数ではなく残りの使用可能期間を見積もった年数で償却できる扱いもあります。
金額で変わる4つの処理パターン
減価償却で最も重要なのが取得価額による区分です。国税庁No.2100では次のように整理されています(令和7年4月1日現在法令等)。
| 取得価額 | 処理 | 対象者 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額をその年の必要経費(消耗品費など) | 全員 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年間で3分の1ずつ経費化を選択可 | 全員 |
| 30万円未満 | 少額減価償却資産の特例で全額をその年の経費(年合計300万円まで) | 青色申告者 |
| 30万円以上 | 耐用年数に応じた通常の減価償却 | 全員 |
ポイントは3つあります。
- 10万円未満は減価償却の対象外。迷わず全額をその年の経費にできます。
- 10万円以上20万円未満の一括償却は白色申告でも使え、耐用年数に関係なく3年で均等償却できます。
- 青色申告者は30万円未満まで即時償却の選択肢が加わり、有利な幅が大きく広がります。
なお、取得価額は税込経理なら税込金額、税抜経理なら税抜金額で判定します。
少額減価償却資産の特例:要件と最新の改正動向
青色申告のフリーランスにとって実務上いちばん使うのが少額減価償却資産の特例です。国税庁No.2100およびNo.5408(いずれも令和7年4月1日現在法令等)によると、要件は次のとおりです。
- 青色申告をしていること
- 取得価額30万円未満の減価償却資産であること(中古やソフトウェアも対象)
- 平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得して事業に使い始めたこと
- その年の特例適用額の合計が300万円に達するまでが限度
- 青色申告決算書の減価償却費の計算欄に、特例を適用した旨(措法28の2)を記載すること
注意したいのが適用期限です。上記の国税庁ページ(令和7年4月1日現在法令等)では取得期限が令和8年3月31日と記載されていますが、財務省「令和8年度税制改正の大綱」では、この特例について対象資産の取得価額を40万円未満(現行30万円未満)に引き上げたうえで適用期限を3年延長し、所得税(個人事業主)についても同様とする方針が明記されています。令和8年4月以降に購入した機材へどう適用されるかは、申告時点の国税庁の最新資料で必ず確認してください。
また、この特例で即時償却した資産も、市区町村の固定資産税(償却資産)の申告対象になる場合がある点は見落としがちな確認点です。
具体例:24万円のパソコンをどう処理するか
青色申告のフリーランスが24万円のパソコン(耐用年数4年)を買った場合、選択肢は2つあります。
- 通常の定額法:24万円 ÷ 4年 = 年6万円ずつ経費化。年の途中で使い始めた場合は月割りになり、7月開業なら初年度は3万円です。
- 少額特例:購入した年に24万円全額を経費化。
どちらが有利かは、その年の利益次第です。利益が大きい年は特例で即時償却すれば課税所得を圧縮できます。逆に、所得が少ない年や赤字の年にあえて通常償却を選び、経費を翌年以降に残すという判断もあり得ます。特例は「使えるなら必ず使うべき」ものではなく、数年単位の所得の見通しで選ぶのが実務的です。
なお、プライベートと兼用するパソコンは購入額のうち事業使用分だけが経費の対象です。按分の考え方は家事按分の考え方:自宅家賃・通信費・光熱費で詳しく解説しています。また、即時償却しても出ていく現金は同じなので、高額機材の購入は資金繰りとセットで考える必要があります。全体像はフリーランスのお金管理:税金・保険・資金繰りの全体像を参照してください。
まとめ
フリーランスの減価償却は、10万円未満なら全額経費、10万円以上20万円未満なら3年の一括償却、青色申告なら30万円未満まで少額特例で即時償却、というように金額帯で処理が決まります。パソコンの耐用年数は4年(サーバー用を除く)で、通常償却と特例のどちらが有利かはその年の利益で変わります。少額特例は令和8年度税制改正で金額基準の引き上げ(40万円未満)と期限延長の方針が示されているため、申告前に国税庁の最新資料で適用条件を確認してください。本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁 タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」(令和7年4月1日現在法令等、2026年8月11日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサーNo.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(令和7年4月1日現在法令等、2026年8月11日閲覧)
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「耐用年数(器具・備品)その1」(2026年8月11日閲覧)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(国税)(2026年8月11日閲覧)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。