決算期変更がある年の配当比較:変則決算の期間をそろえる
- 結論:決算期変更の年の配当は「1年分」ではありません。対象月数・基準日・株式分割の3点をそろえてから前後の年と比べます。
- 理由:6カ月決算の配当をそのまま前年と比べると大幅な減配に見え、2倍して年換算すると翌年が大幅な増配に見えます。どちらも実態とずれます。
- 確認点:決算短信の「対象期間」と配当の状況の注記、分割の注記を読みます。12カ月決算どうしで比べるか、基準日ごとに半期単位で並べます。
配当の推移表を作っていると、ある年だけ配当が極端に少ない銘柄に出会うことがあります。原因が減配ではなく、決算期変更で会計期間が短くなっただけ、ということは珍しくありません。
この記事では、良品計画(7453)が2020年に決算期を2月末日から8月31日に変えた例を使い、変則決算をはさむ配当推移の読み方を整理します。数値はすべて同社の決算短信(JPX掲載)に記載された値と、そこから計算した値です。
決算期変更の年は「1年分の配当」ではない
良品計画の2020年8月期決算短信(2020年10月8日公表)には、「2020年8月期は、決算期変更により2020年3月1日から2020年8月31日までの6ヵ月決算」と注記があります。そのため同社は、前期比の増減率を「記載しておりません」としています。
前後の期間を並べると次のとおりです。
| 決算期 | 対象期間 | 月数 |
|---|---|---|
| 2020年2月期 | 2019年3月1日〜2020年2月29日 | 12カ月 |
| 2020年8月期 | 2020年3月1日〜2020年8月31日 | 6カ月 |
| 2021年8月期 | 2020年9月1日〜2021年8月31日 | 12カ月 |
3つの期間は切れ目なく続いていますが、長さが違います。会社自身が前期比を出していない年に、読み手が増減率を計算して「減配」「増配」と判断するのは避けたほうが安全です。2021年8月期第2四半期決算短信(2021年4月14日公表)でも、比較対象となる前年同四半期の財務諸表を作っていないため、前年同期比は載っていません。
良品計画の配当推移を期間ごとに並べる
各期の決算短信「配当の状況」から1株当たり配当を抜き出すと、次のようになります。
| 決算期 | 第2四半期末 | 期末 | 年間合計 | 配当性向(連結) |
|---|---|---|---|---|
| 2020年2月期 | 182.00円(分割前) | 18.20円(分割考慮後) | 記載なし | 41.1% |
| 2020年8月期 | なし | 5.00円 | 5.00円 | -(純損失) |
| 2021年8月期 | 20.00円 | 20.00円 | 40.00円 | 31.8% |
| 2022年8月期(予想、2021年10月14日時点) | 20.00円 | 20.00円 | 40.00円 | 34.4% |
2020年8月期は6カ月決算なので、第2四半期末の配当がありません。この期の親会社株主に帰属する当期純損益は169億17百万円の損失で、配当性向は「-」と表示されています。
株式分割の調整を先に済ませる
2020年2月期の行は、中間と期末で単位がそろっていません。同社は2019年9月1日付で1株を10株に分割しており、決算短信では期末配当だけを分割考慮後の金額で示しています。第2四半期末(2019年8月31日)の182.00円は分割前の金額です。
10で割ると18.20円になり、分割後ベースの2020年2月期の年間配当は18.20円+18.20円=36.40円と計算できます。分割の調整方法は「株式分割があったときの配当の読み方:分割調整後の金額で比べる」で詳しく解説しています。
単純な年換算や前期比が誤解を招く理由
期間をそろえずに比べると、次のような誤った結論になります。
- 前期比で見る:36.40円から5.00円に下がり、約86%の減配に見える
- 2倍して年換算する:5.00円×2=10.00円とし、翌期の40.00円を「4倍の増配」と読んでしまう
- 配当金総額で見る:2020年8月期の配当金総額は1,318百万円、2021年8月期は10,769百万円で、大幅に増えたように見える
どれも、6カ月と12カ月を同じ物差しで測ったことによるずれです。さらに2020年8月期は新型コロナウイルス感染症の影響で店舗休業が続き、純損失を計上した特殊な半年でした。単純な年換算は「残りの半年も同じ状況が続いた」という仮定を置くことになり、平常時の配当水準を表すとは限りません。
