取得利回り(YOC)で長期保有の成果を測る方法
- 結論:取得利回り(YOC)=「現在の年間配当 ÷ 自分の取得原価」で、長期保有と増配の成果を自分基準で測れる。
- 理由:株価で計算する配当利回りと違い、YOCは買値が分母なので、増配が続くほど数値が積み上がり保有継続の判断材料になる。
- 確認点:YOCが高くても現在の投資効率が高いとは限らない。減配リスク、税引後の手取り、現在の配当利回りとの併用が前提。
取得利回り(YOC)とは何か
取得利回り(YOC:Yield on Cost)は、いま受け取っている年間配当金を、株価ではなく「自分がその株を買ったときの取得原価」で割った利回りです。
YOC(%)= 現在の1株あたり年間配当金 ÷ 1株あたり取得原価 × 100
証券会社の画面やニュースに出てくる配当利回りは「現在の株価」が分母なので、市場全体の共通のモノサシです。一方YOCは分母が自分の買値なので、同じ銘柄でも投資家ごとに数値が異なる、完全に個人用のモノサシになります。
高配当株を長く持つ投資では、「増配によって自分の買値に対する配当がどれだけ育ったか」が成果の実感につながります。それを1つの数字で表せるのがYOCの役割です。
YOCの計算方法と具体例
計算に必要なのは次の2つだけです。
- 取得原価:買付単価。複数回に分けて買った場合は平均取得単価(証券口座に表示される「取得単価」)を使う
- 現在の年間配当金:直近の年間配当実績、または会社が公表している年間配当予想
具体例:10年保有で増配が続いたケース
仮に1株2,000円で買った株の年間配当が、当初60円から10年かけて100円まで増配されたとします(数値は説明用の仮定です)。
| 時点 | 年間配当(1株) | 取得原価 | YOC |
|---|---|---|---|
| 購入時 | 60円 | 2,000円 | 3.0% |
| 5年後 | 80円 | 2,000円 | 4.0% |
| 10年後 | 100円 | 2,000円 | 5.0% |
分母の2,000円は売却しない限り変わらないため、増配がそのままYOCの上昇に直結します。仮に10年後の株価が3,300円まで上がっていれば、その時点の配当利回りは約3.0%(100円÷3,300円)ですが、あなたのYOCは5.0%です。「いま買う人より有利な利回りで配当を受け取れている」ことが数字で確認できます。
なお配当を再投資すると平均取得単価が変わるため、YOCの推移は再投資の有無で分けて記録すると混乱しません。再投資が資産形成に与える効果は配当再投資の複利効果を試算する方法で詳しく試算しています。
配当利回りとの違いと使い分け
YOCと配当利回りは競合する指標ではなく、役割が違います。
| 指標 | 分母 | 何がわかるか | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 配当利回り | 現在の株価 | いま投資する場合の効率 | 新規購入・買い増しの比較 |
| YOC | 自分の取得原価 | 保有してきた成果 | 長期保有・増配の成果測定 |
ここで注意したいのは、YOCは売買判断の根拠にはならないという点です。YOCが8%でも、その銘柄の現在の配当利回りが2%なら、「いまの時価をその銘柄に置き続けること」の配当効率は2%です。乗り換え候補と比較するときは、必ず現在の配当利回り同士で比べる必要があります。
YOCを伸ばす原動力は増配の継続なので、購入前には増配の持続性を確認しておくことが重要です。見極めの視点は連続増配株の探し方と増配年数より確認したいことで解説しています。
税金とNISAを踏まえた「手取りYOC」
配当の成果を正確に測るなら、税引後で考える視点も持っておきましょう。
国税庁のタックスアンサーNo.1330(令和7年4月1日現在法令等)によると、上場株式等の配当(大口株主等を除く)は、支払時に所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%(合計20.315%)が源泉徴収されます。課税方法は総合課税・申告分離課税・申告不要から選択できます。
つまり課税口座では、YOC5.0%の手取りベースは約4.0%(5.0%×約0.797)になります。
一方、金融庁のNISA特設ウェブサイト(2026年9月1日閲覧)によると、2024年からのNISAでは非課税保有期間が無期限化され、年間投資枠はつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円(併用で360万円)、非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)です。NISA口座内の配当は非課税のため、YOCがそのまま手取り利回りになります(株式数比例配分方式での受取が条件)。長期でYOCを育てる戦略とNISAの無期限非課税は相性がよい組み合わせといえます。
YOCの限界と注意すべき落とし穴
YOCは励みになる指標ですが、次の限界を理解して使う必要があります。
- 減配・無配で一気に崩れる:YOCは過去の買値と現在の配当の組み合わせにすぎず、将来の配当を保証しない。業績悪化で減配されればYOCも下がる
- 株価下落を映さない:配当が維持されていても株価が半分になればトータルの損益はマイナスになり得る。YOCだけ見ていると含み損の放置につながる
- 「高YOCだから売らない」は思考停止:保有継続の判断は、現在の配当利回り・業績・配当方針で行うべきで、YOCの高さ自体は理由にならない
- 記念配・特別配当に注意:一時的な配当を年間配当に含めるとYOCを過大評価する。普通配当ベースで計算する
YOCは「長期保有のモチベーション管理と成果の記録」に使い、売買判断には現在の指標を使う、という役割分担を守ることが実践上のポイントです。
まとめ
- 取得利回り(YOC)=現在の年間配当÷取得原価。増配が続くほど自分の買値に対する利回りが育つ
- 配当利回りは「いま買う効率」、YOCは「保有してきた成果」を測る指標で、売買判断には現在の配当利回りを使う
- 課税口座の配当には合計20.315%が源泉徴収される(令和7年4月1日現在法令等)ため、手取りYOCで考える。NISA口座なら非課税でYOCがそのまま手取りになる
- YOCは減配や株価下落を映さない。増配の持続性の確認と、年1回程度のYOC・損益の記録をセットで行う
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)(令和7年4月1日現在法令等)
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト「NISAを知る」(2026年9月1日閲覧)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。