赤字の繰越は申告書第四表で行う:純損失の記入手順と翌年以降の使い方
- 結論:事業の赤字を繰り越すときは、赤字の年に第一表・第二表と一緒に「第四表(損失申告用)」の(一)と(二)を提出します。
- 理由:繰越控除を受けるには、赤字の年の申告書を出し、その後も毎年続けて確定申告することが条件です(令和7年分手引き、令和7年11月1日現在法令等)。
- 確認点:翌年以降は第四表(二)の「4 繰越損失を差し引く計算」に、前年までに引ききれなかった損失を書き写して使います。黒字の年でも第四表の提出が必要です。
事業が赤字になった年も、確定申告を出す意味はあります。赤字を翌年以降の所得から差し引くには、国税庁が「確定損失申告」と呼ぶ手続きが必要で、そのときに使う様式が申告書第四表(損失申告用)です。
この記事では、国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き(損失申告用)」(令和7年11月1日現在の法令等に基づく)の記載例に沿って、個人事業主が第四表を書く順番と、翌年以降に繰越損失を使うときの書き方を説明します。制度全体の考え方は純損失の繰越控除:赤字の年の確定申告にまとめています。
第四表が必要になる人と繰り越せる損失の範囲
手引きによると、各種所得の損益通算をしても引ききれない「純損失の金額」が残った場合などは、一定の条件のもとで翌年以後3年間にわたって繰り越せます。条件は、損失が出た年分の確定申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出することです。
繰り越せる範囲は、青色申告か白色申告かで大きく変わります。
| 区分 | 繰り越せる損失(令和7年分手引きより) |
|---|---|
| 青色申告者 | 純損失の全額(居住用財産の通算後譲渡損失は別枠の扱い)。ただし前年に繰り戻して還付を受けた分は除く |
| 白色申告者 | 変動所得の損失、被災事業用資産の損失、雑損失に限る |
一般的な事業の赤字を白色申告で繰り越すことはできません。これから赤字が見込まれる場合は、青色申告と白色申告の違い:控除と記帳負担を比較もあわせて確認しておくと、判断しやすくなります。
国税庁タックスアンサーNo.2070(令和8年4月1日現在法令等)では、前年も青色申告をしている場合は、繰り越す代わりに前年分の所得に繰り戻して所得税の還付を受ける「繰戻還付」も選べるとされています。どちらが有利かは、前年と今後の所得の見込みによって変わります。
提出する書類と作成の順番
手引きの「作成手順」では、次の順に進めます。
- 第一表・第二表:収入金額等・所得金額等、所得の内訳、事業専従者などを記入する
- 第四表(一)(二):「1 損失額又は所得金額」から「7 翌年以後に繰り越される先物取引に係る損失の金額」までを記入する
- 第一表・第二表:社会保険料控除などの所得控除を記入する
- 第一表:所得から差し引かれる金額と税金の計算を記入する
- 第一表・第二表:残りの税金の計算、住民税・事業税に関する事項などを記入する
提出時の注意点は次のとおりです。
- 第四表(一)と(二)は、第一表・第二表と必ず一緒に提出する
- 第四表を出す人は、第三表(分離課税用)の提出は不要
- 事業所得がある人は、青色申告決算書または収支内訳書も添付する
必要書類は確定申告前にそろえる書類チェックリストで事前に確認しておくと、書き漏れを防げます。
赤字の年の書き方:第四表(一)から(二)の「3」まで
ここでは、青色申告の個人事業主で、令和7年分の事業所得が△200万円、ほかに所得がない例を使って流れを確認します(数値は説明用の仮定です)。
1 損失額又は所得金額(67欄〜)
「A 経常所得」の67欄には、第一表「所得金額等」の①〜⑥と⑩の合計額を書き写します。この例では「△2,000,000」です。赤字は金額の頭に「△」を付けて書きます。譲渡・一時・山林・退職などの所得がなければ、B〜Fの欄は空欄のままです。
2 損益の通算(Ⓐ通算前〜81欄)
67〜74欄の金額を「Ⓐ通算前」に書き写し、第1次〜第3次通算の順に赤字と黒字を相殺します。事業所得だけの場合は相殺する相手がないため、そのまま右の欄へ書き写し、「損失額又は所得金額の合計額」81欄は「△2,000,000」になります。
3 翌年以後に繰り越す損失額(82欄〜)
