この記事の結論
  • 結論:優待と配当は税金も継続性も異なるため、「優待込み利回り」は1つの数字にまとめず、必ず分けて評価する。
  • 理由:配当は配当所得として源泉徴収20.315%で完結しやすい一方、優待は雑所得扱いで、NISA口座でも非課税の対象に含まれない(国税庁・金融庁資料、いずれも2026年8月28日確認)。
  • 確認点:優待を除いた配当利回りだけで保有を続けられるか、優待原資が本業と結びついているか、上場廃止(TOB・MBO)の可能性はないかの3点。

株主優待と配当は「別の制度・別の税金」

高配当株を調べていると、証券会社のサイトで「配当利回り3.0%+優待利回り1.5%=実質4.5%」といった表示を見かけます。ただ、この2つは足し算できるほど同じ性質のものではありません。

配当は、会社法上の剰余金の分配で、株主総会(または取締役会)の決議を経て支払われる金銭です。国税庁の説明では、配当所得は「株主や出資者が法人から受ける剰余金や利益の配当」などに係る所得と定義され、上場株式等の配当等(大口株主等を除く)には15.315%(ほかに地方税5%、合計20.315%)の税率で所得税・復興特別所得税が源泉徴収されます(令和7年4月1日現在法令等)。

一方、株主優待は自社製品やクオカード、店舗の割引券といった「株主である地位に基づいて受け取る経済的な利益」です。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、株主優待を受け取った場合は雑所得に該当すると明示されています。つまり配当所得ではなく、原則として他の所得と合算する総合課税の対象です。

NISA口座でも優待は非課税にならない

ここが初心者の見落としやすいポイントです。金融庁のNISA特設ウェブサイトでは、非課税になるのは「運用益(売却益・配当/分配金)」と説明されています(つみたて投資枠年120万円・成長投資枠年240万円、非課税保有限度額1,800万円のうち成長投資枠は1,200万円まで/2026年8月28日確認)。NISAの非課税の対象に、優待の経済的利益は含まれていません。

もっとも、給与所得者の場合、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要とされています(国税庁、令和7年4月1日現在法令等)。優待だけで20万円を超える人は多くありませんが、副業や他の雑所得がある人は合算で判断する必要があります。

配当株主優待
所得区分配当所得雑所得
課税源泉徴収20.315%、申告分離課税も選択可原則として総合課税(他の所得と合算)
NISA非課税の対象非課税の対象外
受け取る形現金物・券・サービス(換金性は銘柄次第)
決定プロセス決算・配当方針に紐づく会社の裁量で変更・廃止しやすい

「優待込み利回り」で選ぶと何がずれるのか

数字で見ると差がはっきりします。株価2,000円・100株(投資額20万円)、年間配当60円(年6,000円)、優待3,000円相当という架空の銘柄で考えます。

  • 配当利回り:6,000円 ÷ 20万円 = 3.0%
  • 優待利回り:3,000円 ÷ 20万円 = 1.5%
  • 合計:4.5%

ただし、税引き後で見ると配当は6,000円×(1−0.20315)=約4,780円、実質2.39%に下がります。優待も雑所得として課税される可能性があり、表示上の「合計利回り」は税引き前と税引き後が混ざった数字になりがちです。

さらに3つのズレがあります。

  1. 投資額を増やすほど優待利回りは下がる:同じ銘柄を300株(60万円)持っても優待が3,000円相当のままなら、優待利回りは0.5%に低下します。優待は保有株数に比例しないため、まとまった資金を高配当株に振り向ける人ほど、優待の寄与は小さくなります。
  2. 使わなければ価値はゼロ:自社店舗が生活圏にない、食品が好みに合わない、といった場合、カタログ上の「3,000円相当」は実際の家計効果になりません。
  3. 継続性の裏づけが違う:配当は利益とキャッシュフローという原資の議論があり、決算資料から継続性をある程度検証できます。この見方は減配リスクを見抜くための決算チェックリストで整理しています。対して優待は会社の裁量が大きく、事前に読める材料が限られます。

