この記事の結論
  • 結論:NTTは2026年3月期第1四半期(4〜6月)が増収増益で、年間配当は16期連続の増配を予定(2026年8月6日公表)しているが、通期の営業利益・純利益予想はQ1の伸び率より慎重な水準にとどまる。
  • 理由:総合ICT事業とグローバル・ソリューション事業がけん引役だが、通期の会社予想は営業利益+0.2%・当期利益△5.5%と保守的で、下期の前提を確認する必要がある。
  • 確認点:政府が発行済株式の35.28%(2025年3月31日時点)を保有するNTT法の帰趨、AI・IOWN関連投資の進捗、配当原資となる利益成長の持続性を決算ごとに追う。

NTT株式会社(証券コード9432)は、旧「日本電信電話株式会社」が2025年7月1日付で商号変更した、国内最大級の通信・ICT企業グループです。個人投資家の保有比率が高い高配当株としても知られています。本記事では、決算短信・有価証券報告書・適時開示という一次資料に基づき、事業構造、直近業績、株主還元の3つの視点からNTTを整理します。決算資料の読み方自体を確認したい方は、先に個別企業分析のやり方:決算・財務・事業を読む基本手順をご覧ください。

事業構造:4つの報告セグメントと成長投資の柱

NTTグループは連結決算上、次の4つの報告セグメントに区分されています。

  • 総合ICT事業:コンシューマ通信(携帯・光ブロードバンド)、スマートライフ(金融・コンテンツ)、法人向け通信・ソリューション
  • グローバル・ソリューション事業:コンサルティング、ITソリューション、データセンター、システム開発など海外中心の事業
  • 地域通信事業:NTT東日本・西日本が担う光サービス、法人事業、固定電話
  • その他(不動産、エネルギー等)

2023年5月に発表した中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」のもと、光信号による低遅延・低消費電力の次世代通信基盤IOWNの実用化や、生成AIを軸とした業務変革・新規事業を成長投資の柱に位置づけています。有価証券報告書では、IOWNのロードマップが計画通り進まない場合や、AI関連ビジネスが想定どおり拡大しない場合には収益機会の逸失につながりうるとリスクとして明記されています(2025年6月20日提出の有価証券報告書)。

業績:2026年3月期第1四半期は増収増益、通期予想は慎重

2026年8月6日公表の決算短信によると、2026年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の連結業績は次のとおりです(基準日:2026年6月30日)。

項目2026年3月期Q1前年同期増減率
営業収益3兆6,177億円3兆2,620億円+10.9%
営業利益4,251億円4,052億円+4.9%
当社に帰属する四半期利益2,748億円2,597億円+5.8%
1株当たり四半期利益3.38円3.14円

セグメント別(セグメント間取引含む売上高)では、グローバル・ソリューション事業が前年同期比+15.8%、その他事業が+14.6%と伸び率が高く、稼ぎ頭の総合ICT事業も+8.5%の増収でセグメント利益は246,218百万円(+2.7%)でした。一方、地域通信事業は+0.8%の増収にとどまっています。

注意したいのは、会社が示す2026年3月期通期予想が、営業収益15兆600億円(+4.5%)、営業利益1兆7,100億円(+0.2%)、当社に帰属する当期利益9,800億円(△5.5%)と、Q1の伸び率より明確に慎重な水準にとどまっている点です。この予想は直近から修正されていません(据え置き)。Q1だけを見て強気に傾かず、第2四半期以降の決算で下期の前提が崩れていないかを確認する姿勢が必要です。

財務面では、2026年6月30日時点の総資産は47兆4,597億円、株主資本比率は20.8%(2026年3月末と同水準)です。通信・金融・不動産など資本集約的な事業を複数抱えるため、他業種の目線でこの比率を「低い」と即断せず、有利子負債の水準や格付、IFRS特有ののれん・使用権資産の計上状況とあわせて確認することが妥当です。

