この記事の結論
  • 結論:米国株配当の二重課税は、確定申告で外国税額控除を適用すれば一定の範囲で取り戻せる。
  • 理由:米国で源泉徴収された税額を、日本の所得税から控除限度額の範囲内で差し引く制度が国税庁のタックスアンサーNo.1240に定められているため。
  • 確認点:控除限度額は「所得税額×国外所得÷所得総額」で決まり、全額戻るとは限らない。NISA口座の配当には適用できない点にも注意。

米国株の配当金は、受け取った時点で米国と日本の両方で税金が引かれています。この二重課税を放置すると、同じ配当に二重に課税されたままになりますが、確定申告で外国税額控除を適用すれば一定の範囲で調整できます。この記事では、国税庁とIRS(米国内国歳入庁)の一次資料を確認したうえで、控除の仕組みと申告の流れをチェックリスト形式で整理します。

米国株の配当が二重課税になる仕組み

米国株の配当には、受け取るまでに2段階の課税があります。

課税の段階税率(2026年8月5日時点)根拠
米国での源泉徴収原則30%、日米租税条約により10%に軽減IRSのNRA Withholding資料・日米租税条約
日本での課税20.315%(所得税15.315%+住民税5%)申告分離課税の場合

IRSの資料によると、外国人(米国非居住者)が受け取る米国源泉の所得には原則30%の源泉徴収が課されますが、租税条約がある国の居住者は軽減税率が適用されます。日本の居住者は、証券会社経由で「W-8BEN(米国非居住者であることの証明書)」を提出することで、条約に基づき配当の源泉徴収が10%に軽減されます。国内の主要ネット証券では口座開設時に提出手続きが組み込まれているのが一般的ですが、有効期限切れで30%が引かれるケースもあるため、税率が10%になっているかは年間取引報告書で確認しておきましょう。

つまり日本の投資家は、米国で10%引かれた後の金額に対して、さらに日本で20.315%が課税されます。この米国分の10%が二重課税にあたる部分で、外国税額控除の調整対象になります。

なお、配当課税の全体像(総合課税・申告分離課税の選択や損益通算)は特定口座の配当金と損益通算・確定申告の基本で整理しているので、あわせて確認してください。

外国税額控除の基本と控除限度額の計算式

国税庁タックスアンサーNo.1240(2026年8月5日確認)によると、外国税額控除は「居住者が外国の法令により所得税に相当する租税を納付することとなる場合」に、日本の所得税から一定額を差し引ける制度です。

重要なのは、外国で払った税金が全額戻るわけではないという点です。控除できる上限(控除限度額)は次の式で計算されます。

所得税の控除限度額 = その年分の所得税額 × (調整国外所得金額 ÷ 所得総額)

計算のイメージ

たとえば所得のほとんどが国内の給与で、国外所得が米国株の配当だけという人の場合、「調整国外所得金額÷所得総額」の割合は小さくなり、控除限度額も小さくなります。米国で源泉徴収された税額が控除限度額を超えた場合は、復興特別所得税の控除限度額からも控除でき、それでも引き切れない分には繰越制度があります。

3年間の繰越制度

国税庁の資料では、その年の外国所得税額が控除限度額を超える場合、前年以前3年内の「控除余裕額」を使って控除できるとされています。逆に控除し切れなかった外国所得税額も3年間繰り越せるため、限度額に収まらなかった年があっても、翌年以降の申告で調整できる可能性があります。繰越を使うには毎年継続して明細書を提出しておく必要がある点に注意してください。

確定申告で調整する流れ(チェックリスト)

実際の申告は、次の順に進めます。

  1. 年間取引報告書を入手する:特定口座なら証券会社が交付する年間取引報告書に、外国所得税額(米国で引かれた10%分)が記載されています。
  2. 配当の課税方式を決める:外国税額控除は確定申告が前提です。総合課税・申告分離課税のどちらを選んでも適用できますが、申告不要制度を選んだ配当には適用できません。
  3. 外国税額控除に関する明細書を作成する:国税庁の様式「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」に、国外所得金額と外国所得税額を記入します。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、金額を入力するだけで限度額計算まで自動で行われます。
  4. 添付書類をそろえる:国税庁の資料では、外国所得税を課されたことを証する書類や国外源泉所得の計算に関する明細書などの添付・保存が求められています。特定口座の場合は年間取引報告書がその中心になります。
  5. 申告書を提出し、繰越額を記録する:控除し切れなかった額や控除余裕額は翌年以降に使うため、明細書の控えを保管しておきます。

適用できないケースと注意点

外国税額控除には、事前に知っておきたい制約があります。

  • NISA口座の配当は対象外:NISAでは日本側が非課税のため二重課税が生じておらず、米国の10%は外国税額控除で取り戻せません。米国株をNISAで持つ場合、この10%はコストとして受け入れることになります。
  • 控除限度額の壁:前述の計算式のとおり、国外所得の割合が小さい人は限度額も小さく、10%分の全額は戻らないことがあります。「申告すれば必ず満額戻る」わけではありません。
  • 住民税側の調整:所得税・復興特別所得税で控除し切れない場合、住民税からの控除に回る部分がありますが、こちらにも限度があります。
  • 手間との比較:控除額が数百円程度なら、申告の手間や、申告により配当所得が合計所得金額に算入される影響(扶養判定や社会保険料への波及)と比較して判断する余地があります。

高配当株投資そのものの銘柄選定や利回りの考え方は、高配当株投資の始め方:利回りだけで選ばない基本手順で解説しています。税引後の手取りまで含めて利回りを考えることが、米国株では特に重要です。

まとめ

米国株の配当は、日米租税条約により米国で10%源泉徴収された後、日本で20.315%課税される二重課税の状態にあります(2026年8月5日時点)。確定申告で外国税額控除を適用すれば、「所得税額×調整国外所得金額÷所得総額」で計算される控除限度額の範囲内で米国分を取り戻せ、引き切れない分は3年間繰り越せます。一方で、NISA口座の配当には適用できず、限度額の関係で全額は戻らないケースもあります。年間取引報告書で外国所得税額を確認し、控除額と申告の手間を比べたうえで適用を判断してください。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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