この記事の結論
  • 結論:利子と配当は「利回りの高低」ではなく、==受け取り額が契約で決まっているか否か==で分けて考えると配分を決めやすい。
  • 理由:債券の利子は発行条件で確定している一方、配当は会社法上の剰余金の分配であり、業績や方針次第で変わり得るため。
  • 確認点:税率はどちらも20.315%でほぼ同じだが、==申告方法の選択肢==(配当控除・損益通算)と換金ルールが違う点を先に確認する。

高配当株を持ったうえで「債券も少し持っておこうか」と考え始めると、最初に迷うのが「利子と配当は何が違うのか」という点です。表面上はどちらも定期的に振り込まれるお金ですが、受け取りの確実性・課税の扱い・換金のしやすさが異なります。ここを整理しておくと、金利水準が動いたときに慌てて組み替えずに済みます。

利子は「発行条件で決まった金額」、配当は「その期の分配」

個人向け国債の商品概要(財務省、2026年9月21日閲覧)によれば、利子は年2回支払われ、利率は募集時の条件で決まります。2026年9月募集分(募集期間:2026年9月3日〜9月30日、発行日:2026年10月15日)の適用利率は、変動10年(第198回)が年1.95%、固定5年(第186回)が年2.24%、固定3年(第196回)が年1.96%です(いずれも税引前)。変動10年は基準金利×0.66で半年ごとに利率が見直されますが、3商品とも年0.05%の最低金利保証が付きます。

一方、配当は毎期の利益や方針から決まります。NTT(9432)のIR開示(2026年5月14日更新)では、2026年度(2027年3月期)の年間配当予想は1株5.4円(中間2.70円・期末2.70円)で16期連続増配の予定とされています。ただし同社の2026年度業績予想では当期利益9,800億円(前年度比570億円減)、1株当たり当期利益12.1円が示されており、配当は増える見込みでも利益は減る見込み、という形です。つまり配当の継続性は利益と方針に依存するのであって、利子のように約束されているわけではありません。

課税:税率はほぼ同じ、違いは「申告の選択肢」

国税庁タックスアンサー(2026年9月21日閲覧)で確認できる扱いは次のとおりです。

項目特定公社債の利子(国債など)上場株式の配当(大口株主以外)
源泉徴収所得税15.315%+地方税5%所得税15.315%+地方税5%
申告不要選択できる選択できる(金額にかかわらず)
申告分離課税選択できる選択できる
総合課税・配当控除対象外選択でき、配当控除が使える

税率の合計はどちらも20.315%で差がありません。実際、個人向け国債の税引後利率も、変動10年(第198回)が1.5538575%、固定5年(第186回)が1.7849440%と、税引前利率に0.79685を掛けた水準で示されています。

違いが出るのは申告方法です。配当は総合課税を選べば配当控除が使えるため、課税所得が低い人ほど有利になる場合があります。一方、特定公社債の利子は申告分離課税の対象で、株式の譲渡損失が出た年に申告分離を選べば損益通算の対象にできます。なお上場株式等以外の配当は20.42%の源泉徴収(地方税なし)となり、扱いが変わります。

NISAとの関係も押さえておきたい点です。金融庁のNISA特設サイト(2026年9月21日閲覧)では、年間投資枠はつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円の計360万円、非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)とされています。個人向け国債は成長投資枠の対象商品に含まれないため、債券部分は課税口座での保有が前提になります。非課税枠は配当が出る資産に優先的に充てる、という整理が素直です。

価格変動と換金性:ここが最大の差

個人向け国債は購入から1年経過すれば中途換金でき、その際は直前2回分の利子相当額が差し引かれます。額面は戻るため、元本の変動リスクを負わない代わりに利子を返す構造です。

高配当株は日々価格が動き、配当が維持されても株価が下がれば評価額は減ります。逆に、業績が伸びれば増配と値上がりの両方が期待できます。前提として、生活費の取り崩し予定がある資金と、10年以上動かさない資金を分けておくことが先です。この「役割で分ける」考え方は金利上昇局面の高配当株:債券・預金との使い分けでも整理しています。

配分を自分で決める3ステップ

  1. 使う時期を書き出す:3年以内に使う予定額は債券・預金へ。個人向け国債の固定3年(第196回・年1.96%、2026年9月募集)などが候補になります。
  2. 配当で賄いたい年間額を決める:必要額÷想定税引後利回りで必要元本を逆算します。税引後で見るため、表面利回りに0.79685を掛けて計算します。
  3. 残りを株式へ回し、業種の偏りを点検する:高配当株は銀行・通信・商社に集中しやすいため、高配当ポートフォリオのセクター分散チェックリストで保有比率を確認します。

判断材料とリスクの併記

強気に見られる材料は、2026年9月募集分の個人向け国債が固定5年で年2.24%と、最低保証0.05%の時代に比べて利子だけで一定の受け取りを確保できる点です。同時に、固定金利商品は今後さらに金利が上がった場合に相対的に見劣りし、変動10年は金利低下局面で利率が下がるリスクがあります。

配当側のリスクは減配・無配です。NTTのように連続増配を掲げる企業でも、配当予想はあくまで会社予想であり、決算短信の修正で変わり得ます。配当方針と直近の当期利益予想の両方を、四半期ごとに決算短信で確認する習慣を持つのが現実的な対処です。

まとめ

利子と配当は税率こそ20.315%でほぼ同じですが、金額が契約で決まっているか毎期の判断で決まるか、という点で性質が大きく異なります。使う時期が決まった資金は利子で確実性を取り、長期で増やす部分は配当と値上がりを取る——この切り分けができれば、利回りの数字だけで乗り換える必要はなくなります。まずは手元の資金を「3年以内に使う分」「それ以外」に分け、後者の中で業種分散を点検するところから始めてみてください。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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