株主還元:16期連続増配と自社株買い、株式分割の影響

NTTは「継続的な増配と機動的な自社株買いによる株主還元」を経営上の重要課題の一つと位置づけています(NTT公式サイト、参照日:2026年8月7日)。年間配当金の推移は次のとおりです。

決算年度年間配当(1株)
2022年度4.8円
2023年度5.1円
2024年度5.2円
2025年度5.3円(中間2.65円・期末2.65円)
2026年度(予想)5.4円(中間2.70円・期末2.70円)

2026年度の配当予想が実現すれば16期連続の増配となり、2003年度対比では10倍以上の水準です(NTT公式サイト、参照日:2026年8月7日)。あわせて、2026年3月末時点の自社株買い累計額は約5.9兆円に達しており、2026年5月8日には2027年3月31日までを期限とする2,000億円の追加取得枠を公表しています。1株当たり指標で見る配当額は小さく感じますが、これは2023年7月1日付で実施した1株を25株に分割した結果であり、分割前基準に換算すればより高水準の配当となります(2023年5月12日公表の適時開示)。自社株買いによる期中平均株式数の減少(2026年度Q1は前年同期比約1.6%減)も、1株当たり利益・配当の押し上げ要因になっています。

NTT法という固有リスク:政府保有義務と外資規制

NTTを分析するうえで他の通信会社と一線を画すのが、「日本電信電話株式会社等に関する法律(NTT法)」に基づく規制です。有価証券報告書によれば、政府は2025年3月31日時点でNTTの発行済株式(自己株式除く)の35.28%を保有しており、NTT法第4条は政府に対し発行済株式の3分の1以上の保有を義務付けています。また、外国人等の議決権割合が3分の1以上になることの制限や、外国人取締役が3分の1以上を占めることの禁止といった規定もあります。

2025年5月に公布されたNTT法の改正法では、剰余金処分決議に関する総務大臣認可は廃止された一方、新株発行など特定の財務事項は引き続き認可が必要とされ、附則ではNTT法の改廃を含めた検討を継続する旨が定められています。仮に将来NTT法が廃止され政府の株式保有義務が失効すれば、政府保有株の売却が市場に影響を与える可能性があり、自民党の提言でも「市場への影響を勘案した手法」が求められています。この論点は株式の需給や経営の自由度に長期的な影響を与えうるため、法改正・国会審議の動向を継続的に確認する価値があります。

強気材料とリスクの整理

強気材料

  • グローバル・ソリューション事業を中心にQ1が二桁増収、総合ICT事業も堅調
  • 16期連続増配の実績と、約5.9兆円(2026年3月末時点)の自社株買い余力
  • IOWN・AI分野への継続投資による中長期の差別化戦略

リスク・弱気材料

  • 通期業績予想がQ1の伸び率より保守的(営業利益+0.2%、当期利益△5.5%)で、下期に減速要因が織り込まれている可能性
  • NTT法の改廃をめぐる不確実性と、それに伴う政府保有株売却の可能性
  • サイバー攻撃・大規模ネットワーク障害などのセキュリティインシデントリスク
  • 地震・台風等の自然災害や地政学リスクによる通信インフラへの影響

投資判断前の確認点

  • 四半期ごとの決算短信で、通期予想に対する進捗率とセグメント別の増減益要因を確認する
  • NTT法改正・総務省の審議動向を適時開示・ニュースリリースで追う
  • 配当性向や自社株買いのペースが、利益成長と整合しているかを確認する

なお、株主還元や成長投資の考え方をJTのような他の高配当銘柄と比較したい場合は、JTの事業・財務・株主還元を分析するもあわせてご参照ください。

まとめ

NTTは2026年3月期第1四半期が増収増益となり、16期連続増配・大規模な自社株買いという株主還元の実績を持つ一方、通期の利益予想はQ1の勢いより慎重に据え置かれています。加えて、NTT法に基づく政府の株式保有義務や外資規制という同社固有の制度リスクは、法改正の議論が続く限り消えません。強気材料とリスクの両面を一次資料で継続的に確認しながら判断することが重要です。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

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