この記事の結論
  • 結論:フリーランスの「売上」「事業所得」「課税所得」「手取り」は4段階のまったく異なる数字。売上500万円の手取りは概算で310〜320万円程度になることが多い。
  • 理由:売上から必要経費・青色申告特別控除・社会保険料控除・基礎控除を差し引いて課税所得を算出し、所得税・住民税・社会保険料をすべて払った後が「手取り」となる。
  • 確認点:国民年金保険料(令和8年度:月額17,920円)と国民健康保険料は毎年改定される。青色申告特別控除(最大65万円)の有無が課税所得を大きく左右する。

売上・所得・手取りを4段階で整理する

会社員であれば、月給30万円という数字から源泉徴収と社会保険料が引かれた金額が振り込まれる。雇用主が自動計算してくれるため、「いくら税金を払っているか」を意識しない人も多い。

ところがフリーランスでは、売上事業所得課税所得手取りはそれぞれ異なる数字を指し、すべての計算を自分で管理しなければならない。独立直後に「月50万円稼げた」と感じても、後から国民年金・国民健康保険・所得税・住民税を一括で支払うと資金繰りが苦しくなるのは、この4段階への理解不足が原因であることが多い。

段階計算意味
①売上(収入金額)取引先から受け取った報酬の合計
②事業所得①-必要経費-青色申告特別控除事業で「稼いだ」金額
③課税所得②-所得控除(社会保険料控除・基礎控除等)税金計算のベース
④手取り①-必要経費-所得税-住民税-社会保険料実際に使えるお金

フリーランスのお金管理:税金・保険・資金繰りの全体像では、税金・社会保険・資金繰りの3領域を一本化した管理フレームワークを解説している。まず本記事で各段階の計算ロジックを理解してほしい。

売上から事業所得を計算する

売上(収入金額)とは何か

国税庁によると、事業所得の計算に使う「総収入金額」(=売上)は単なる入金額の合計ではない(国税庁 No.1350 事業所得の課税のしくみ)。現金収入だけでなく、物品や権利として受け取った経済的利益、仕入割引やリベート収入も含まれる。

また、インボイス登録事業者(適格請求書発行事業者)の場合は消費税部分を売上に含めない(税抜経理方式)のが一般的で、請求書の合計金額そのものとは異なる。「売上500万円」といえば税抜の報酬合計を指すことがほとんどだ。

必要経費として引けるもの

事業所得の計算式はシンプルだ。

> 事業所得 = 総収入金額(売上)- 必要経費

必要経費として計上できる主な項目を示す。

  • 業務で使うPC・スマートフォンの購入費や修理代(減価償却も含む)
  • 業務用ソフト・クラウドサービスのサブスクリプション料
  • 交通費・出張費(プライベートと業務が混在する場合は按分)
  • 仕事場の家賃(自宅兼用なら業務利用割合で按分)
  • 外注費・業務委託費

食費・旅行などの家事費は原則不可。業務とプライベートの双方にまたがる費用は、業務利用割合を記録したうえで按分計上する。確定申告で経費と生活費を明確に分けるには、事業用口座とクレジットカードを分けるメリットが参考になる。

青色申告特別控除(最大65万円)

必要経費を引いた後、青色申告をしている場合はさらに「青色申告特別控除」が差し引ける。国税庁 No.2072 青色申告特別控除 によると、控除額は以下の3段階だ。

控除額主な要件
65万円複式簿記+貸借対照表添付+e-Taxで申告 または電子帳簿保存
55万円複式簿記+貸借対照表添付(紙申告可)
10万円上記以外の青色申告者

白色申告ではこの控除は使えない。最大65万円の差は、課税所得ひいては税額に直結する。

課税所得と手取りの計算

事業所得から所得控除を引いて課税所得を算出する

青色申告特別控除後の事業所得から、さらに所得控除を差し引いた金額が「課税所得」になる。所得税と住民税はこの課税所得をベースに計算される。

フリーランスが活用できる主な所得控除:

  • 社会保険料控除:国民年金保険料と国民健康保険料の支払額全額が対象
  • 基礎控除:納税者本人に適用される基礎的な控除(令和7年度税制改正で金額が見直された。詳細は国税庁 No.1199 基礎控除を参照)
  • 小規模企業共済等掛金控除:iDeCoの掛金など全額控除
  • 生命保険料控除医療費控除など

社会保険料控除は支払全額が対象のため、国民年金・国民健康保険の保険料が高いほど課税所得が下がり、税額が下がるという構造になっている。

社会保険料の実額

フリーランスは社会保険料を全額自己負担する。

  • 国民年金保険料(令和8年度):月額 17,920円・年間21万5,040円(日本年金機構、2026年4月現在)
  • 国民健康保険料:自治体ごとに異なり、「所得割(前年の所得に比例)+ 均等割(加入者数に応じた定額)」の構造で算出される(参照:厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について)。自治体の試算ツールで事前確認を強くすすめる

税率の構造

課税所得に対してかかる主な税金:

  • 所得税:5〜45%の超過累進課税。課税所得195万円以下は5%、195万〜330万円は10%、330万〜695万円は20%(各段階に税額控除あり)
  • 復興特別所得税:所得税額の2.1%を加算
  • 住民税:課税所得の約10%(所得割)+均等割(年額約5,000円が目安、自治体で異なる)

売上500万円のフリーランスを試算する

以下は概算モデルだ。実際の数字は申告方法・経費・自治体・適用控除によって大きく変わる。令和6年分(旧基礎控除48万円)をベースにした簡略例として参照してほしい。

項目金額(概算)
売上(税抜)500万円
必要経費△100万円
▶ 事業所得400万円
青色申告特別控除(e-Tax利用)△65万円
差引後の事業所得335万円
国民年金保険料(月17,920円×12)△約21.5万円
国民健康保険料(概算)△約18万円
基礎控除△48万円
▶ 課税所得(概算)約247万円
所得税(概算)△約14万円
復興特別所得税△約0.3万円
住民税(概算)△約25万円
▶ 手取り(概算)約318万円

手取り率の目安:約64%売上の約36%が経費・税金・社会保険料として出ていく計算だ。売上が増えて税率が上がる段階では、この比率はさらに下がる。だからこそ経費の正確な記録と青色申告の活用が効いてくる。

なお、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は全額が所得控除になる。フリーランス(国民年金第1号被保険者)の場合、月額最大6.8万円(年間81.6万円)まで拠出でき、課税所得をさらに圧縮できる。60歳まで原則引き出せない点は留意が必要だ。

まとめ

フリーランスの収入4段階を改めて整理する。

  • 売上:取引先から受け取った報酬の総額(インボイス登録者は消費税を除く)
  • 事業所得:売上から必要経費と青色申告特別控除(最大65万円)を差し引いた金額
  • 課税所得:事業所得から社会保険料控除・基礎控除などを引いた税金計算のベース
  • 手取り:売上から必要経費・所得税・住民税・国民年金・国民健康保険をすべて差し引いた可処分所得

独立後の資金管理では、売上入金の時点で納税分・社会保険料分を別口座に先取りしておくのが鉄則だ。国民年金保険料や税制の数値は毎年改定されるため、確定申告シーズン前に国税庁・日本年金機構の一次情報を必ず確認する習慣をつけてほしい。

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

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