TIS(現TISI)の配当方針:ITサービスの利益と還元を読む
- 結論:TISI(旧TIS、証券コード3626)は「中期経営計画(2024-2026)」で==総還元性向50%(目安)==を掲げています。目安は従来の45%から引き上げられました。あわせて1株当たり配当の継続的な充実と、自己株式の保有を原則として発行済株式総数の5%程度にとどめ、超える分は消却する方針も示しています(IR「株主還元」ページ、2026年9月1日更新)。
- 理由:総還元性向は、営業活動から得られた利益(法人税等と非支配株主利益を控除した後)をもとに計算します。==資本構成の適正化を目的とする自己株式取得は計算から除きます==。2026年3月期は配当と自社株買いを合計すると総還元性向が158.5%ですが、会社基準では49.0%です。
- 確認点:この中計の最終年度は2027年3月期で、年間配当90円(中間45円・期末45円)を計画しています(2026年7月30日時点で修正なし)。2027年4月に始まる次期中計で還元方針がどう変わるかは、まだ開示されていません。
TISからTISIへ:合併・商号変更は同じ会社の沿革として読む
TISは2026年7月1日付で完全子会社のインテックを吸収合併し、商号をTISI株式会社に変えました(同社2026年7月1日のお知らせ)。2026年7月30日に出た2027年3月期第1四半期決算短信は「TISI株式会社」名義で、証券コードは3626のままです。
配当方針を読むうえで押さえたい点は次の3つです。
- 連結業績はそのままつながる:インテックは合併前から連結子会社でした。このため連結の売上・利益は合併の前後で比べられます。
- 単体(個別)の数値はつながらない:2026年3月期の個別業績(売上高2,731億円、当期純利益440億円)にはインテックの事業が入っていません。合併後の単体数値と並べて増減を語るのは避けましょう。配当方針は「連結業績を勘案」すると明記されているので、軸には連結を使います。
- 合併費用が利益予想に入っている:2027年3月期の連結予想には、合併準備費用として販管費約16億円と営業外費用約6億円が含まれています(2026年5月8日決算短信)。
現行の株主還元方針:指標・水準・計算の前提
2026年5月8日の決算短信と同日の決算説明資料で確認できた方針を表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方針の枠組み | 中期経営計画(2024-2026)。成長投資・財務健全性・株主還元のバランスをとる |
| 主指標 | 総還元性向50%(目安)。従来は45% |
| 配当 | 1株当たり配当の継続的な充実 |
| 自己株式 | 保有は原則として発行済株式総数の5%程度まで。超える分は消却 |
| 計算の基礎 | 営業活動から得られた利益(法人税等・非支配株主利益の控除後) |
| 除外項目 | 資本構成の適正化を目的とする自己株式取得 |
| 財務の枠 | D/Eレシオ0.5まで許容、「A格」の格付を維持、現預金はコミットメントラインと合わせて月商2カ月程度 |
会社は「一時的な損益に影響されない営業活動から得られた利益」を還元の基礎にするのが望ましいと説明しています。会計上の純利益がそのまま分母になるわけではありません。この考え方は中期経営計画の株主還元方針の読み方で整理した「指標の定義を先に読む」手順にそのまま当てはまります。
自己株式取得の「除外注記」を確認する
IRページの配当状況の欄には「総還元性向は、資本構成の適正化を目的とする自己株式取得を除いて算出」と書かれています。さらに、2023年3月期・2024年3月期・2026年3月期・2027年3月期には、この目的の取得を別途実施したと注記されています。
2026年3月に決めた総額500億円の取得には、総還元性向50%に基づく2027年3月期分の82億円相当が含まれています。残りは資本構成の適正化を目的とする分です(決算短信)。IRページによると、取得は2026年3月11日〜5月11日に14,368,400株、約500億円で完了しました。その後、2026年8月31日に13,700,000株(消却前の発行済株式総数の6.0%)を消却しています。
配当と還元性向の実績・計画
| 決算期 | 年間配当(中間/期末) | 配当性向(連結) | 総還元性向(IR表) | 総還元性向(補正後) |
|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期 実績 | 70円(34/36) | 32.6% | 45.8% | 49.8% |
| 2026年3月期 実績 | 80円(38/42) | 39.0% | 53.5% | 49.0% |
| 2027年3月期 計画 | 90円(45/45) | 33.1% | 47.7% | 50.0% |
出典:IR「株主還元」(2026年9月1日更新)、2026年3月期決算短信・決算説明資料(2026年5月8日)。「補正後」は決算説明資料にある会社基準の値で、営業活動から得られた利益をもとに計算しています。
数字の読み方で注意したい点は3つあります。
- 同じ「総還元性向」でも表によって値が違う:IRページの表(53.5%)と説明資料の補正後の値(49.0%)は分母が異なるとみられます。方針の50%と比べる値として会社が使っているのは補正後の値です。
