りそなホールディングスの配当は継続できるか:リテール特化の銀行は減配に強いか
- 結論:2027年3月期の年間配当予想37円は、業績目標3,300億円に対する配当性向が約25%と低く、還元の約半分を自己株買いが担う構造のため、目先の配当そのものは崩れにくい設計になっている。
- 理由:中期経営計画でDOE(純資産配当率)目標を掲げ「安定的かつ持続的な増配」と「機動的な自己株式取得」を分けて運用しており、業績が振れたときの調整弁が自己株買い側に置かれているため。
- 確認点:利益の増加分が政策金利上昇に強く依存していること、与信費用が通期計画に対してまだ3.3%しか出ていないこと、政策保有株の売却益という一過性要因が利益に乗っていること。
配当の事実確認:2027年3月期は37円予想、ただし「連続増配」ではない
まず一次情報で数字を押さえます。2026年7月31日に開示された「2027年3月期 第1四半期決算短信」によると、2027年3月期の年間配当予想は中間18.50円・期末18.50円の合計37.00円で、直近公表の配当予想からの修正はありません。前期(2026年3月期)実績は29.00円でしたので、1株当たり8円の増配予想ということになります。
同社IRサイトの「株主還元」ページに掲載された1株当たり配当金の推移(2026年8月時点の掲載内容)を並べると、次のようになります。
| 年度 | 1株当たり年間配当金 |
|---|---|
| 2018年3月期 | 20円 |
| 2019年3月期〜2023年3月期 | 各期21円 |
| 2024年3月期 | 22円 |
| 2025年3月期 | 23円 |
| 2026年3月期 | 29円 |
| 2027年3月期(予想) | 37円 |
ここで見落としやすいのが、2019年3月期から2023年3月期までの5期は21円で横ばいだったという点です。つまりりそなは「20年連続増配」型の銘柄ではなく、2024年3月期以降のマイナス金利解除・利上げ局面で増配ピッチが一気に上がった銘柄です。連続増配年数を安心材料にしたい人にとっては、実績年数が短いことは事実として認識しておく必要があります。
配当の原資:配当性向は約25%、還元の半分は自己株買い
第1四半期決算短信によれば、2027年3月期の連結業績目標は親会社株主に帰属する当期純利益3,300億円(前期比+27.6%)、1株当たり当期純利益146.97円です。これは期初目標3,100億円から200億円の上方修正で、2026年6月の日銀政策金利引き上げによる資金利益の上振れ等を反映したものと説明されています。
年間配当37円をEPS146.97円で割ると、配当性向は約25%にとどまります。発行済株式数2,307,136,666株から自己株式63,363,220株を差し引いた株数(いずれも2026年6月末)でざっくり計算すると、配当総額は約830億円です。
一方、自己株式取得は2026年5月公表の上限350億円(2026年8月7日までに取得)に加え、7月31日に上限500億円(2027年1月31日までに取得)の枠を新規設定しています。配当と合わせた総還元額は約1,680億円、修正後業績目標3,300億円ベースでの総還元性向は50.9%(見込)と開示されています。
つまり、還元のおよそ半分が自己株買いです。これは配当の持続性を考えるうえで重要な構造で、業績が計画を下回った場合にまず削られるのは機動的な自己株買いの枠であり、配当はその外側に置かれています。
リテール特化モデルは減配に強いか:強みの中身
2027年3月期第1四半期決算ハイライト(2026年8月7日)を見ると、同社のビジネスモデルの特徴が数字で確認できます。
- 2026年6月末の総資産77.0兆円に対し、預金は63.1兆円。うち個人預金が62.8%を占め、預貸率76%・預証率18%と、地銀上位行平均(2026年3月末で預貸率83%・預証率21%)より低い水準
- 第1四半期のコア業務純益(除く投資信託解約損益)は1,074億円で前年同期比+35.4%、国内預貸金利益は1,143億円で同+209億円
- 政策金利が0.25%上昇するごとに業務粗利益が+600億円程度増える試算。政策金利1.5%の影響が完全に浸透した局面ではROE14%を展望
- 与信費用は第1四半期でわずか13億円(費用)。通期計画395億円に対する進捗率3.3%。不良債権比率は1.02%(2026年6月末、銀行合算・金融再生法基準)
粘着性の高い個人預金を低コストで大量に抱え、余資を日銀預け金(12.2兆円)で運用している構造は、利上げ局面では素直に収益が伸びます。海外与信やトレーディングへの依存が小さいぶん、海外景気や市場変動に利益が直撃されにくいのも事実です。
資本面では、CET1比率(国際統一基準・完全実施・その他有価証券評価差額金除き)が2026年6月末で10.14%、2026年3月末比+0.06ポイント。中期経営計画では「10%台での運営」を明示しています。銀行の配当余力を見るときにどの自己資本指標をどう読むかは、銀行株の配当を見るときの自己資本・金利・与信費用で整理した観点が使えます。
なお決算短信の表紙にある「自己資本比率3.9%」は総資産に対する単純比率であり、規制上の自己資本比率とは別物です。ここを混同すると「自己資本が薄すぎる」と誤読しかねないので注意してください。
中期経営計画の還元方針:DOE目標と総還元性向50%以上
2026年4月20日公表の中期経営計画「Shift to the Next Stage」(2026〜2028年度)では、資本マネジメントの枠組みが次のように示されています。