優待廃止はどれくらい起きているか——2025年の実績と実例

東京商工リサーチの調査(2026年2月25日公開)によると、2025年に株主優待の導入(再導入を含む)を開示した上場企業は175社、廃止を開示したのは68社でした。廃止68社のうち38社(55.8%)はTOBやMBOによる上場廃止に伴うもので、上場を続けたまま優待をやめた企業は30社にとどまります。

この内訳は重要です。統計上は「導入が廃止を上回る」トレンドですが、優待株を持つ個人にとっての最大の廃止要因は、企業の方針転換よりも上場廃止そのものだという読み方ができます。TOBで買い取られれば優待も配当も止まり、保有は現金化されます。

個別の実例としては、日清紡ホールディングス(3105)が2026年6月30日に株主優待制度の廃止を公表しています。同社IRサイトの記載によれば、2025年12月31日を基準日として、1,000株以上を保有する国内居住の個人株主を対象とした優待の実施をもって制度を廃止し、2026年12月31日を基準日とする優待は実施しないとされています。廃止の背景には、事業ポートフォリオ見直しに伴い、優待品として提供していた製品の生産を終了したことがあると説明されています(2026年8月28日確認)。

つまり、優待は「株主還元方針」ではなく「事業のかたち」に左右されることがあるわけです。

優待廃止のダメージを事前に見積もる4ステップ

ステップ1:利回りを2本に分ける

購入検討時に、配当利回りと優待利回りを別々にメモします。証券会社の合計表示をそのまま使わず、「配当のみ○%」「優待込み○%」の2つを並べて記録するだけで、判断の土台が変わります。

ステップ2:「配当だけになっても持てるか」を先に決める

優待が明日なくなったと仮定して、配当利回りだけで保有を続けるかを考えます。ここで「持たない」となる銘柄は、実質的に優待を買っている状態です。銘柄選びの基本手順は高配当株投資の始め方:利回りだけで選ばない基本手順にまとめています。

ステップ3:株価への影響幅を粗く置く

先ほどの例で、優待利回り1.5%分がなくなったときに、市場が「配当利回り3.0%では割高」と判断すれば株価は下落します。仮に廃止後も配当利回り3.5%が求められる水準だとすれば、株価は約1,714円(60円÷3.5%)となり、2,000円からの下落率は約14%です。これは精密な予測ではなく、優待相当分が株価に織り込まれている可能性を金額で意識するための概算として使ってください。

ステップ4:廃止パターン別に受け止め方を分ける

廃止のパターン典型的な開示見方
配当への一本化「株主還元を配当に集約」増配とセットなら受取額は改善する場合もある
事業・製品の終了に伴う廃止優待品の供給停止が理由事業ポートフォリオ変更のサイン。本業の説明も併せて確認
業績悪化に伴う廃止減配・無配と同時期配当の継続性も同時に疑う場面
TOB・MBOによる上場廃止公開買付けへの意見表明優待も配当も終了。保有方針そのものの再検討が必要

事前に見える兆候

  • 優待の原資が本業と直結しているか(自社製品型は事業撤退で消えやすい)
  • 長期保有条件の追加や必要株数の引き上げなど、改悪の履歴があるか
  • 親会社・大株主の持株比率が高く、TOBやMBOの余地があるか
  • 機関投資家・海外投資家比率が高く、「株主平等」の観点から優待に否定的な声が出ていないか

強気に見られる材料もあります。優待は個人株主の安定確保に有効で、導入企業数自体は増加傾向にあります。判断の分かれ目は、その企業が優待を「還元策の一部」と位置づけているか、「事業の副産物」として配っているかです。

まとめ

株主優待と配当は、税務上も継続性の裏づけも別物です。配当は配当所得として20.315%の課税で完結しやすく、NISA口座なら非課税ですが、優待は雑所得で、NISAの非課税対象には含まれません。「優待込み利回り」は税引き前後が混ざり、投資額が増えるほど実態から離れます。

実務としては、①利回りを配当と優待に分けて記録する、②優待がなくなっても持てるかを購入前に決める、③廃止時の株価下落幅を概算で置く、④廃止パターン(配当一本化/事業終了/業績悪化/上場廃止)を切り分ける、の4点で十分です。2025年の廃止68社のうち過半がTOB・MBOによる上場廃止だったという事実は、優待リスクが企業の方針だけでなく資本政策からも来ることを示しています。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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