- 配当性向を検算する:2026年3月期は80円÷1株当たり当期純利益204.91円=約39.0%で、短信の値と一致します。2027年3月期は90円÷予想EPS271.70円=約33.1%です。
- 2026年3月期の期末配当は当初予想より増えた:期末配当は当初予想の38円から4円増えて42円になりました。会社はこれで「14期連続増配」としています(説明資料、2026年5月8日時点)。2027年3月期の90円は計画値なので、実績として確定するのは期末決算の後です。
IRページの長期推移を見ると、2020年3月期は年間90円、2021年3月期は35円と水準が大きく違います。両者を並べる前に、株式分割の有無を有価証券報告書などで確認してください。この記事ではその点を本文で確認できていないため、2021年3月期より前の配当とは比較していません。
還元の原資になるITサービスの利益
| 連結(百万円) | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期 予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 571,687 | 596,479 | 620,000 |
| 営業利益 | 69,047 | 76,229 | 81,000 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 50,012 | 46,624 | 57,000 |
2026年3月期は営業利益が10.4%増えました。一方、純利益は6.8%減っています。インテックの訴訟の和解に伴う訴訟損失引当金繰入額74億円を特別損失に計上したことが主な理由です。会社基準の総還元性向が営業活動の利益を基礎にしているのは、こうした一時的な損益の振れを除くためです。
2027年3月期の純利益予想には、投資有価証券の売却で見込む特別利益50億円が入っています。セグメント別の営業利益予想では、金融ITが17.0%増、広域ITソリューションが7.2%増とされています。
第1四半期(2026年4〜6月)の実績は、売上高1,501億円(前年同期比7.0%増)、営業利益183億円(同12.2%増)でした。営業利益は通期予想810億円の約22.7%、上期予想365億円の約50.3%に当たります。業績予想と配当予想はどちらも据え置かれました(2026年7月30日)。
キャッシュと財務の余力
2026年3月期の営業キャッシュフローは814億円、フリーキャッシュフローは505億円でした。配当金の支払いが171億円、自己株式の取得が559億円です。自己資本比率は2026年3月末の58.9%から、2026年6月末には55.7%に下がっています。大型の自社株買いで資本を圧縮している段階だと読めます。財務諸表の読み方は個別企業分析のやり方も参考にしてください。
強気材料・リスク・判断条件
強気材料
- 受注高6,058億円(前期比5.0%増)、期末受注残高2,108億円(同6.7%増)と、受注が積み上がっている(2026年3月期)
- 総還元性向50%という目安と、「1株配当の継続的な充実」という配当の方向性がはっきり示されている
リスク
- 公共系案件や決済分野への先行投資で収益性が下がった例が2026年3月期にもあった
- 合併の統合費用や、AIによる開発手法の変化が利益に響く可能性がある
- 次期中計で還元の目安や計算方法が変わる可能性がある
判断のときに確認したい条件
- 2027年5月ごろに出る見込みの通期決算と次期中計で、総還元性向の目安と除外注記が続くか
- 補正後の総還元性向が50%前後で推移するか
- 自己株式の保有比率が5%程度に保たれ、超える分が消却されているか
配当方針を他社と比べたい場合は、NTTの株主還元の分析と並べて読むと、指標の違いがつかみやすくなります。
まとめ
TISI(旧TIS)の現行方針は、中期経営計画(2024-2026)で掲げた総還元性向50%(目安)と、1株配当の継続的な充実です。総還元性向は営業活動の利益を基礎に計算し、資本構成の適正化を目的とする自社株買いは含めません。2026年3月期の実績は年間配当80円、会社基準の総還元性向49.0%でした。2027年3月期は年間配当90円を計画しており、2026年7月30日時点で修正はありません。合併後も連結業績は比べられますが、単体の数値は合併の前後で比べないようにしましょう。次の確認ポイントは、2027年4月に始まる次期中計で還元方針がどう示されるかです。
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- TISI IR「株主還元」(2026年9月1日更新)
- TISI IRライブラリ(2026年8月25日更新)
- TIS「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月8日)
- TIS「2026年3月期 決算説明資料」(2026年5月8日)
- TISI「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年7月30日)
- TISI「TISとインテックの合併完了および商号変更に関するお知らせ」(2026年7月1日)
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、正確性・完全性を保証するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。