- 健全性:CET1比率「10%台」での運営
- 企業価値向上:2028年度のROE(東証基準)目標12%
- 株主還元:「総還元性向50%以上」を目指しつつ、安定的なペースでの増配を企図し、DOE(純資産配当率)目標を設定
- 総還元性向目標を「50%以上」とし、下限水準として明確化
計画策定時点のDOE目標は2029年度3%程度でしたが、同社IRサイトの株主還元ページによれば、その後2030年3月期のDOE目標を3.5%程度に引き上げています。
DOEは純資産に対する配当総額の比率なので、利益が一時的に落ち込んでも純資産が急減しない限り配当水準は維持されやすい指標です。2026年6月末のBPSは1,341.39円ですから、DOE3.5%を単純に当てはめると1株あたり47円前後の水準感になります。現行予想の37円との差が、今後の増配余地のおおまかな目安と読めます。
2029年3月期(中計最終年度)の財務目標は、業務粗利益1兆円、親会社株主に帰属する当期純利益3,900億円、OHR40%台、総還元性向50%以上が掲げられています。
減配リスクはどこにあるか:3つの確認点
ここまでの数字を踏まえると、りそなの配当が崩れるとすれば入口は次の3つです。いずれも「いま起きている問題」ではなく、前提が外れたときに効いてくる論点です。
① 利益の伸びが政策金利に強く依存している
政策金利が0.25%上昇するごとに業務粗利益が+600億円程度、という感応度は、裏返せば利下げ局面では同じ勢いで戻るということです。2027年3月期の目標が3,100億円から3,300億円へ上方修正された理由も、2026年6月の利上げによる資金利益の上振れでした。
この銘柄を持つということは、金利の方向に賭けることとほぼ同義です。ただし配当性向が約25%と低いため、利益が多少落ちても配当の原資そのものは残ります。増配ピッチが鈍る可能性はありますが、減配に直結する距離ではありません。
② 与信費用の進捗が異常に低い
第1四半期の与信費用は13億円で、通期計画395億円に対する進捗率は3.3%です。これは「良すぎる」数字で、通期計画どおりに費用が出るなら、残り3四半期で382億円を計上することになります。
進捗が低いこと自体は悪い話ではありませんが、期初計画が保守的だったのか、それとも計上が後ろにずれているだけなのかは、四半期ごとに確認する価値があります。銀行の与信費用は景気の転換点で一気に出る性質があるため、進捗率だけを見て「今期は費用が出ない」と決めつけないでください。
③ 政策保有株の売却益という一過性要因
利益には政策保有株の売却益が乗っています。これは削減方針に沿った行動の結果であり、方針としては正しいものですが、繰り返し使える原資ではありません。売却対象が減れば同じ規模の益は出せなくなります。
配当の持続性を見るときは、本業から出ている利益(コア業務純益)と一過性の益を分けて見てください。第1四半期のコア業務純益(除く投資信託解約損益)は1,074億円で前年同期比+35.4%と、本業側も伸びていることは確認できます。
なお、高い利回りが必ずしも安心材料でないことの一般論は高配当株の危険信号に、配当性向とDOEのどちらを基準に置くべきかは配当性向とDOEの比較に整理しています。
保有判断の条件:何が続けば持ち続けられるか
この記事の範囲で言えるのは、次の条件が保たれている限り現行の配当水準は維持されやすい、ということです。
- CET1比率が中期経営計画の「10%台」を割り込まないこと(2026年6月末は10.14%)
- 総還元性向50%以上の方針が維持され、調整はまず自己株買い側で行われること
- DOE目標(2030年3月期3.5%程度)が引き下げられないこと
- 与信費用が通期計画の範囲内に収まること
逆に、DOE目標そのものの引き下げや、総還元性向の下限(50%)の撤回が開示されたときは、方針の変更なので確認が必要です。減配の兆候をどう読むかの一般的な手順は減配リスクのチェックリストにまとめています。
まとめ
- 2027年3月期の年間配当予想は37円(中間18.50円・期末18.50円)。前期実績29円からの増配予想
- 配当性向は約25%と低く、還元の約半分は自己株買い。業績が振れたときの調整弁が自己株買い側に置かれている構造
- 2019年3月期〜2023年3月期は21円で横ばい。連続増配型の銘柄ではなく、増配ピッチが上がったのは2024年3月期以降
- 個人預金62.8%・預貸率76%というリテール特化の構造は、利上げ局面で素直に効く一方、金利の方向に賭ける性質がある
- 見るべきは、CET1比率10%台の維持・総還元性向50%以上の方針・DOE目標3.5%程度・与信費用の進捗の4点
数値はいずれも下記の一次情報から確認したものです。最新の状況は必ずご自身で開示資料を確認してください。投資判断はご自身の責任でお願いします。
出典
- 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(株式会社りそなホールディングス、開示日:2026年7月31日)
- 2027年3月期 第1四半期決算ハイライト(株式会社りそなホールディングス、開示日:2026年8月7日)
- 株主還元|りそなホールディングス(1株当たり配当金の推移・DOE目標。2026年9月時点の掲載内容)
- 決算関連資料|りそなホールディングス(決算短信・説明資料の一覧)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。