81欄が赤字の場合にだけ記入します。青色申告者は「青色申告者の損失の金額」82欄に純損失を書きます。特定損失額にかかる損失がない一般的なケースでは、81欄の赤字をそのまま書き写すので「△2,000,000」です。
白色申告者は82欄ではなく、「変動所得の損失額」84欄や「被災事業用資産の損失額」85〜89欄のうち、当てはまる欄だけを記入します。
4〜7の欄
赤字の年でも、前年までに繰り越した損失があれば「4」に記入します。災害などによる雑損失は「5」の94欄、株式等の譲渡損失は「6」の95欄、先物取引の損失は「7」の96欄に書きます。
翌年以降の使い方:第四表(二)「4 繰越損失を差し引く計算」
繰り越した損失を実際に差し引くのは翌年以降の申告です。手引きの記載例では、「4」の欄はA(3年前)、B(2年前)、C(前年)の3段に分かれ、それぞれ次の3列があります。
| 列 | 書く内容 |
|---|---|
| Ⓐ前年分までに引ききれなかった損失額 | 前年分の第四表(二)などから書き写す |
| Ⓑ本年分で差し引く損失額 | 本年の黒字から差し引く額(Ⓐが上限) |
| Ⓒ翌年分以後に繰り越して差し引かれる損失額 | Ⓐ−Ⓑ(BとCの年分だけに書く) |
先ほどの例で、令和8年分の事業所得が120万円の黒字になったとします。
- C(前年=令和7年)の「__年が青色の場合」「山林以外の所得の損失」の行に、Ⓐ2,000,000円、Ⓑ1,200,000円、Ⓒ800,000円を記入
- 令和9年分では、この80万円がB(2年前)の段のⒶに移る
- 令和10年分でA(3年前)の段に移り、ここで引ききれなかった分は繰り越せなくなる
差し引く順番のルール
- 複数の年分の損失があるときは、最も古い年分から順に差し引く
- 同じ年分の純損失は、総合課税の所得 → 山林所得 → 退職所得の順に差し引く
- 白色申告の年分の損失は「__年が白色の場合」の行(変動所得の損失・被災事業用資産の損失)に書き写す
差し引いた結果は、93欄「雑損控除、医療費控除及び寄附金控除の計算で使用する所得金額の合計額」などを通じて第一表の税額計算に反映します。ポイントは、繰越損失を使う年は黒字でも第四表を提出することです。第一表と第二表だけで申告すると、繰越控除が反映されません。
注意したい点
- 途中で1年でも申告をしないと、繰越の条件である「連続して提出」を満たせなくなる
- 繰越損失で所得がゼロになると、基礎控除などの所得控除が使い切れないことがある。控除を活かせない分まで含めて、繰り戻すか繰り越すかを検討する
- 欄の番号は年分ごとに変わることがある。令和8年分以降は、その年分の手引きと様式で番号を確認する
まとめ
- 事業の赤字を繰り越すには、赤字の年に第一表・第二表・第四表(一)(二)をそろえて提出し、その後も毎年続けて申告する
- 第四表は「1 損失額又は所得金額」→「2 損益の通算」→「3 翌年以後に繰り越す損失額」の順に記入し、青色申告者の純損失は82欄に書く
- 翌年以降は第四表(二)の「4」で、古い年分の損失から順に差し引く。黒字の年でも第四表の提出は必要
- 白色申告で繰り越せるのは変動所得・被災事業用資産の損失などに限られる。前年も青色申告なら繰戻還付という選択肢もある
様式の欄番号や計算方法は、令和7年分の手引き(令和7年11月1日現在法令等)に基づいています。実際に申告するときは、その年分の手引きと国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内で確認し、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談してください。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き(損失申告用)」(令和7年11月1日現在の法令等、2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「確定申告書第四表(損失申告用)令和7年分」(2026年10月1日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2070「青色申告書を提出した年分の純損失の繰越しと繰戻し」(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月1日閲覧)
- 国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」(2026年10月1日閲覧)