キャッシュ・フロー計算書の「配当金の支払額」にも注意が必要です。2020年8月期の配当金の支払額は47億96百万円で、5.00円配当の総額1,318百万円とは一致しません。この期に支払ったのは主に前期(2020年2月期)の期末配当で、支払いのタイミングが1期ずれるためです。
期間をそろえる3つの方法
1. 12カ月決算どうしで比べる
いちばん素直なのは、変則決算の年を外し、12カ月決算どうしを比べる方法です。分割調整後で見ると、2020年2月期の36.40円に対し、2021年8月期は40.00円でした。
ただし、両者の期末は2020年2月29日と2021年8月31日で、1年半離れています。36.40円から40.00円への伸び(約9.9%)を1年あたりの増配率として扱うと、成長スピードを過大に見積もります。増配率の計算方法は「増配率の見方:配当利回りより増配スピードを評価する方法」も参考にしてください。
2. 基準日ごとに半期単位で並べる
良品計画のように中間・期末の年2回配当の会社なら、配当の区分(第2四半期末・期末)を期間の末日に当てはめ、半年ごとに並べる方法も使えます。
| 区分の期末日 | 決算期・区分 | 1株当たり配当(分割調整後) |
|---|---|---|
| 2019年8月31日 | 2020年2月期・第2四半期末 | 18.20円 |
| 2020年2月29日 | 2020年2月期・期末 | 18.20円 |
| 2020年8月31日 | 2020年8月期・期末 | 5.00円 |
| 2021年2月28日 | 2021年8月期・第2四半期末 | 20.00円 |
| 2021年8月31日 | 2021年8月期・期末 | 20.00円 |
こう並べると、決算期の区切りに関係なく、半年ごとの配当水準の変化を読めます。2020年8月期の5.00円は「1年分」ではなく「半年分」として、前後の18.20円や20.00円と比べるのが筋です。
3. 会社の説明と配当方針を読む
数字をそろえたうえで、決算短信本文や配当方針の説明を確認します。増減の理由が業績なのか、期間なのか、方針の変更なのかは、数字だけでは判断できないからです。過去の開示の探し方は「過去の配当金の推移を自分で調べる方法:決算短信・有報・IRページ」にまとめています。
推移表を読むときの確認点
変則決算をはさむ銘柄を調べるときは、次の点を確認します。
- 決算短信1ページ目の「対象期間」が12カ月かどうか
- 配当の状況の注記に、決算期変更や株式分割の記載があるか
- 前期比の増減率が「-」になっていないか(会社が比較できないと判断した印)
- 配当予想が通期12カ月を前提にしているか
判断材料は両面から見てください。良品計画の場合、2021年8月期は12カ月で40.00円となり、2022年8月期も40.00円の予想でした(2021年10月14日時点)。これは前向きに読める材料です。一方で、予想はあくまで公表時点の見通しで、業績次第で修正される可能性があります。上記の数値は2020〜2021年の開示に基づくもので、現在の配当水準や方針は最新の決算短信で確かめる必要があります。
まとめ
決算期変更の年の配当は、対象月数が通常と違うため、そのまま前後の年と比べると大幅な減配や増配に見えます。良品計画の例では、6カ月決算の2020年8月期の配当は5.00円でした。前期比で見ても2倍に年換算しても、実態とはずれた結論になります。
比べるときは、まず株式分割を調整し、次に12カ月決算どうしか、基準日ごとの半期単位でそろえます。そのうえで、会社の注記と配当方針の説明を読み、期間の違いによる増減と業績による増減を分けて考えることが大切です。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 株式会社良品計画「2020年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2020年10月8日公表、対象期間2020年3月1日〜8月31日)
- 株式会社良品計画「2021年8月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2021年4月14日公表、対象期間2020年9月1日〜2021年2月28日)
- 株式会社良品計画「2021年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2021年10月14日公表、対象期間2020年9月1日〜2021年8月31日)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。